メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
「少尉殿、まずは自分が接触を試みます。状況の把握と対応は全てお任せしますので、いざという場合には自分ごと処理をお願いします。
もちろん命は惜しいですがね。まぁ、市民を守るべき軍人でありながら人間を襲う化け物に成り下がってまで生きるなど自分はお断りでして」
ぐ、軍曹ォォォォッ!? お前ってヤツはぁ……ッ!
その尊い自己犠牲の精神に対して、俺も特務少尉として真摯に応えてやらねばなるまい。と、いうワケで貴様の提案は却下だ軍曹。軍人として誇りある生き方を是とするなら上官の命令には従え。
そんな苦虫を噛み潰したような顔するこたぁないでしょ? いや、わかってはいンのよ。俺たちが情報を生きて持ち帰ることができるように軍曹が体張ってくれようとしたことぐらいはわかってンのよ。
でもね~そんな甘い判断が通用しない相手もいるんだわ。さすがに前世の記憶やらメガテン知識とは説明できないけど。まぁアレよ、俺の異能に関係する知識と経験に基づく判断ってことで納得してちょうだいな。
会話で情報を引き出すという発想が悪いんじゃない。会話をする、という行動そのものにトラップが仕掛けてある場合があるから油断できんのが悪魔や天使という存在なのだ。
ならどうするのかだって?
そらキミたち、このまま黙って振り向いてからの全速前進に決まってるじゃないか。見なかったことにして帰ろうぜ?
ボス戦前のハイ・イイエで見逃してくれるパターンはけっこうあるし、なんならとあるゲームなんてもう帰るを選んだら本当にダンジョンの外まで送り届けてくれるヤツだっていたんだぞ。
はい姿勢を正して元気よく回れ~右ッ! ヨモツイクサの包囲確認ヨシッ! さらに回れ~右ッ! よ~し、気合いを入れて日本帝国の平和と繁栄のために目の前のアンノウンをブチ転がしちゃうぞ~ッ!
「ボクはねぇ、お花を増やしたあとはねぇ、あたらしい“いれもの”になるんだって! お父さんも、お母さんも、それに友だちもみんな“いれもの”を作るためのおしごとをおてつだいしてるんだって、ヘータイさんがおしえてくれたんだ!
それでね? その“いれもの”をいつでもたくさん作れるようになったら、ニホンがうちゅうをぜ~んぶ平和にして、たくさん、たぁ~っくさんの友だちがしあわせになれるんだって!」
「少尉さんッ! まわりの化け物たちがみんな崩れて変な光になっちゃってるよッ!?」
(ヒホッ!? アッチからもコッチからも、まるでMAGのシャワーみたいだホッ!)
わぁすご~い。男の子にMAGの光とやらがどんどん集まって、まるで理科や保健体育の資料で見た受精卵の写真みたいになっちゃってるわ~。
知ってる知ってる、このあと男の子がビックリでドッキリな変身するヤツでしょ? だってもう身体のいろんな部位がどこぞのB級妖怪の弟みたいになってるもん。いま100パーセント中の何パーセントぐらいなのかしら。
「……あれ? よくみたら、そっちのお兄ちゃんとお姉ちゃんはなにかヘンなのが──あ、わかった! それがシレイカンさんがいってた“わるいオバケ”なんだね!」
わるいオバケ? ……まさかッ!?
(アタシたちのこと見えてるのッ!? )
「まっててねお兄ちゃんたち! ボクがそのオバケをやっつけてあげるから! そしたらお兄ちゃんたちも、おじさんも、みんなシレイカンさんにいれものにしてもらえるよ!
ボクと僕と僕たちとボクとボボボボボボクたたちちちちといっしょに一緒にいっしょーにぃーコッカコウケンをコウケケンをコッコカケンのギムをボクたちと一緒にィィボォォクゥゥゥゥとォォォォッ!!」
逆にね、うん。ここまで酷いとむしろ冷静になってきたンだわ。驚きすぎで頭が冷えてるンだわ。正気度チェックに成功したのか大失敗してマヒしたのか、コレもうわかんねぇな?
