メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
カネサダ、スーパーモードッ! 心臓が握り潰されたかと思うほどビビったけど、とりあえず合体悪魔に向かって走っていったからヨシッ! いや全然安心できる状態じゃないんだけどねッ!
ペルソナ系で見た百腕巨人ことヘカトンケイルに蛇やら虎やら骸骨やらをトッピングした合体悪魔を、思いっきりブン殴って怯ませてるし。
ヤベェよ……ヤベェよ……アレはピクシーさんたちと同じような悪魔の可能性が高くて、いまはピクシーさんたちが軍曹にも見えている状態で、アレの姿を見てからカネサダちゃんが暴走? し始めたってことは、だ。
次は、俺の番だよねぇ?
オォォノォォォォだズラァッ!! このままカネサダちゃんが合体悪魔を倒したとしても、結局難局大冒険は終わらねぇじゃねぇかよォォォォッ!!
勝ち目が薄い相手から勝ち目の見えない相手にランクアップしただけじゃねぇかッ! しかも的は小さくなって機動性も向上してるとか最悪だよッ! ピクシーさんがスクカジャ使えなかったら無抵抗のまま嬲り殺しにされる未来が確定的に明らかだよッ!!
だがまだ諦めるには早いぞ、俺……ッ! 観察だ、いまの隙に観察することで突破口を見つけ出すのだ……ッ!
ふむ。カネサダちゃんの頬っぺたらへんから腕にかけて紅い光の流れが見えるな。アレはMAGコートと同じような装備なのか?
対ヨモツイクサ用の装備だし、それを戦闘任務がメインであろう人造超力兵の彼女にも使われていることは別に不思議ではない。
ただ人造人間に装備させるような代物を普通の人間(試験管生産)の俺とヒーホーちゃんが装備させられているのが不思議というか、不安なだけで。
あと単純に防御力がヤバない? 生体マグネタイトに反応して着用者をサポートするこのMAGコート、周囲からMAGの光をガンガン吸収しながら戦うカネサダちゃんならどんだけ強化されてるんだって話よ?
「──まず、ひとつ」
「────ピギィッ!?」
カネサダちゃんが合体悪魔の身体に腕を突き刺した、と思ったらダイレクトにMAG結晶体を引っこ抜いとる!? そんなお前、科学とオカルトから製造されただろうに銃器もナイフも使わない原始的な解決方法でいいんか……。
まぁ俺の困惑とは関係なく、合体悪魔には効果抜群のようだが。もうひとつ、またひとつとカネサダちゃんが結晶体を強奪して砕くたびに合体悪魔の素材となっているだろうナニかが消えていく。
あれは……砕かれたMAGが悪魔に戻るよりも先にカネサダちゃんが吸収してるのか。なるほど? 単純にダメージを与えて削るだけじゃなくてリソースの奪い合い、という戦い方もあるのか!
是非とも次のヨモツイクサとの戦いに活かしたいところだが、そのためには自分の命をどうにかこうにか生かしてやらねば。
あ、逃げるのはもう諦めましたよ? だって自分より速い相手から逃げても追い付かれるだけだもの。
「おマエ、おぼエでルゾッ! ミンなをいじメタヤつとおんナじにんぎょウダろッ! へいダイざんのながまノふりじテ、ミんなニひどイごどジダろぉッ! オバえなんがぁ、ぼグがやっづゲてやルァァッ!!」
「覚えている、は正しい表現ではありませんね。私は旧型ではありますが製造されてから僅か60年ほどしか稼働していませんので」
「オマえなんがァッ! ボクだちがマルカジリにジでやるッ!!」
蛇のような部分が巨大化し、カネサダちゃんを丸飲みにしようとしているのか口を開けて襲い掛かる。
カネサダちゃんは動かない。いや、動く必要がないのだろう。彼女の運動性を考えれば回避なんて簡単なはずなのにあえて立ち止まっているのは、たぶんわざわざ避ける必要などないと判断したからだ。
蛇の口へ向け腕を伸ばす。
流れるMAGの光が紅から白へと代わり。
「──コウガオンッ!!」
えぇ……? キミも魔法使えるのぉ?
