メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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イントルード:4

 頑丈な人造超力兵であるカネサダちゃんを先頭に、それを経験値が豊富なテッセン軍曹がフォローしつつ、ヒーホーちゃんとユキダマくんが3番手で周囲をキョロキョロ見て、俺とピクシーさんが後ろからの奇襲に警戒する。

 

 ゲームであれば廃棄された施設でも何故か電気が生きていて明るかったりもするが、さすがに100年前の電球は完全にボロボロで光を失っていた。

 もしもヨモツイクサとの戦闘中にうっかりライトを落とそうものなら……状況にもよるが、十中八九それだけで一気に死に近付くことになるだろう。

 

 前衛のベテランふたりはともかく、ヒーホーちゃんとユキダマくんは植物に興味津々のようだ。

 会話を聞かれて不審に思われないよう俺と仲魔たちのようにテレパシーを使っているのか声は聞こえないが、周囲を楽しそうにウロチョロしているジャックフロストに合わせて表情が変化しているのでなんとなくわかる。

 

 ただ意外なことに、ヒーホーちゃんの行動には全く油断が無い。グローブ有りでも直接植物に触るようなことはなく、ナイフの先端を使って調べている。

 

「あ、これですか? 学校の訓練のときに先生に言われてたんです。化け物と戦うときは周囲のモノに簡単に触っちゃダメだって。

 なにがあるかわからないし、安全よりも危険のほうがたくさんあるんだぞ~、って。やっぱり、どんなときも慎重な行動って大切ですよね!」

(↑空腹で敵の一部を食った奴)

 

 ほぅ~? そんなことを教えられてたんか。なかなかD民思いの教官に鍛えられたじゃないの。

 そうそう、ここは戦場なんだからリスクマネジメントは大事よ。後先考えずに迂闊な行動すれば必ず後悔することになるからな! 

(↑初陣で敵の一部を食った奴)

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 いやぁ、謎の植物があちこちに生えているという想定外の光景と出くわしたりもしたけれど。ヨモツイクサの襲撃も無くサクサクと進めてるし、偵察は順調だなぁ~アッハッハッ! 

 これヤバないか? 明確に人間を襲いにくる連中がさ、自分たちのテリトリーに侵入してきた俺たちのことに気が付いてないとかありえんべよ。奥のほうに誘われている可能性もあるってばよ。

 

「ヨモツイクサは食欲と暴力だけが行動原理の原始的な存在であり、連中にそのような知性や判断力が備わっているなどあり得ません。

 もっとも、この情報は少なくとも1000年以上は更新されていない情報ですので、どの程度参考にするかは少尉殿にお任せします。もちろん私は副官として、少尉殿の判断を最優先に行動することを誓います」

 

 大丈夫か日本帝国軍。人造人間のカネサダちゃんまでお前らの情報収集能力を疑い始めてるぞ。宇宙世紀になっても大本営発表が大袈裟なのは古き良き文化だとでも言うつもりなんですかね? 

 ちなみに僕はヨモツイクサには知性がバッチリ備わっていると思ってます。理由? そら乙型ブタ玉が完全に俺のことブチ殺してやるとキレ散らかして突撃してきたからだよッ! ちょっと偶然お顔のお肉を銃弾で削っちゃっただけなのに、失礼しちゃうわッ! 

 

 ともかく。ピクシーさんやユキダマくんでさえも連中のMAG反応は感じていないものの、警戒は強めるべきだろう。

 どうせ今日は練習みたいなものだし、255時間のうち24時間を成果無しで終わらせたところでまだ余裕はタ~ップリ残ってるんだもの、まだ慌てるような時間じゃないさ。

 

 

 

 ……で。ようやく人工物が見える位置までたどり着いたのはいいんだけれど。

 

「坑道の巡回をしているときに長く人が立ち入らなかった区域で似たようなモノとは何度も遭遇しておりましたが……かつて人が生活していた場所が変質しているのは、遠目でもあまり気分の良いモノではありませんな。

 まるで居住区そのものがヨモツイクサどもに取り込まれて、連中の一部になってしまったかのようです。これなら植物で覆い尽くされていたほうが見た目は何倍もマシでしたなぁ」

 

 ライトで丸く照らされた先に見える、あの肉々しいドロッとした変質をした建築物の壁ときたらまぁ。コロニーとは違って薄暗いからキモさも倍増なんだぜ。

 

「ねぇ副官さん。あのブヨブヨした壁がヨモツイクサみたいな物だとしたら、アレを切り開いたら中からエネルギーじゃなくて生体MAG結晶体が取れたりするんですか?」

 

「いえ、そのようなデータはありません。たしかにあの脈動している管のような部分からはMAGの反応を感知していますが、それも流動的なので結晶化はしていないと考えるべきです。

 念のため言っておきますが、異能の使いすぎで消耗したMAGを補うために経口摂取で直接取り込もうなどと軽率で無謀な行動は慎むように。そんな馬鹿げた方法を選ぶくらいなら遠慮せずに結晶体を砕きなさい。いいですね?」

 

「……ウッス」

 

 ……ウッス。

 

 

 しかしこれは……さすがにこのタイミングで1度引き返すべきだろうか? 報告したところで俺が瀕死の大怪我でもしない限りあの大尉殿が奪還作戦を撤回するとは思えんが、それでも正式な軍事行動である以上俺には報告の義務があるし。

 ここは冷静で慎重な判断が求められるな。思考回路をクールにするんだ、俺。喫茶店でお値段が時価で紹介してもらえるレンタルボディーガードのように。

 

 

 進む→キケン! 

 

 戻る→あんぜん! 

 

 

 よし、本日の偵察任務はこれにて完了とする。現状で許される権限の中で、ヨモツイクサに汚染されたエリアの探索に必要な物資を揃えてから再び調査を行う。

 

 どうせならパァーッ! と居住区ごと焼却してやったほうが面倒は少なくて済みそうなんだけどな。

 たぶん酸欠で俺らも大変なことになるけど、少尉程度の身分では発見しなくてもいい物品とかもまとめて灰になってくれるはずだ。

 

 まったく。居住区を通れるようにするだけでもアレコレ考え事が多いと、本命のル号採掘基地の偵察ではどれだけ注意力が試されることになるか想像するだけで疲れそうだ。

 さすがに基地の内部に踏み入ることにはならないだろうが、もしものときには司令部にある資料や司令官の個室にある雑記帳の類いには近付かないようにしなければ。ヒーホーちゃんにも特務少尉として厳命しとこ。

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