メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
前線拠点への帰り道にて。
「一応、フォローさせていただきますと……その、私が一緒に戦ってた人たちが少尉さんのことをあんまり、その、好きじゃないな~って態度なのは一応ですね、まぁ理由がありましてですね……」
なになに? 異能に目覚めたD民がほかの弱いD民からMAG結晶体やらチップやらを巻き上げていて、そいつらが出世してCクラス戦闘員の伍長扱いになったから、特務少尉なんて御大層な肩書きの俺のこともあんまり好きじゃないんですよ~、と。
あー、そうか。俺は早々にMAG食って能力強化してソロってたからアレだけど、そういえばD民同士の衝突はコロニーでもあったわ。
あの頃はよかったな~、まだこの世界にメガテン要素が溢れてるなんて知らずに無邪気に死に物狂いで日々を生きてたっけ。下手すりゃワケわからんまま魔法で後ろから撃たれてたかもしれんのか。
やはり俺の幸運は相当高いようだな! 戦いの世界では幸運特化こそが最強。ガモウひ○し先生もそう描いてる。
魔法に目覚めてやらかしてる連中が出世してるとこに別の場所で出世したヤツを放り込んで働く意欲を高めようとかアホだろwwという思いはあるが、遠く離れた場所の下っぱ事情を正確に把握しとけよってほうがムリだろう。
アマラ経絡をビビりながら歩いてたから移動はあっという間だったけど、コロニーと資源惑星が実際にはどれだけ離れているのやら。同じビルでさえもフロアが違えば知らぬ存ぜぬが大人の世界の現実なんだぜ?
まぁ、そういうゴタゴタに巻き込まれていないD民なんかは俺のことをアッサリと受け入れられてるんだろうけど。
それとも、やる気を高めるという意味ではどちらでも構わないのかな? 俺のことを気に入らないって連中も“いつかは自分も偉くなってやる”みたいな感じでバリバリ戦うようになったりとか……あるか~? どう思うよ?
「うーん……。一緒にチームを組んでいた子たちはそういう部分もあるかもしれませんけど……私は遠慮したいですかね~。だってヘタに偉くなったら、今度は自分がイヤな目で見られちゃうじゃないですか。
──へ? だってそうですよね? 少尉さんはほかの場所から来たのにここで偉そゲフンッえ~っと、厳しい態度を崩さない軍人さんたちと同じだと思ってる人もいるって、つまりそういうことですよね?」
首をコテンッとかしげる動作は愛嬌タップリだけど喋ってる内容はだいぶ冷静で切れ味ありますねぇ!
これ俺が仲魔を連れているからある程度は信用、あるいは利用しようって判断してくれたけど、そうじゃなければもう少し警戒されてたかもしれんな。助けたことには感謝してくれそうではあるが。
しかしこれだけ冷静に物事を考えることができるのに、自分の名前が番号で管理されてたり当たり前のように化け物と戦わされていることには疑問を持たないのだろうか? いや、そもそも疑問を持つための取っ掛かりがないんだから当然か。
しかしわからんなぁ。使い捨てにするつもりならそもそも人間性が育たないよう徹底的に締め付けたほうが効率がいいだろうに、なぜかそれをしていないのはどういうことだろう。ディストピア社会の最底辺労働者なんて人格否定ありきみたいなもんだと思ってたが。
つまりは現状の緩い管理体制のほうが帝国にとって都合のいいなにかが……いかんな、思考が余計な方向にズレまくった。集中力がとっ散らかってもうた、こりゃもうダメだな。
本当ならユキダマくんとの出会いとかも含めて探りをいれたかったんだけどなぁ~。ノイズ混じりの脳ミソではうっかり余計なこととか喋りそうだし、やはり今日のところは素直に休むとしよう。
◇◆◇◆
「見事なご活躍ぶりでしたな少尉殿! お戻りになられて早々に申し訳ありませんが、ご報告せねばならんことがありまして。良い報せと刺激的な報せ、どちらから先にご報告いたしましょうか?」
部屋に戻りシャワーを済ませれば、待ってましたと言わんばかりのタイミングで入ってくるテッセン軍曹。
君いい笑顔してんね~! 間違いなく刺激的な報せのほうが本命だし、それ言い方を濁してるだけで悪い報せだよねぇ?
おそらくはお菓子がはみ出てる手荷物が良い報せで、クリップボードに挟まってる書類が刺激的な報せとやらなんだろう。
「こちらは自分の仲間たちからの差し入れです。Dクラスのひよっこどもが危険地帯で作業するための訓練を幼少期から施されていることは伺っておりますが……まぁ、気に掛けてはならない、心配してはならないという規則はありませんからな。
自分からは、少尉殿はお酒は嗜まれないということでソーダ水をご用意させていただきました。資源惑星に配給されるにしては上等な品です、是非お試し下さい」
き、キンキンに冷えてやがる……ッ! いやぁ、風呂上がりに飲む炭酸は最高ですなぁ~。だいぶ口の中もパチパチしてるし、これ以上の刺激はいらんけどなぁ~。
「まぁまぁ、そう遠慮なさらずに。実はつい最近、アゴのまわりがずいぶんと男前になられました大尉殿がいらっしゃいましてな。その方が新しい作戦を基地司令殿に提案なさったんですよ」