メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
ナツミ少佐殿。その任務は、というかその配置はトラブルが発生する可能性が非常に高いのではないかと具申する次第でありますが。
「なにを言っているんですか。逆に聞きますがF8492特務少尉、トラブルが起こらない可能性などというものが残されていると思いますか?」
えぇ……?
「問題が発生した場合は、基本的には無視して大丈夫です。先程も言いましたが、建前はあくまで観戦武官ですので死傷者が出そうな場合を除いて可能な限り口出しせず傍観者に徹して下さい。
私がなにを目的としているのか、イメージを共有するための説明が少々難しいのでその辺りは一旦省かせてもらいます。まぁ、少々大袈裟に聞こえたかもしれませんが……着任したばかりの少尉程度に階級に釣り合わないような責任は背負わせませんよ」
人物評価は充分過ぎるほど新参者には責任が重すぎる仕事だと思うんですがそれは。しかしニコニコ微笑みながらプレッシャーを放つナツミ少佐に質問できるほどの勇気は俺にはありません!
ここは逆転の発想で自分を納得させよう。トラブルが起きることは想定済みであり、俺はそれに関してはノータッチで知らんぷりする権利が与えられている。緊急時の護衛、つまりヨモツイクサの襲撃が起きたら戦う必要があるぐらいか。
「一応、輸送する資源についても説明しておきましょう。貴方が護衛することになる輸送部隊が回収・運搬するのは『ソーマ』という液状の資源です」
ソーマくんッ!
(AKM城HD並み感)
骸骨の給仕さんが美味しいカレーを……じゃなくて。オイオイここにきて急に普通(?)のメガテンらしい要素が出てきたじゃないの! しかも回復アイテムですよ! コイツぁなかなかグレイトな任務じゃあないッスかねぇ~主に安全性という方面で。
これが例えば巨大なヨモツイクサの残骸からMAG結晶体を削り出して持ち帰る任務ですとかだったらフラグ臭プンプンして身構えるところだったかもしれんが、部外者の俺が護衛として同行する程度の部隊が輸送する資源やろ? なら危険性はほぼゼロってことだな!
「とある山間部に、同じくソーマと名付けられた花が群生している場所があります。そこの湧き水を回収するだけの任務ですが、目的地の都合でどうしても途中からは徒歩での移動になりますので時間もかかります。
加えて、車両による移動が制限されていることから定期的な警邏が難しくヨモツイクサの駆逐が充分ではありません。……護衛を担当する歩兵どもの良い訓練になるだろう、などという意見もありますがね」
あ、俺以外にもちゃんと護衛は付くのね。よかったよかった、これがゲームやラノベなら何故か主人公チームだけが護衛を任されるとかいうガバガバ配備になるところだったぜ!
つまり俺はこの世界の主人公ではない……? なんという朗報にして僥倖かッ! メガテン世界で主人公とか常に命の危険に晒されるわ思想の対立に巻き込まれまくるわで心休まる暇がないから絶対になりたくないわ。
いや、まてよ? 俺が主人公じゃなくても、主人公属性の人物と関わるのも危険だな……。今回のお仕事は不特定多数の人間と一緒に行動することになるし、一応その辺りも警戒しておかなければ。
「あぁ、それと。ソーマは触れる程度であればなにも問題はありませんが、飲料水の代わりにしたり怪我の治療に使用したりはしないで下さい。
帝都惑星クニヌシにある『高等教育研究所』に届ける貴重な研究開発物資であることもそうですが、単純に一定量を体内に取り込むと死亡事故に繋がる危険性がありますので。
蒸留水と間違えて傷口を洗い流したところ治療を受けていた兵士が発狂、鎮圧するまでに5名の死者と多数の重軽傷者が出た事例もあります。中にはうっかりひと口飲んでしまったところ、体力も気力も消耗したMAGも満たされた……などという者もいるようですが、絶対に真似しないように」
どうやら俺の知ってるソーマとは違うようですね。たまげたなぁ。本当はマッスルドリンコなんじゃね? いやでもちゃんとエリクサーっぽい効果もあるにはあるようだし、使用者によって毒にも薬にもなる感じなのかもしれん。
いや毒の部分の副作用エグいなッ!? 発狂したこと自体はまぁ……メガテンだし。精神攻撃は悪魔も天使も得意分野だから驚くほどのことじゃないが。
ふぅ、危ない危ない。この事前情報がなければソーマは回復という先入観で迷わず飲んでしまうところだったぜ。どうやら俺はまたしても幸運ロールに成功してしまったらしいな。
◇◆◇◆
とりあえず説明が終わり、まずは地上に慣れるためにその辺を適当に歩いておけと言われた俺。新しい副官(監視)のホムスビちゃんに案内してもらい基地をフラフラしているワケなのだが。
なんだろうな、この……コロニーや地下の人工的な光源とは違う、温もりを感じる太陽光の偉大さよ。太陽じゃなくて恒星アマテラスって言うらしいけど、俺にとっては太陽さ! そもそもアマテラスって天照大神から来てるんちゃうんか? なら一緒みたいなもんだべ。
「ナツミ少佐殿の許可が得られましたら、市街地のほうもご案内させていただきます。もちろんそのときは日本帝国軍人としての振る舞いを常に意識していただくことになりますが、休日や非番のときに私用で羽を伸ばす程度の融通は利きますのでご安心ください」
────ッ!?!?
休日に……お出かけだと……ッ!? バカな、この世界の休日とは自室でゴロゴロと惰眠を貪り体力を回復させるための時間ではないのか……ッ!!
いやまぁ、Cクラスに上がって待遇が良くなってからはわりと色々やってたんだけどね。コロニーに居たときだって、非常食だか宇宙食だかみたいな簡素なお菓子をボリボリ食いながら図鑑読んだりマモルやホノカと将棋やったりとかしてたし。
そもそもお出かけしてやりたいことがあるかと聞かれたら……特になにも思い付かないっていうね。管理社会にしては食事とかも結構まともだからそこまで飢えてないし。味が薄いのと量が制限されているのがキツいぐらいか?
あぁ、でも。案外軍人さんよりも一般市民の皆さんのほうが味付けの濃いジャンクな食べ物を食べている可能性とかあるかもしれないよなぁ~。そういうのもいいよなぁ~。
D民として国家貢献の義務が始まってからのドロドロ液体状メシもある意味ジャンクではあったが。実はアレに件のソーマが混ぜてあって実験台にされてたとかだったら笑えるな、ハハッ!