メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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イントルード:2

「なるほど。あくまで“威力偵察”であり“奪還”ではないところがしっかりと考えてありますね」

 

「ですなぁ。それに副官殿、この部分を。明日の帝国基準時刻○八○○より255時間以内に行動開始とする、とあります。準備のための時間も偵察であれば申し分無い猶予でありますな!」

 

「人員を少尉殿を含めた4人程度の少数精鋭に指定されているのも良い目の付け所です。もともと特務少尉ということで単独行動に強い権限を持たされていますから。

 仮に明日にでもこの基地がヨモツイクサの大群に襲撃されて全域が戦場になれば話は別ですが、その場合は威力偵察よりも面倒なことになるのではないかと」

 

 そんなお前、仕事が嫌だから職場を艦砲射撃で吹き飛ばそうみたいな解決方法はさすがの俺でも望まんわい。

 

 それにしても……廃棄された採掘基地の奪還及び再利用計画と、そのための威力偵察ねぇ。本当に廃棄したのか、それともヨモツイクサに襲われて廃棄するしかなくなったのか。

 本当は連中に奪われたのを、いやいや使わなくなったところにアイツらが棲み着いたんだよ? って誤魔化してる可能性のほうが高そうじゃない? 

 

「経緯はどうであれ、基地司令部からの正式な命令ですので断ることはできません。少数での作戦行動ですから尚更ですね。

 残り3枠のうちひとつは私が同行します。私の任務には少尉殿の護衛も含まれていますので、さすがに今回ばかりは待機命令は聞けません」

 

「では、もうひとつの枠は自分が担当させていただきましょう。ひよっこどもの訓練ばかりでは身体が鈍ってしまいますからな! 

 残る一枠ですが……心情的には協力を期待できる連中はおりますが、如何せん特務少尉殿の権限ではDクラス帝国市民から選ぶしかありませんからなぁ」

 

 それな~。いうてレベルアップとチップ稼ぎばっかりで、D民たちとの交流なんてほぼゼロ……ではないけれど……。

 えぇ~? あの子をこのタイミングで連れて戦いに行くの~? いや、そりゃ見ず知らずのヤツを適当に選ぶよりはずっと頼りになるけどさ~。

 

 

 気持ちの問題ともまた別だよ。何気ない会話でボロが出るのが困る。多数の転生物や転移物に登場する自称凡人の主人公たちのような頭の回転力なんか持ってねーんだよ俺は。

 

 あのファッション一般人どもめ、当たり前のようにそういえば本で~ネットで~とか言ってポンポン天才的閃きを乱打しやがって。

 こちとらピクシーさんのことを思い出せなかったらほぼ詰んでたってのによぉッ!! まったく。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「よいですか、T0811。このMAGコートは本来であればDクラス帝国市民である貴女には分不相応の装備です。

 生体マグネタイトに関する知識は一応教えはしますが、ほかのDクラス帝国市民に漏洩すれば厳罰の対象となるので気を付けるように」

 

「了解であります! 副官殿ッ! へぇ~、これが少尉さんがピカピカしてた服の正体なんだ~。じゃなかった、正体だったんですね。おぉ、グニグニ伸びる。

 ところで、なんで裾の部分だけ雑に切られてるみたいな感じになってるんですか?」

 

「机上の空論よりも現場の判断を尊重した合理的な改修によるものです。それと、少尉殿の推薦により貸し出していますが、少尉殿と同等の性能を引き出せる保証はありません。決して過信しないように」

 

 

 背に腹はかえられぬ、生き残るためには手札の出し惜しみなんてしてる場合じゃないのだよ。あとで過保護ちゃんからは睨まれるかもしれんが知ったことか。

 さて軍曹、お嬢さん方はお召し替えの時間だ。野郎どもは気を遣って部屋を出ていくとしようか。

 

 

 

 

「なかなか見所のある面魂をしていましたな。今回の任務を生き残ることができれば良い指揮官にもなれるでしょう。もちろん出世街道を本人が望むのであれば、ですが。

 あぁ、失礼少尉殿。細巻きを咥えてもよろしいでしょうか? 酒は飲まんのですが、景気付けのコレはなかなか止められんものでして」

 

 細巻き? あー、タバコのことね。どうぞどうぞ、いまさら副流煙なんか気にしてもしょうがないし。

 きっと酸素の供給工場とやらが停止したら、この基地もあっという間に黒煙で占拠されるんだろうねぇ。

 

「ありがとうございます。いやぁ、発泡酒など一番小さな缶でもなかなかのチップを取られてしまいますからなぁ! 同じ値段で白飯に肉茄子炒めの小鉢と味噌汁を付けられると思うと、コレがなかなか……。

 しかし、なんですなぁ。こうして重要な任務の前に煙なんぞを揺らめかせていると、独り言など呟きたくなりますな。例えば、これから自分たちが向かう『ル号採掘基地』に関する噂話とか」

 

 そうか、それはまた変わったクセを持ってるじゃないか軍曹。なぁ~に俺もちょうど寝たフリでもしたい気分だったし、好きなだけ呟いてくれたまへ? 

 

「ハッ! 呟かせていただきますッ! ……ル号採掘基地の最後の基地司令官は罰則にはとにかく厳しい人物だったらしく、とにかく軍人も設備スタッフも一般労働者も大勢が処罰されたそうです。

 ま、あくまで規則に基づく判断であり、細かいうっかりミスや知らずにやらかしてしまった事柄には寛大で基地の運営は問題なく回っていたらしいですがね。ただ──」

 

 

 ちょっと待ってよお兄さん、さっきまで飄々とした雰囲気でお話してたじゃない。急にそんな戦争映画の軍人みたいなシリアス顔とかしないでほしいな☆

 

 

 

 

「その基地司令殿とやらは、畏れ多くも『天使兵』に関する越権行為をやらかして処理されたという噂がありまして。

 ル号採掘基地の関係者はもちろん、周囲の住居で暮らしていた市民もろとも口封じに……などという愉快な話を古株の人間に聞かされたことがあります。あくまで噂話、ですが」

 

 

 かぁ~~ペェャッ!!!!

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