メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
問。ル号採掘基地はどうするの?
答。知らん!
「これはあくまで私の個人的な意見ですが、100年以上も放棄されている採掘基地を奪還したところで簡単に再稼働などできるワケがありません。メンテナンスに費やす予算や時間で新しい採掘基地を建設したほうがよほど国益に繋がるでしょう。
ハッキリ言わせてもらえば、威力偵察の許可が出たことすら信じられませんね。書類上はアレもAクラス帝国市民
つまりあの合体悪魔の少年が復活していたら、今後も黙々とお花を増やし続けることが出来るということか。よかったな少年、国家貢献の義務を安心して続けられるぞ!
そういえば所属不明の武装集団が犠牲になってたっけ。すっかり忘れていたがアイツらは何者なんだろうか?
ゲーム脳で考えるのなら……陸軍あるいは帝国軍に敵対する組織が存在していて、秘密の研究を探りに来た、あるいは奪取に来たとかだろうか。もしそうならバッチリ返り討ちにされているところも芸術点高めだな。
で。
「ほぅほぅ、これが船の中というものでありますか。採掘基地と比べると清潔感はこちらが圧倒的に勝っておりますな!
いやぁ、土と岩に囲まれて生涯を終えるつもりでいましたが、人生というものはなにが切っ掛けで転機が訪れるかわからんものですなぁ」
「う~ん、ずっと作業着で生活してたから変な感じがするな~。動きにくいとかじゃないんだけど、なんかこう、背筋ピーンと伸ばさなきゃ! みたいな気分になって窮屈ですねぇ~」
テッセン軍曹は曹長にランクアップ、ヒーホーちゃんは伍長の階級を与えられて正式に俺の部下になりました。これも海軍との交渉を有利に進めるために必要な措置なんだとか。
D民上がりのファッション少尉をチヤホヤすることが交渉の場で役に立つカードになるのか? とも思うが、逆に考えれば海軍に口出しされるぐらいなら俺みたいな一般兵に便宜を図る程度のことはなんぼでもウェルカムってことなんだろう。
◇◆◇◆
無重力、怖い。
無重力ッ! 怖いッ!?
実際に体験する前はあんなに楽しみだったのに、いざ全身が浮遊感に包まれると感動より不安しかねぇッ! 目的地に到着するまで椅子にベルトで固定されたままのほうが精神衛生的によろしいのでなかろうか?
「意外ですな、宇宙産まれの少尉殿でも無重力に不馴れな──あぁ、そういえばコロニーは普通に重力があるのでしたな。たしか、遠心力を利用しているといったことを資料で読んだ記憶があります。
しかし、地面から足が離れるだけでこれほど情けないことになるとは思いもしませんでした。伍長などはすっかり適応して昼寝を楽しんでいるというのに。あの柔軟さは我々も見習わなければなりませんな!」
柔軟というか、軟体動物というか。命綱は繋げているものの、ギャグ漫画でトラックに撥ね飛ばされたキャラクターみたいな姿勢で浮遊しながら爆睡する乙女が目の前にいるというこの状況よ。
確信したね。これから向かう先がどのような環境なのかはわからないが、俺たちの中で最初に新天地での生活へ馴染むのはヒーホーちゃんで間違いない。あれぐらい図太く生きてぇなー俺もなー。
◇◆◇◆
銀河英雄伝説かな?
