メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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アンサング:2

「ふ、ふぉぉぉぉッ!? これが、噂の、ラムネ水ッ! 私決めました、いつか必ずこのラムネ水を気兼ねなく買えるようになってみせますッ!!」

 

「帝都のお大尽方が飲まれる代物だけあって、ソーダ水とは別物でありますな。慰労物資としては破格が過ぎるのだけが気になるところではありますが」

 

 純粋にラムネを楽しんでいるコレオ伍長とは対照的に、テッセン曹長が警戒心バリバリなのはさすがベテラン軍人って感じだな。

 

 襲撃による死傷者はいるが、なんらかの責任で処分された者はいないらしい。帝都からの贈り物についても、最悪な状況で最善を尽くしてくれたことへの評価と感謝という形で振る舞われている。

 もちろんそれをそのまま素直に受け取れるかは別問題だろう。データを処分したところで現場にいた全員に口止めをしなければ意味がないし、親しい友人なんかを襲撃者たちに殺された怨みなんかは消えるワケがない。

 

 感情なんてのは善くも悪くも簡単に人間を変えるからな。特に新人の戦闘員候補生たちなんかは、今回の一件で帝国軍に対して反感を抱くヤツも出てくるかもしれん。

 

 

 ホントにも~、中途半端な教育してるからこんなことになるんだぞ? そこんトコちゃんと分かってんのか上層部はよぉ~。

 Dクラス帝国市民は真面目に人権を無視した道具としてしっかり管理できてるのに、なんでそのノウハウをC民やB民に活かせてねぇんだよ。

 

 ここは女神転生の世界だぞ? 情操教育なんて食べ終わったプリンのカップよりも役に立たないに決まってんだろッ! アレは牛乳とか入れて飲んだときの安っぽい美味しさが心を満たしてくれるって効果あるからッ! 

 そもそもあらゆる陣営が正義と平和と人命尊重を掲げつつ従わない存在を滅するまで殴り合いするのがメガテン世界の常識なんだからさ、階級社会を構築するなら底辺の人間性なんて丁寧にすり潰しておかないとテロリストが生まれるのなんて当たり前だろいい加減にしろッ!! 

 

 こんなガバガバ管理のディストピア社会じゃ、そのうちあの連中マジでやらかすんじゃね? 救世主を名乗って聖大天使バンザイとか言いながら幸せそうに自爆する狂信者の集団だし、なにかの拍子に不完全でも本物の天使とか召喚しちゃうかもしれないじゃん。

 軍の上層部でも国の中枢でもどっちでもいいからさ、その辺りの危機感をもう少し真面目に考えてほしいところだよ。神やら天使やらを自称するなら尚更さぁ。ほかの悪魔たちの姿が見当たらない以上、こんな状況でロウ勢力の強力な天使が召喚されたりしたらアッという間に銀河中で歌謡祭が開催されちまうわいッ!! 

 

 

 ……ふぅ。脳内で虚無を相手に言いたい放題したら精神的に喉が渇いてしまった。あ~ラムネうめぇ~ッ! 然り気無くビー玉が入ってるのも俺的には素敵ポイントですわ。

 

 散々に文句言っておきながらなんだけど、実際のところどうなんだべなぁ? シキガミの様子からして悪魔という存在そのものは知っているはずだけど、理解してるかは別問題だよなぁ。

 案外、仲魔の姿を見られてもシキガミですって言えば誤魔化せる可能性も──ないわ。少なくともカネサダちゃんと同じアラヤン式の人造超力兵に見られるのはアウトだと思っておかんと普通に死ねるで? 

 

 

 そういえばシキガミに目覚めたコウタロウくんってこれからどうなるんだろう。ラノベのテンプレートロードを歩むことになるのであれば、何故か偉い人に気に入られて特別扱いからのポンポン出世で女の子との出会いも矢継ぎ早でウハウハコースなんだけど。

 ナツミ少佐にコウタロウくんがキリノハの巫女の召喚道具を使ってシキガミ呼び出してましたよ~って話をしたら漫画みたいな勢いで口から甘酒噴射してたっけ。そんなん少佐程度が判断できる案件じゃないって机をドーンする姿には思わず目頭が熱くなっちゃったね! 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 気になることは多くても、命令があれば動かにゃならんのが給料で使われる身分の辛ェところよ。と、いうワケで日を改めてナツミ少佐の執務室へやってきた俺。

 コンコンとノックをして、許可を得てから入室してみると──なんか椅子に座ったまま紙を燃やしてるんですけど。え、何事? っていうか横にいる人ダレ? ……いや、この赤みが強い黒髪と青緑色の瞳は見覚えがありすぎる。

 

「……ん? あぁ、これは命令書でもなんでもない、ただの手紙ですよ。ただ、どうやら急ぎの用事だったらしくわざわざ人造超力兵に持たせてアマラ経絡を通って持ってきてくれたようですね。

 ですが、差出人が自分よりも階級が上の人間である以上……書かれていた内容、まぁ頼み事ではあるのですが、それを断ることはできませんね。相変わらず嗅覚が鋭いというかなんというか。

 ──今日までご苦労でしたF8492特務少尉。イミナ中佐殿が貴方の帰還を心待ちにしているそうですよ? もしかしたら土産話を求められるかもしれませんが……私の把握している限り『陸軍の』機密に関わるような情報には触れていませんので自由に会話を楽しんでくれて問題ありません」

 

 う~ん、露骨ゥ! つまり日本帝国魔導院やテロリストの襲撃に関する話は俺の判断で決めろってことか。でも陸軍には記録が残っていないってわざわざ教えてくれてたし、いっそのことイミナ中佐も巻き込んだほうが胃痛に優しいかもしれん。

 まぁ自由に会話を楽しめって言ってるし、相手の反応をうかがいつつどこまで情報を伝えるか考えながら判断して小出しにするしかあるめぇ。自由とはいったい、ウゴゴゴゴ……ッ!

 

 

 で。

 

 

「お初にお目にかかります、特務少尉殿ッ! 自分はアマラ経絡内の案内と護衛の任務を預かりました、アラヤン式人造超力兵『ヤスツナ』でありますッ! 短い間ではありますが、どうぞよろしくお願いしますッ!」

 

 アラヤン式には気を付けないとダメよねって心構えをした途端にコレですか。その“短い付き合い”とやらが平穏無事に終わってくれるモノだと俺も嬉しいんだけどなぁ。

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