メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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VS節制装置

 どうも皆さんこんにちは。私、F8492特務少尉と申します。ちょっとした出来心でボンボン候補生たちを煽り散らかした結果、多数の敵に包囲されたときの対処法を実演することになりましたとさ。

 

「少尉殿。彼らは皆、比較的新しいモデルの耐物理コートを着用しています。異能を使わない戦闘であれば、手加減もしやすいかと思われます」

 

 あーアレね。至近距離で弾丸撃ち込んでも貫通しないって優れものでしょ? 知ってる知ってる。その情報を教えてくれたのは普通にありがたいけど、アホの子たちが怒りのあまり三國志の武将みたいにプッツンして倒れそうになっちゃってますよ? 

 というかキミ、俺のこと止めないんだねぇ。てっきり警告のひとつやふたつあるかと思ったけど、すっごいニコニコ笑顔がまぶしいね! テッセン曹長と大尉殿なんか笑うのを我慢しすぎてミスターポポみてーな顔になってるし。

 

 あとコレオ伍長、お前も「頑張ってくださーい!」じゃないんだよ。火種作ったのキミだからね? 

 

 

「お前たちッ! この男を包囲して一斉に攻撃しろッ!! ほら、さっさと動けッ! この愚図どもがッ!!」

 

「ちょっとッ! なに言ってんのよッ!」

 

「特務少尉殿との模擬戦を希望したのは貴方たちでしょう? 私たちは関係ないはずです」

 

「関係ないワケないだろうッ! ボクたちはお前たちの上官なんだぞッ! 命令に従うのは当たり前だろうがッ! それとも軍法会議にかけられたいのかッ!? ボクに逆らうことは、軍の規則に逆らうのと同じなんだぞッ!!」

 

 んー、なんとなく見えてきたかな? そりゃ大尉殿も迂闊に注意できないワケだ。このボンボンくんの身内、たぶん両親か祖父母のように距離の近い血縁者がそういう役職になってるパターンなんだろう。

 普通に考えればこのお坊っちゃまを怒らせた時点で俺も()()なんだろうが、惑星タタラで都合のいい前例を示してくれた敬愛すべきAランク霜降り大尉殿がいるからな。正直、あまり自信はないが……命がけの口八丁で乗り切るしかねぇッ!! 

 

 ま、でもその前に。まずは目の前のアホたちをサクッと黙らせますか! 

 

 手順はとぉ~ってもカンタン☆ 戦闘が始まったにも関わらず、無防備に下級B民のほうを向いてキャンキャン吠えているところにぃ~沈黙魔法マカジャマ(拳属性)やっちゃうぞォ~☆ 黙れオラァッ!! 

 狙いはもちろん物理耐性が付与されているはずのボディですとも。ギリギリで前歯に当たる前に軌道修正した俺ってば偉くなぁ~い? 

 

 

 で。目の前で仲間が地面をのたうち回ってるのにテメェらは狼狽えているだけですか。

 

 

「お、お、お、お前ッ! 俺たちはなぁ、Bクラス帝国市民の中でも特別なエリートなんブギィッ!?」

 

 あのねぇ、戦闘中にそんな無駄口を叩いてる暇なんてないんだよ? 武器を構えて立ち向かうのか、尻尾を巻いて全力で撤退するのか、テキパキと判断して動かないと。そんなんじゃ甘いよ? 

 さて、残りはひとりになった……と、思うじゃん? 後ろの連中、何人かこの3バカと一緒になってゲラゲラ笑ってたよね? つまりコイツらと同じように俺の指導を受けたいってことでいいんだよな? 

 

「ヒィッ!? ち、ち、違いますッ! こんな奴らなんて、仲間でもなんでもないんですッ!」

 

「ホントなんですッ! 信じてくださいッ! 私たちも、命令に従わないと軍法会議にかけるって脅されてたんですッ!」

 

 

「なッ!? お前たち……ッ! 特務少尉殿ッ! 後ろの連中も仲間なんですッ! でも下級市民に暴力を振るうつもりなんて全然なくて、これは単なる──そうッ! ちょっとした悪ふざけだったんですッ! 

 そ、それに、軍隊は、同じ部隊の仲間なら連帯責任ですよねッ!? だったら、全員が罰を受けるならひとり当たりの処分は軽くなるはずでイギャァッ!?」

 

 キミの手のひら返し、なかなか芸術点高くて俺は好きよ? だから特別に左手で勘弁してやろう。ま、俺この世界に転生してヨモツイクサと戦ってるうちに両利きになったから威力はどっちも変わらんけどね。

 

 

 さて、ここからは後始末の時間です。なぁホムスビちゃん、俺は観戦武官として陸軍に勉強しに来てんのよ。日本帝国軍が誇る陸軍将兵たちの軍事行動はもちろん、平時の訓練についても学びを得るために来てんのよ。

 それがこの有り様ってのはどういう了見だい? 戦闘能力が丁型ヨモツイクサ1体にすら劣るのは百歩譲って我慢してやってもいいが、候補生如きが上官だの命令だの軍法会議だのを連呼してたのは軍の統率と秩序を著しく乱す行為だから見過ごせないよねぇ? 

 

 ちょっとナツミ少佐に確認をお願いしてもらってもいいかな。観戦武官として、俺はいったい、どんな報告を海軍へすればいいのかな~って。

 

「はい、特務少尉殿。至急速やかにナツミ少佐殿に今回の1件を報告し、陸軍幼年学校卒業生の待遇等について見直す必要があるか判断を仰ぎたいと思います」

 

 ハハハこの野郎ニコニコ笑うのを隠しもしねぇ。つまり俺の行動はナツミ少佐殿も予測済み、手のひらの上でコロコロ転がされてたワケだ。

 チクショウ完全に行動を読まれていたならペナルティも大したことないかもしれないと安心感しかねぇありがとうございますッ! 今後も是非とも上手に踊らせて欲しいもんだ。生き残るためならシットロト踊りだって喜んで全力ダンスしますとも。めらっさめらっさ。

 

 あとは……申し訳ありません大尉殿、つい指導に熱が入ってしまい訓練予定を大幅に乱してしまいました。これは明らかな越権行為です、軍の規律に従い自分に処罰を下すようお願いします。

 

「ん? そうだな……。まぁ、こういうこともあるだろう。ひよっこどもの訓練で死者を出すようでは論外だが、怪我のひとつやふたつでガタガタ騒ぐようでは戦闘員は務まらんからな。この程度、処罰を与えるほどのことではない」

 

 事情は知らないけど空気を読んだ、ってところかな。ありがてぇ、ありがてぇ……ッ!

 大丈夫かな、この大尉殿。もしもこの基地がヨモツイクサに襲撃とかされたら、候補生たちを逃がすために目の前で上半身ぱっくんトカゲされたりとかしない? 

 

 ともかく、これで面目は立ったな! え、なんの? なんで俺はボンボン3人を殴らなきゃいけなくなったんだっけ……?

 あと戦闘員候補生たちよ、俺に注目するんじゃない。このまま無言で立ち去れる空気じゃなくなっちゃってるじゃん。お前ら3バカのナメ腐った態度をもう少し見習えよぉぉぉぉんッ!!

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