いや、メガテニストとしてはライドウ世界のほうを推すべきなのかもしれん。
数日ぶりに尻の下に重力を感じる喜びを噛み締めつつ補給艦を降りた俺を出迎えてくれたのは、明治ロマン? それとも大正モダン? ともかくそんな雰囲気の建築物や服装の人々だった。
いや、別に群衆が日の丸の旗を振りながら群がってるとかそういう意味じゃないですよ? それぐらいインパクトのある光景ってことね。なんか牛鍋屋さんとかあったら店内で頬に十字の傷がある優男なお侍さんと出会しそうだわ。
うむ! 肩透かしだな、良い意味で。
俺なりに覚悟はしていた。過酷な環境に派遣される可能性も考えていたワケで。今度こそデモニカスーツみたいなゴッつい装備を着せられて、酸素の残量とかスーツの表面温度とか気にしながらヨモツイクサと戦うことになるかもしれないと身構えていたんだが。
しかしまぁ、実に平和な光景だな。空は青いし風も心地好いし、海が近いのか前世を含めて30年ぶりぐらいに潮の香りとやらを嗅いだ気がする。
この平和を支えるためにCクラス帝国市民の皆さんが資源惑星の地下で一生を過ごしたりDクラス帝国市民の皆さんがヨモツイクサ相手に使い捨てにされながらMAG結晶体を集めてると思うとついタメ息が出ちゃうわ。
ま、なんにせよ転生してから初めて見るまともな街並みである。宇宙を航行できる船があってコロニーまで建設できる科学力がありながら、あえてレトロ文化で生活している理由はサッパリだが……少しは人間らしい生活を楽しめるかな?
なにせコロニーじゃあ基地と拠点以外はぜ~んぶ廃墟だったから、平成や令和並みの文明建築が並んでいたところで懐かしさなんて感じる余裕がなかったもの。
うん、そうね。コロニーの廃墟はレトロじゃなかったからね。
おかしくない? ガラス窓のビルヂングが建造できるのに、なんでこんな木造建築が並んでんのよ。もしかしたら見た目だけで中身はバリバリに家電製品を使ってるかもしれんけど。
惑星とコロニーでは建築のルールが違うとかどんな理由やねん。まさか陸軍と海軍だけじゃなくて惑星の住人とコロニーの住人までライバル意識バチバチやってんじゃないだろうな?
いや無いな。それはさすがにないだろう。いくらなんでも同じ日本人同士でさぁ~、地上派と宇宙派でいがみ合うなんてムダなことしないでしょ~!
そんなんお前、もしも宇宙派に真っ赤なノースリーブにサングラスを着用するような過激な思想のヤツが現れて「宇宙へ飛び出してなお重力に縛られている愚民どもの魂を解放しなければならんのだッ!」とか言い出して衛星落としとかしたら大変なことになるよ?
たくさんの犠牲者が出るのもそうだけど、メガテン世界で大破壊と大量虐殺による魂の解放とか二次被害がどんな規模になるのか想像もしたくないわ。
恐怖と絶望と怒りが爆発してドえらい量のMAGがブチまかれたりして、それをエサに悪魔が大量発生したりしたら人類終わるで? なんならMAGで稼働している人造超力兵たちも挙動がバグって人間を襲うかもしれんよ?
悪魔、人間、人造超力兵の終わらない戦いのワルツの始まりですか? 俺は早々に人間が退場してパ・ド・ドゥに変わると思います。
「どうしました少尉、難しい顔をしていますよ? なにか気になることでもありますか? 確認したいことがあるなら遠慮なく聞いてもらって大丈夫ですよ」
はい、いいえ少佐殿! 調和と忠義を重んじる日本人の気風をよく表している街並みに感激し、少々言葉を失っていただけでありますッ!
「ッ! フフッ、そうですかそうですか。それは大変結構なことです。貴方はとても素晴らしい感性の持ち主のようですね。半魚人どもの巣窟から引き抜いた甲斐があるというものです。
基地に到着する前で少々気が早いかもしれませんが……惑星『ニニギ』へようこそ、F8492特務少尉。そういえば貴方は甘味にチップを使う傾向がありましたね? ニニギではもうじき豊作を祝う祭事が行われます。そのときは甘酒と小豆餅をご馳走しましょう」
甘酒とお餅なら材料はお米のはずだから安心して食べられるなッ! ヨシッ!
え? 惑星の名前について? ぼく教育をちゃんと受けてないからよくわかんないやぁ~♪