メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
オレ、グンジン。
オレ、タタカウ、シゴト。
オレ、ヨモツイクサ、タオス。
真面目に働いて、汗を流して、コツコツお金を稼いで生きるのが平凡な日本人としての幸せの形だと僕は思いまぁすッ!
それが拳銃とサーベル握りしめて化け物と殴り合うお仕事だとしても、桁違いの権力と政治が関わるような世界に首を突っ込むことに比べりゃ百億万倍マシなのよチクショウッ!!
冷静さを取り戻したつもりになれたところで、好き嫌いはともかくユウコ女史の戦闘力はどんなもんか確認しておかねば。自己申告では物理アタッカーと呪殺魔法が使えるらしいが……。
「まずは先手で数を減らすとすっかッ! いくぜコロウマルッ! ムドオンッ!!」
「──、──ッ!!」
ほぅ。敵単体にダメージだったり高確率で即死を付与したりする、ムドの強化版『ムドオン』ですか。というかユウコ女史は普通に魔法の名前を知ってるんだな。そういやカネサダちゃんも言ってたっけ、魔法の名前を知ってるのは限られた立場だけなのに~みたいなこと。
日本帝国魔導院そのものか、八葉なる集団なのか、それともシキガミを操る巫女に限定されているのか。ま、どのみち俺には関係ないね。これまで通り下手に詮索されないよう仲魔に詠唱してもらうだけさ。
というか。シキガミは悪魔と契約とか関係なく見えてるんだな。あとたぶん遠吠えも。オイコラひよっこどもお前らこれで勝てるじゃねぇんだよ、お前らの能力評価を兼ねた任務なんだぞ巫女に助けられて喜ぶな少しは悔しがれスカポンタン。
でも俺はお前らの手首クルクルな態度の変化を許すよッ! 皮肉でもなんでもなく心からなッ! そうだね、誰だって死にたくないし自分以外の強い誰かが護ってくれるなら大歓迎だよね~。
あれ? もしかして単体の戦闘力なら正規の訓練を受けているB民よりも、ポツポツ異能に目覚めたD民のほうが上だったりするのかな? 環境の違いと言ってしまえばそれまでだが……そうなるとC民産まれの戦闘員がどういう基準で選出されてんのかわからんな。
ま、いいや。仕組みが理解できたところで俺の生存戦略には大した影響なかんべ。そんなことより巫女さんたちの戦力が期待でき……るのはユウコ女史だけですかそうですか。ほかの巫女たちは早くヨモツイクサを倒せとキャーキャー騒いでたわ。
「シキガミの召喚は体力も精神力も消耗すっからな。疲れるようなことをしたくないってのは軍人だって同じだろ?
それに、オレたち柘葉一族はそうでもないが、八葉の大半は異能が使えないヤツを日本人として見てないヤツしかいねェんだわ。協力しようなんて考え方はアイツらの頭ン中にはねェよ、確実に。
こんなときまでバカだよな~? いくら異能が使えようがシキガミを従えようが刃物で斬られりゃ血は出るし、頭を撃たれりゃ簡単にくたばるってのによ」
……普通だな! 人間を使い捨てにする制度が確立してる社会だぜ? そりゃ特権階級の連中なんてそんなもんだろ。むしろ柘葉一族とやらのほうが異端者扱いされてるんちゃうか。
◇◆◇◆
いやぁ、ヨモツイクサの包囲網は強敵でしたね! おサルさんタイプを俺が引き受けて、その後ろからユウコ女史がムドオン連発でゴリさんタイプを片っぱしからオォンッ! するだけの簡単なお仕事でした。
反射するヤツいなくて本当に良かったわ。だって言えねぇもん。もしかしたら呪殺反射の能力を持ってるヤツがいるかもしれないぞッ! なんて言えねぇもん。体験したことが無いから知らない情報なんだもん。
仲魔の誰かが物理反射のテトラカーン、あるいは魔法反射のマカラカーンを使えるようになるか、もしくはそういう異能の持ち主と出会うか。
どちらかの条件を満たさん限り頭で危険とわかっていても殴らにゃならんのは辛いのぅ……。このMAGコート、フルパワーでエネルギー流したら無効化とか反射の効果出ねぇかなー?