疾風のガルや衝撃のザンとは趣の違う、火炎のアギほど暴力的でもない光の波動が蛇の頭を吹き飛ばした。
キラキラと輝く粒子の余韻はどこか神秘的でさえもあり──コウガオン? コウハ系? それメガテンの魔法だっけ? いや、まぁ、ガルとザンが共存してる時点でペルソナ混ざったところでいまさらなんだけどさぁ。
そして突然の魔法にビックリして気付くのが遅れたが、魔法を発動させたカネサダちゃんの左腕もブッ壊れているじゃないか。
肘のあたりから肉片と機械部品の残骸が一緒にぶら下がっている姿は、彼女が『人造』だが『人間』であることを突き付けてくる。
……頑張って控えめに表現してみたが、カネサダちゃんへの気遣い無しで身も蓋もない言い方をすると普通にグロいな。
なんつーのかな~、こう、化け物が人間を襲うときの純粋な暴力由来のグロさじゃなくて。人間の叡智と欲望が仲良く握手して誕生した狂気というか、人間って醜いと思わないか? と煽られているかのような不快なグロさがヒシヒシとこう、ね?
そして対する合体悪魔のほうは……うん、元の少年の姿に戻ってるな。それも遭遇したときの『完全な』姿にだ。
肉体はまだしも破れた作業着まで戻ってるあたり、なんかもう物理的な存在からはズレてるんだろう。理屈なんぞ知るかッ! 考えるよりも先に適応して対応せんとあっちゅうまに死ぬんだよコッチはッ!
「……あ、お花。うえきばちがたおれちゃってる、はやくなおさなギビィ」
おっふ。そりゃ見た目は子どもでも中身が化け物だってわかってるけどさ、それでも頭をバツンと踏み潰される姿はさすがに視覚的攻撃力が高いな……。
「お待たせしてしまい申し訳ありません、少尉殿。お恥ずかしい話ですが、私は初めてシステムを起動したものですから最適化まで時間がかかってしまいました。
あぁ、この腕でしたら大丈夫ですよ。速乾性流体金属が──そうですね、止血剤が配合された軟膏のようなものですぐに覆われますので。異能に目覚めているとはいえ、人間3人を処理する程度であれば問題ありません」
ほ~らね☆
やっぱり次は俺の番じゃ──いま3人言うたな。ヒーホーちゃんはなんとなくターゲットに含まれているだろうなとは思ったが、やっぱり軍曹も処理する対象なのね。
まぁ、いくら知力が低い俺だってさすがにな。今回の一件で日本帝国がバッチリ悪魔の力を利用していることも、それを知ってしまった人間をガッチリ口封じしてることも理解したもの。
そりゃ悪魔の姿を見ることができるようになった軍曹を生かしては帰さんよなぁ。理由など必要ない、結果がそこにあるのだから処理するだけだってか?
スマンな軍曹。前言撤回だ。貴様を逃がしてやるのはもうムリだ、もうしばらく俺たちと一緒に黄泉の国の観光を楽しんでくれ。
もちろん中に入るためのチケットは1枚も持ってないから、全員そろって入り口だけ見て引き返すことになるけどな!
「ハッハッハッ! そいつは残念でありますなッ! 死者の国なら歳もとらんでしょうし、美人が大勢いるかもしれないと期待したのですがねッ!」
「えぇ~? だって死んじゃった人が暮らす国なんですよ軍曹さん。どっちかって言うと、お爺さんとかお婆さんとかばっかりなんじゃないですか?」
うーん、この世界だと若いD民のほうが多そうな気もするなぁ。もっとも、仮にそうだとしてもヨモツヘグイの効果で人間じゃなくなってると思うが。
「少尉殿、お忘れですか? 少尉殿のサポートは副官である私の仕事です。ご心配なさらずとも私が必ず黄泉の深淵まで送り届けて差し上げます。もちろん私も御一緒しますのでご安心ください」
貴方を殺して私も死ぬわッ! ってコトォ!?
愛が重いぜカネサダちゃ~んッ!
たぶん処理する目撃者ってのには、処理する側である人造超力兵も含まれてんだろうな。なんかこう、メモリー的な物が残ってると危険とかそんな理由で。
さて。こちらは3人、相手はひとり。しかも武器は手放して片腕しか使えない。
とまぁここだけ説明するなら勝てそうな気もするが、なにせ俺たちとは基礎スペックが大真面目に桁違いだ。
それに残った右腕で強力な魔法を使ってくるかもしれないし、自分も死ぬ前提なら至近距離でブッ放して相討ちも望むところだろう。
これが別のファンタジー世界なら、カネサダちゃんに呼び掛けることで解決できる可能性もあるが……試すだけ試してみるか? 相手の種族、あえて分類するならマシン系だけど。