メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
へいへいカネサダちゃーん? 逃げた目撃者を追い掛けなくてもいいのかーい?
「はい、少尉殿。なにも問題はありません。彼らは必ずこの場に戻ってくるでしょうから。もちろん少尉殿の指示に従い私を破壊するために、です。
むしろ、私にしてみれば少尉殿ひとりを集中して狙えばわざわざ追跡しなくとも向こうから勝手に戻ってきてくれるので手間が省けます。言ってしまえば少尉殿は人質ですね」
そ、そうきたかぁ~~ッッッッ!
なんと冷静で的確な判断。こいつ、戦いながら学習してやがるッ! そらそうか、プログラムに従い動くだけの純粋なロボットとは違うもんな。味方のときは頼もしいのだろうが敵対すると厄介でしかねぇ。
「それともうひとつ。水を利用して戦うのは結構ですが、ご存知の通りそれは重金属イオン──など、で。致死レベルまで汚染された猛毒です。
当然ですが人間である少尉殿も浴びれば無事では済みませんし、そのフィルターマスクが破損して漂う飛沫を吸い込むようなことになれば……説明は必要ですか?」
あ、結構です。
まぁそうだよな。はるか上空、いや地下だけどそう表現したくなるほど上から水が落ちてきてるんだもの。当然この辺りには目では見えなくても水蒸気というか霧的なモノはそこらじゅうに拡散してるわな。
いや~まいったまいった! 誘き寄せて罠にハメるつもりが、蓋を開けてみれば普通に追い詰められてるだけだったよ! アッハッハ! だから俺に指揮官ポジとかムリなんだよォォォォんッ!?
カネサダちゃん居住区でのおいかけっこ辺りからやり直さない? あの子どもがお花の世話に使ってたらしき水場みたいなのあったし、今度はちゃんとそこに逃げるから。ダメ? ですよね~。
「少尉殿の持久力と私の稼働時間は比較するまでもなくこちらが有利ですが、少尉殿は下手に時間を与えるとなにを仕出かすかわかりませんからね。手始めに、これ以上の逃走ができないよう処置を施させていただきます」
そうだね、間違いなく俺のほうが先にスタミナは尽きるよね。人間だもの。
その上であえて言わせてもらうぜカネサダちゃん。時間は味方になってくれないことを理解しているこの俺が、時間稼ぎが必要になるような指示をあのふたりに出したと思うかい?
「ブラフですか? その手には──」
「お待たせしました少尉殿ォッ!!」
現れたるは、両手に背中に大量の荷物を抱えたテッセン軍曹。どう見ても武器の類いではなくガラクタばかりだが、もちろんそれを集めて戻ってくるように指示したのは俺である。
あんなものをどうするのか、だって? なにをおっしゃるお嬢さん、ついさっきも褒めてくれたじゃないの。水を利用するって考えは悪くないって。だから軍曹に頼んだんだよ。その辺のガラクタに水を汲んで持ってくるようにって。
あるだろう? 水なら。100年ほど昔から、お花を育てるために使われていたヤツがさ。決して清潔ではないだろうけど、花が育つぐらいなら人間が浴びても死にはしないんじゃないかな。
「ッ!? 毒性の水源に誘導したのも罠ですかッ! しかし私が大人しく水浸しになるとでもッ!!」
「思ってないから私が止めるんですよッ! ユキダマくんッ!」
「ヒィホォォッ! マハブフだホーッ!!」
凍結効果でカネサダちゃんをカッチカチに固めてやるぜッ! ってのとは少し違う。建物の裏から回り込んで飛び出したヒーホーちゃんとユキダマくんが狙ったのはカネサダちゃんの足下だ。
全身の動きを封じるのはムリだとしても、脚部だけなら一瞬だけでも止められるかもしれない。足場も水で濡れていることだし、コイツは期待できるだろ!
「──ぐッ!? 」
意外と効いてるな? もしかしてさっきヒーホーちゃんに一杯食わされたから過剰に反応しちゃってるとか? やはり幸運の女神は俺に微笑んでいるようだな! でもメガテン世界の幸運の女神って人間に微笑むのかな?
すかさず容器を投げる軍曹ッ!
それをマハジオで撃ち抜くピクシーさんッ!
飛び散る破片ッ!
しかし水は降り注がないッ!!
「────は?」
これにはカネサダちゃんも思わず一時停止である。いや普通に考えてあんな短時間でガラクタ集めて水入れて戻ってくるとかムリだろ。そもそもガチ必死で逃げてる最中に余所見して水場を探すなんて芸当できるワケねーから。
自分が騙されたことを理解したカネサダちゃんが俺のことを睨み付けようとして……再び動きが固まった。そうだね、カネサダちゃん初対面のときに言ってたもんね。MAG結晶体を食べるのは人造超力兵基準でも頭のイカれた行為だって。
俺としては失ったMAGを一気に補給することで最大火力のジオンガをピクシーさんが撃てるようになるし、勝てる気が全然しなかった相手に切り札をブチ込むためのチャンスを作れるしで一石二鳥なんだけどなぁ。
ついでにフィルターマスクを外してるのも意外かな? 死にたくないって抵抗してた相手が死ぬかもしれない行動を重ねてんだから混乱もするだろうさ。
なぁ~に、ちょっとぐらい劇物を摂取したところで俺も身体は鍛えられてるからな。でぇじょうぶだ、人間はそう簡単にくたばらねぇッ!
ピクシーさんッ!!
「アタシは加減しないわよ。する理由がないもの。じゃあね、別にアンタのことはスキでもキライでもなかったわ。──ジオンガッ!!」
「少尉殿、私は帝国と国民の未来をまも──」
相手は無防備。こちらのMAGは満タン近く。仲魔のコンディションも万全。これだけ条件を揃えてどうにもならなかったら、いよいよ終わりを受け入れるしかなかったが。
さすがに胸から上が消しとんでしまえば、いくら右腕がほぼ無傷で残っていたところで魔法なんか使えるはずがない。これはもう、俺たちが勝って生き残れたと判断してもいいよな?
そして肉と、骨と、機械が乱雑に引き裂かれたように見える胴体からは大きなMAG結晶体が見えている。悪魔や天使が中に封印されていたりなんて──おっと残念、確認する前に砕けちゃったか。もったいないねぇ。
しかし、最後のセリフまで帝国の未来ときたか。
お前さんは俺の副官を命じられたことを恵まれている、なんて言ってたけどさ。国家の未来なんてお構い無しに、自分が生き残ることしか考えてない人間の部下なんてポジションは……恵まれているとは思えないんだよなぁ。
ま、いいや。いや~今日も勝った勝った! 結局はとにかく生きてるヤツが一番偉いッ! 別に大義やら正義やらを否定するつもりはないが、やっぱり自分の欲望に正直に生きるほうが良くも悪くも人間らしいだろ? ガハハハハッ!!
それにしてもMAG結晶体が吐きそうになるほどマズいのはいまさらだが、今回は特別な当たりを引いたかと思うほど苦くて酷い味だったな。
どこまでもどこまでも苦味が口の中に残ってて不快感が尋常じゃない。できれば2度と味わいたくないほど最悪過ぎて困るんだぜまったくよぉ~。
ホントにな。