名前もわからない、判別しようがないほど多種多様のナニかが混ざった合体悪魔とでも定義すればいいのかな。だって本人が僕たちって言ってたし。
アレが周囲のヨモツイクサからMAGを根刮ぎ奪ってくれたお陰で多勢に無勢という地獄は回避できたが、その代わりに空間を埋め尽くさんばかりのヨモツイクサから搾り取ったMAGを蓄えているボスと戦わないといけないという地獄が新しく産み出されたワケなんだが。
コレ、逃げる系のイベント戦闘だよね?
ピクシーさん、仮に俺の命を欠片も残さず使いきる前提だとして勝てる見込みは悲しそうに微笑みながら首を横に振るってことはゼンッゼン無いですよねぇ~そりゃそうだアホな質問しちゃってゴメンちゃい☆ テヘッ♪
「これが噂の乙型ヨモツイクサでありますか少尉殿──少尉殿ッ!? その肩にいる小さいのは何者……T0811、キサマもかッ!? いったいなにがどうなって──ッ!?」
軍曹、お前もか。えぇ~? なんで急に軍曹までピクシーさんたちの姿が見えるようになってんの~? ワケがわからないよ。
だがしかしッ! 激しく状況が変化しているのに無駄に混乱してる場合なんかじゃねぇッ!! 小隊指揮官としての責任遂行、生きるためにッ! 烏合の衆が生き残れるほど悪魔との戦闘ってのは甘くねぇンだわッ!
俺とヒーホーちゃんがふたりかがりでヤツと戦うッ! テッセン軍曹、貴様は行動不能に陥っているカネサダを援護しつつ敵の増援を警戒ッ! 状況に合わせて撤退せよッ!
不満か? あぁそうだろうな、貴様の性格なら俺たちの支援を優先するべきだと判断するだろうさ。だがな、貴様。俺たちを信用して命を預けることができるか?
俺にとってピクシーさんは何度も死線を潜り抜けてきた大事な相棒だ。だから彼女の言うことを無条件で信頼できるし反応もできる。だが貴様はどうだ?
命令だからと、感情を無視して俺の言葉を信じて戦うことが……本当に、本心からできるのか? 少なくとも俺が貴様の立場なら絶対にムリだぞ。だって胡散臭さレベルMAXだもん。
命令だ、軍曹。──下がれッ!!
「~~~~ッッッッ!! 了解であります少尉殿ォッ!! 甘さも含めて、世辞抜きで貴方は良い現場指揮官ですッ! どうにか生き残ってくださいッ!
秘密を抱えていたことなど心底どうでもいいですが、勝手に死なれるのは困りますッ! 有能な上官を見殺しにして失うのは我々下士官にとって最大級の屈辱でありましてなァッ!!」
有能な指揮官ならこんなことになる前に対処してると思うんですが、それは。ま、景気付けの冗談が言える程度には余裕がまだ残ってるってことなのかな? さすがはベテランだね!
さてヒーホーちゃんよ、ユキダマくんという特別な相棒がいるキミにはギリギリまで俺に協力してもらうよ?
言っとくけど拒否権はないかんね? 俺ひとりじゃあっという間にコロコロされちゃうし、そしたら全員仲良く花壇にされちゃうもの。
「了解であります少尉殿ッ! えへッ、さすがに怖くて手も足も震えてるけど……だからこそ! 死にたくないからこそ全力でジタバタしなきゃ、ですよねッ!!」
よし、やる気は充分だなッ!
でも、やっぱつれぇわッ!
いや当たり前だろ。一番階級の高い俺が絶望してたらアカンと思って声を張り上げたけど、もうMAGコートの中なんて汗でダラダラのビチョビチョだよ。不快指数がK点超えしてんのよ。
ちゃんと頼もしい感じの笑みはできてるかな? 俺。ガンパレードがマーチしてる世界の委員長が「指揮官が笑ってないと部下が不安になる」って言ってたから参考にしてみたけど、普通にしんどくて早くも顔面神経麻痺になりそう。
帰ったらシャワー浴びながら丁寧にモミモミしなきゃ。そのためにも絶対に絶対に絶対にッ! コイツから逃げきってやるぜッ!!
「────人の世は」
……ん? カネサダちゃん?
「人の世は人が支配するが道理であり摂理であり真理である。なれば
森羅万象悉ク土ニ還リ日ノ本桜国ノ礎トナルベシ。駆逐対象『タイプD・複合型』の顕現を確認。システム『
やっぱ、つれぇわ……。