メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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イントルード:5

「100年以上も前に放棄された採掘基地、それもたかが偵察如きに貴重な装備の使用など許可できるワケがないだろう──だ、そうです。せめてもう少し言葉を選ぶ努力ぐらいはして欲しかったですね。

 あの大尉殿が真意が何処にあるかなど関係なくご自分の名前で立案なされた作戦が大本営のサーバーに記録されている、という事実と意味を正しく理解なさっているのかはわかりませんが……ともかく、この威力偵察任務は基地司令部のサポートは得られないものとして遂行する必要があるようです」

 

 

 やっぱギャラリーが大勢いるところでアゴを粉砕したのはマズかったかな……。

 大義名分があったところで個人の暴力など組織の権力の前では無力だと知る良い機会になったね! 授業料がべらぼーにお高いのだけが問題だけど。

 

 先に手を出した俺が悪いのは自覚しているが、それはそれ。じっくり丁寧に仕返しをしてくれやがりましたあの大尉への棚上げ報復はそのうち考えるとして、まずは任務をどうするかだな。

 生存を優先して失敗で終わるにしても、せめてル号採掘基地の外観を確認するぐらいのことをしなければ立場はかなり悪くなるだろう。特務少尉なんて肩書きがあるから尚更だ。

 

 

 じゃあ具体的になにができるのかと言われれば、とにかく現場を歩いてみるぐらいのことしかできないんだけど。

 

 こういう軍隊国家系の世界っていうのは、もっとこう息苦しいぐらい堅苦しくて、むしろ逆に作戦行動や戦闘関連はいろいろキッチリしてるもんだと思ってたんだけどなぁ。

 使い捨ての立場からスタートしたせいで全体像が見えていない、っていうのも判断を難しくしている。どんな優秀な人間でも大勢集めると2割は無能になるという話は聞いたことがあるが、この基地の司令部の人間がまさにそれなのだろうか? 

 

 おっと、危ない危ない。また思考が余計な方向にズブズブと沼るとこだった。どんな正義やお題目でも命に勝るものは無し、大局を見るよりも目先の生きるか死ぬかのほうが大事なのだよ兵隊にとってはさ。

 

 よし。ここはメガテン世界(仮)なのだから、RPGの基本に忠実なやり方でいこう。とりあえず適当に進み、余裕があるうちに帰りながらマップを埋める。

 ターミナルでセーブはできないが、その代わりに即死魔法のムドをローリング回避できるので経験値欲しさに欲張るようなことさえしなければ簡単には死なんだろう。

 

 

 この威力偵察が終われば本番の奪還作戦がマジで始まってしまうかもしれない。あの大尉の目的が俺を貶めることだとしても、犠牲になるのは比喩でもなんでもなく本当に無関係の兵隊たちなのだ。

 

 そいつらがひとりでも多く生き残れるよう道中の安全ぐらいはなるべく確保してやりたい。俺の軽率な行動のせいで大事に巻き込んでしまうかもしれないんだ、それぐらいの責任は果たさないとな。死なない範囲で。

 もちろん苦労して集めた情報の出番がなければそれが一番面倒が少なくていいんだけど。……いや、むしろワンチャンそれ期待できるのでは? 骨折り損のくたびれ儲け狙いで、偵察が終わったあとにやっぱりや~めた! みたいな。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 3歩進んで2歩下がる。動画なら倍速編集かイベントまでカット、ライブなら配信者が肉壁のキモさについて言及したあと話題に困って雑談を始めるような地味で堅実な探索を続ける俺。

 

 カネサダちゃんは異能を使えないが、そのぶんMAGを運動性とパワーに変換しているため物理的な強さは圧倒的である。

 そしてテッセン軍曹は攻撃魔法こそ使えないが、攻撃力と防御力と命中・回避を1度に強化する『ヒートライザ』の劣化版みたいな異能を使えるようだ。いや、普通に羨ましいんだけどそれ。シチュエーション選ばず使えるヤツじゃん! 

 

 このふたりが某手強いシミュレーションのお助けパラディン並みに活躍してくれているおかげで、俺とヒーホーちゃんの仕事は細々とザコを退治するだけ。これもう簡単にル号採掘基地まで行けるっしょ! ……と、思うやろ? 

 

 

「副官さん、どうかしたんですか? さっきから耳ポンポンしてますけど、ゴミでも入りました?」

 

「いえ、雑音が少し……。風の鳴る音が近くでボソボソ呟いているようで邪魔に感じたというだけです。心配されるほどのことではありません。それよりも、風に動きがあることのほうが厄介ですね」

 

「ここまで無風だったのに急に動きがあるということは、この先の何処かで地上まで繋がっている空間があるかもしれませんからな」

 

「……? 軍曹さん、それってなにかマズいんですか? 地上が人の住めない環境になっている、って話なら学校で教えられましたけど」

 

「あー、それはだな……。そうでした! そういえば少尉殿にはまだご説明しておりませんでしたな! 丁度いい機会ですので休憩のついでにご説明させていただきます。

 資料を閲覧する権限の無いDクラス帝国市民にも聞かれてしまうかもしれませんが、ここは戦場ですからそういうこともあるでしょう」

 

 簡単にまとめると。

 

 採掘しまくって工場バンバン建設してガンガン金属加工しまくってたら重金属イオンが水やら空気やらに悪さして惑星まるごと生物が死滅しちゃったテヘペロ☆(・ωく) ということらしい。

 惑星単位で死滅とか環境破壊の規模が前世と比較になんねぇな? これには正しい都市破壊・美しい環境破壊の専門家であるどこぞの破壊神アレクなんとかさんもご満悦ですねバカじゃないの? 

 

「じゅーきんぞくいおん、ってなんですか?」

 

「目に見えないほど細かい金属の粉末のようなもの、と想像してください。実際にはそのような可愛らしいモノではありませんが」

 

「その様子ですと、少尉殿もご自身で色々と勉強なさっておられるようですな。知識を深めるのは良いことです。お察しのこととは思いますが、それらを含んだ水は強い毒性を持っております。

 別の区画の話ではありますが、無茶な採掘が原因で派手に崩落が起きた結果、どんな偶然が重なったのか大量の水が流れ込んできましてな。当然坑道にいた者たちは全員が溺死、基地や居住区の生き残りも鉱毒でやられて救助隊がたどり着いたときには……と」

 

 ここにきて大規模地形トラップ、それも回避がほぼ不可能な即死効果ときましたか。世界が全力で俺を殺しにきているとか考えちゃうのは転生者特有の自惚れだと信じたい。がっでむッ!

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