メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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イントルード:7

 状況確認! 

 

 当たり前だが、本人のやる気とは関係なくカネサダちゃんは戦力外として扱うものとする。当然撤退するときにはフォローが必要になる、という前提で動くべきだと考えるなら……戦えるのはふたりだけ。

 

 ヒーホーちゃんもMAGモグモグ効果で身体能力は見た目よりずっと高いが、さすがにカネサダちゃんを抱えて逃げるのは難しい。

 そしてこの場で一番階級が高い俺は状況に合わせた指示で皆を動かす責任があるので、フォロー役は自動的にテッセン軍曹になるだろう。

 

 

 なんだか嫌な流れだな、コレは。なけなしの知恵を絞って配置を考えた結果、悪魔と契約して戦うサマナーコンビが誕生してしまった。

 これを偶然と片付けるのは簡単だが、知らず知らずに思考が誘導されている……なんて話が普通にあり得るのがディストピア世界でありメガテン世界だからなぁ。

 

 警戒すべき脅威の気配は施設の地下から、体力的には余裕がある、ヨモツイクサの数は少ない、カネサダちゃんもまだ動ける、仲魔たちも強くなっているし軍曹はベテランの軍人でヒーホーちゃんとユキダマくんのコンビネーションも悪くない。

 

 だから、少しぐらいは問題ない。そう、危なくなったら逃げるだけなんだから問題はないハズなんだが……これは、本当に俺の判断なのか? 

 あぁ、クソ。なんで俺がこんなことで悩まなきゃならないんだ。いっそのことMAG結晶体を貪るように喰い尽くしてやるぐらいの気概で悪魔を支配すれば──ダメに決まってんだろアホか俺はァァァァッ!! それ結局身を滅ぼす三流悪役の思考回路だボケェェェェッ!! 

 

 

 ふぅ、危なかった。前世の経験が活きたな。この調子で前世の記憶を掘り起こして精神の安定化を試みよう。

 

 まず俺の頭がなんらかの影響を受けている可能性はあるものとして考えよう。判断力を鈍らせたり感情の振れ幅を極端にしたり、なんてのは天使も悪魔も得意分野だろうからな。

 その上で、俺たちは全員が好戦的な方向へ誘導されている可能性が高いか? 本来なら一番冷静に撤退を進言してもよさそうなカネサダちゃんが偵察の続行を提案し、軍曹まで自然に同意をしているのはさすがに少し不自然だ。

 

 俺自身の判断? んなもん論外だよ! よッ!! なんで逃げられる大義名分ゲットしてんのに奥へ奥へ進んでんだって話だよ。バカなの? 死ぬよ? 

 ヒーホーちゃんは……よぐわがんにゃい。この子なんだかんだ視野も広めで冷静に徹することもできるけど、けっこう頭パッションな部分もあるしリスクを考えた上で賛成してるかもしれん。頼もしくはあるけど。

 

 だが──どうする? やっぱりやめようと言って引き返せる空気ではない。前世の記憶がどうだなんて言えるワケがない。完全に後手に回ってるぞコレ。

 切っ掛け、かな。どんなことでもいい、屁理屈をこねくり回して撤退するための理由をでっち上げて特務少尉権限で押しきるしかねぇ!

 

 さぁ行くぞ、待ってろバラエティー厄災ガチャッ! なるべくシンプルで見た目にもわかりやすくて走れば簡単に逃げきれるトラブルで頼むよ~ッ! 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「あれ? またおきゃくさんだ! こんにちは! ちょっとまっててね、ボクまだおしごとのとちゅうなんだ! このお花をたくさんたくさん植えてふやすのがボクの“やくめ”なんだよ!」

 

 

 

 

 嘘だろ。

 

 

 

 

 子どもが、小さな男の子がいるぞ。──ピクシーさんッ!! 

 

(気をつけて! コイツ、MAGの反応がぜんぜん無いッ! キモチワルい……なに!? なんなのコイツッ!? MAGは感じないのにニンゲンのような気もするし、アタシたちと同じような気もする……とにかくヤバいわよ! コイツッ!!)

 

 

「よいしょ、っと。うーん、このまえあたらしい“うえきばち”もとどけてもらったのに、あっというまにたりなくなっちゃったな~。

 でもがんばってお花をふやさないと。これがボクのコッカコウケンのギムだから。

 ボクがいっしょうけんめいお花をふやせば、かってにおしごとをやすんじゃった()()()()で“しせつ”につれていかれたお父さんとお母さんもいつかは帰ってこれるんだ!」

 

 Cクラス帝国市民だ。作業着のデザインが少し違う気もするが、俺がいま活動の拠点にしている採掘基地で見かけるC民と同じ格好だ。何度も見ているし、居住区で遊んでいた子どもたちも同じ格好をしていたから間違いない。

 だがあの男の子が持っているのは……あれが、植木鉢だと? だとしたらデザインした奴はかなりの悪趣味か、そうでなければ美的センスがイカれてるのだろう。

 

 そうでなけりゃあ、なにが楽しくて“頭蓋骨”なんかに花を植える必要があるんですか? 

 

 

 それに、周囲に咲いてる花の下。植物に覆われているが、あれはどう考えても……だ。あの子どもは植木鉢を届けてもらったと言っていたが──マジでふざけんな、そういう流れかよッ! 

 なぁ軍曹、この基地が放棄されたのは100年以上も昔の話なんだよな? あの子どもに花壇扱いされてる人間だったモノはどれも年代物には見えないぞ。いくら雨風が当たらないとはいえ、朽ちるどころか色落ちもしてないじゃないか。

 

「それだけではありません少尉殿。自分はあのような装備に心当たりなどありません。ご存知のとおり自分の仕事はひよっこどもの訓練を監督する立場です。

 なので階級の権限とは別に基地で管理している装備はほぼ全て把握しております。資源惑星の万年軍曹ではありますが自分も軍人の端くれ、装備を見間違えるほど間抜けではありませんッ!」

 

 

 少数精鋭で威力偵察することが決定したタイミングで。

 

 天使兵関連のトラブルがあった、なんて噂のある廃棄された施設に。

 

 基地にある物とは別の装備を身に付けた集団が先にやって来ていて。

 

 見た目は人間の少年なのにMAGの反応がない男の子にお花の肥料にされている。

 

 

 新鮮なフラグを惜しみ無く使い素材の味もしっかりと活かされた素晴らしいフルコースだな。デザートには背後で「ぐぅ……ッ!?」とか言って頭を押さえながら膝をついている人造超力兵も待ってるぞ? 

 すでに胸焼けが酷くて胃袋の中に残ってるモノ残さず吐きそう。というか泣きそう。なんだコレ、100年前の帝国軍人たちの尻拭い? この世界に黄泉比良坂があるのなら、そいつら全員探しだしてまとめてブッ飛ばしてやる絶対に。

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