メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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VS量産型プロトメサイア:1

 状況を分析するのは学者先生の仕事であり、状況に対応するのが軍人商売の仕事である。

 アレの正体を考えるより先に戦況を動かす側に立つ方が優先だろッ! 頼んだぞ、イッポンダタラッ!! 

 

(ウォれのぉッ! 金槌はァァッ!! 最コォォだゾぉぉッ!! うルぁァァッ!!)

 

 もちろん直接は狙わない。物理耐性が不明なのもあるが、なんとなくイッポンダタラに触れさせないほうがいいかもしれないと感じたからだ。

 

 だったらなんのために召喚したのかって? そりゃ当然、攻撃を仕掛けるためですよ。

 ゲームと違って干渉できるのは敵だけに限定する必要なんて無い、例えばそう──地面を狙って全力でブッ叩けば、土や石ころが礫となって散弾にも目潰しにもなるわなァッ! 

 

 

「ぐッ!? 小癪なァッ!!」

 

 

 へッ! どうだ? なまじ力や才能に溢れて自信満々な貴様らにとっては、格下特有の恥も外聞もお構い無しで生き残ったヤツが一番偉いスタンスのクソ戦法に対応するの難しいだろバーカッ! 

 相手を怒らせることになってしまうのが難点だが、対話をする予定も無ければ協力関係になる可能性もゼロに等しいなら気にせず卑怯な手段を使えるから気楽なもんだ。

 

 まぁ? 仮に相手が本物の善人だったとしても俺の命を脅かすなら全力で抵抗しますけど? 

 もしも不特定大多数を助けるために死んでくれと泣きながら頭を下げて頼まれたなら、そのまま顔を上げる前に()()()()へフルパワーの一撃叩き込んで逃げるぞ俺は。死ぬぐらいなら喜んで道を踏み外してやらァッ!! 

 

 

 だが、いまはまだその時ではない。

 

 

 本音としてはテッセン曹長とコレオ伍長とギリギリついでにホムスビちゃん辺りが生き残ってくれればいいか~ぐらいにしか考えていないが、味方は多ければ多いほど俺がターゲティングされる確率は減るワケで。

 だったらなるべく助けたほうがウマ味だよなぁ? 問題はどういう優先順位で手助けするかだが……最初は巫女を守りながら襲撃者たちの行動を観察するべきだろう。

 

 リスクは決して低くはない。向こうの目的には巫女の確保とかも含まれてるっぽかったし、巫女の側にいれば自然と戦闘に巻き込まれることになる。

 だが、相手の行動の方向性を絞ることに成功したときの恩恵は決して小さくないはず。立ち向かうのも逃げるのもトンズラするのも相手に身体の正面の裏側を見せて速攻前進するのも自由自在で戦略の幅が広がるってなもんよッ! 

 

 

 と、いうことで~、どうせなら見ず知らずの他人よりは、多少は交流のあったユウコ女史と協力して襲撃者と戦うほうが気持ち的にだいぶ楽だろう。

 戦力として期待できるのはもちろん、本人も好戦的な性格をしているから正気さえ取り戻せばなんとかなるべ。

 

 だからホラホラッ! いつまでも混乱してないでシキガミを動かしなさいッ! アレの正体が何者だろうと、お前さんを連れ去ろうとした事実は変わらないんだから。強制的に連中の仲間入りしたくないなら全力で抗うんだよッ! 

 

「──ッ! そ、そうだな。アンタの言う通りだ。オレだって厳しい訓練を生き残ってシキガミ使いになったんだ、こんなところで……こんなワケわかんねぇ連中に利用されてたまるかってんだッ!」

 

 よぉし、その調子だぞユウコ女史ッ! 訓練に耐えたでもなく乗り切ったでもなく生き残ったってセリフに特権階級の闇の香りを感じないこともないが、いまはそんなことを気にしてる場合じゃないのでヨシッ! 

 

 

「汝は我が血、我が肉であるッ! 新世界の礎となる汝の魂は、我と共に生き永遠の喜びの中を彷徨うことになるだろうッ!」

 

「ォ……ォォォォ……ッ!」

 

 

 せっかくユウコ女史がやる気を出してくれたのに、いきなりそれを削ぐような行動しないで欲しいんですけど? 

 

 しかしなるほど。これ見よがしにMAG結晶体食べて変身に失敗した連中はなんなんだと思っていたが、アレの役目は変身に成功した連中の能力を高めるためのエサというワケか。

 肉の塊に腕を突っ込んで、ブチブチと引き千切るように毒々しく歪んだ色合いのMAG結晶体を取り出して砕く襲撃者たち。戦闘力だけじゃなくて狂気の具合もパワーアップしている気がするが、それで冷静さを失ってくれてるなら付け入る隙もあるかもしれん。

 

 

 手始めに~? 力を制御しきれないのか、魔法スキルも使わずまっすぐ突撃をしてくるヤツらを側面からガンガン蹴り飛ばしてバランスを崩してぇ~。ユウコッ! 

 

「応ッ! まとめてくたばりやがれッ! ──マハムドオンッ!!」

 

 足下に出現するは紫に輝く危険な気配ビンビンの大きな魔法陣ッ! 咄嗟に高く飛び上がり回避する俺ッ! 眼下では襲撃者たちが溶解するように、あるいは粉砕されるように次々と消滅していく。

 マジか。固有スキルを除けば呪殺系の中で最上位の魔法スキル『マハムドオン』なんて使えるのかよ。いや、さすがにムドオンとは消耗が比べ物にならないのか座り込んじゃってるな。

 

 オイオイ、大丈夫か? 息も荒いし汗もヤバいぐらい吹き出してんぞ? 

 

「だ、大丈夫だこれぐらい。……ワリィ、やっぱキツいかも。こりゃソーマを使っても明日は満足に歩けねぇな、確実に」

 

 ファイトが一発しそうなノリでソーマの小瓶をグイッと飲み干すユウコ女史。立ち姿に不安定さは無し、息づかいも調っている。さすがソーマだ、なんともないぜッ! 

 

 輪郭が歪みかけていたシキガミも元通りで頼もしい限りだが、ゲーム脳で考えるとマハムドオン一回ごとにソーマ消費はコスト高ぇな~とか思っちゃう悲しみよ。

 生きるか死ぬかの瀬戸際でも少し余裕があるだけでエリクサー症候群が発症するのは実によくない。この辺りも改善が必要かも。俺ローグライク系のゲームでもアイテムをケチッて抱え落ちするタイプだったからな~。

 

 

 力を手にして力任せに突撃してきたバカの始末は問題なさそうだ。テッセン曹長も危なげ無く回避してはタックルで突き飛ばし、コレオ伍長が凍らせたりホムスビちゃんが焼き尽くしたりと普通に倒せてるようだ。

 さっきはジオの電撃をマハザンマの衝撃波で無効化されていたが、魔法スキルそのものに耐性があるワケではないらしい。ほかの軍人たちも連携しながら魔法スキルを使い丁寧に襲撃者たちの数を減らしている。

 

 

 となれば……やっぱ本命は、仲間が倒されてるのに後ろで余裕そうに薄く笑ってる連中か。無意味に偉そうにしてるだけなら俺としても助かるが、そういうアニメ的演出は期待しないほうがよさそうだ。

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