とりあえず忘れずに倒した敵からMAG結晶体を回収せねば。与えられた権利は最大限に活かしてレベルアップしなければ生き残れんのだよ。
野営地なら監視カメラも少ないだろうし、ホムスビちゃんさえどうにかできればモグモグするタイミングもあるだろう。
テッセン曹長も興味があるようだが、よほど追い詰められない限りはなるべく止めておくようにと言っておいたのは正解だな。シキガミ関係の怪しさを考えると間違ってはいない、はず。俺はもう後戻りできないから食べ続けるけど。
あとは新人たちをどうするかだけど……もう放置でいいかな、うん。ついさっき油断して奇襲されてジタバタしたばっかりなのに、また終わった気分で浮かれてんだもん。手に負えねぇよ?
だって明らかにおかしいだろコイツらの態度は。この前訓練を担当していた大尉殿はまともな人だったし、ナツミ少佐殿もこんな腑抜けた態度を許す人じゃないだろう。そもそも殺すか殺されるかの戦争やってんだぞ? それがこのザマってのは異常でしかない。
俺の記憶にあるフラグコレクションに当て嵌めて考えるなら、巫女側の、日本帝国魔導院の思惑として……任務が無事に終了すると不都合だからナニかやった、とか。あるいは全く関係のない第3組織の介入か。
あーやだやだ。もしも予想が当たってたらまだまだこれからだよ命の危険があるのは。せめてもの救いはヨモツイクサどもがソーマ飲んでパワーアップッ! みたいな展開が無いまま終わったことだな。
案外、ヨモツイクサにとっても猛毒だったりしてな。特定の生物には有益でも、ほかの生物にとっては有害な物質なんて前世の地球にも普通にあったし。だからといって虫除けスプレー感覚で試してみようとは思わないけど。だって予想が外れてたら危ないし。
◇◆◇◆
塩っけの少ない握り飯にジャガイモとタマネギのお味噌汁という簡単な食事でも、薄い壁で申し訳程度にしか部屋として機能していない小屋の中でも、任務に区切りを付けての休息を……最高やな!
もちろん俺より階級が上の人たちや巫女さんたちはもっとまともな場所で休んでいるが、B民出身であろう少尉候補生たちでさえもテントが割り当てられていることを考えるとかなり優遇されているほうなんじゃないかな。
あとは基地に戻るまで平和であることを願うばかりだ。移動はトラックだから楽々だけど、行動が限定されるぶん罠も仕掛けやすい。余計なことを言って逆にスパイかなにかとして疑われるのは困るから、先手を取られて手遅れになってから対処するしかないのマジぴえんなんだが?
「失礼しますッ! あの、少しお時間いいでしょうか?」
おや。コウタロウくんと一緒にいた女の子の、活発というか強気なほうの子じゃないか。どうした、なにかトラブルでも起きたのかい?
もしそうなら俺たち以外のところへ相談に行って欲しいんだけど。俺、陸軍の階級も持ってるけど公的な立場は観戦武官っていう余所者扱いだし。
「実はその、先ほどの任務でコウタロウ候補生が……その、巫女様たちのシキガミを使った戦い方を見て、自分が異能を使えないことを悩んでいて……それで! あの、特務少尉殿なら異能について、なにかアドバイスをいただけないかと……思い、まして」
だからァッ!
主人公特有のイベントにィッ!
俺を巻き込まないでくれるかなァッ!?
どう考えてもコウタロウくんが覚醒するとかそういう流れの導入につながるヤツだろこれはァッ!!
はいフラグ乙~☆ これは基地に戻る前にトラブル起きるヤツですねわかるけどわかりたくなかったよッ! よォッ!!!!