メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
優先順位、確認ッ!!
いち、いきのこること。ヨシッ!!
ヒーホーなる鳴き声の正体はわからないが、いや女の子がユキダマくん言うてるからなんとなく想像はできるがそんなものは後回し。
まずはイッポンダタラのタルカジャで味方を強化して生肉アリどもを迎撃しなければ。あと、近くにいる人間はまとめて強化できそうと言われたのでタルカジャなどの補助魔法は“全体ではなく使用者の周囲”が効果範囲の可能性があるな。
マハタルカジャとか頑張って使えるようになってほしいが……ピクシーさんがジオだけでなくジオンガも使えるようになってくれたあたり、スキルの進化も期待できるかな?
キープしていたMAG結晶体をD民たちに景気よく配り、とにかく砕いて補充させつつ魔法を撃たせる。狙いが少しぐらい粗くても相手が多いのでよう当たるわ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってな!
問題はのそりのそりと近付いてくる肉グモだな。狭い通路まで逃げ込むことができればなんとかなりそうだが、そのためには2匹ほど退路を塞いでいるヤツの動きをどうにか封じる必要がある。
俺が囮になってD民たちを走らせるか? いや、肉グモたちがバランス崩して倒れただけで状況は簡単に変わる。急がば回れ、ここは1パーセントでも逃げられる確率を高めるべきだ。
(おいニンゲンッ! あのデカブツ、なんかヤバそうなMAGの力を感じるぞッ!!)
(強い、っていうよりブキミな感じッ! とにかく気をつけてッ!!)
とにかく気をつける!? いやそんなこと言われても!? いやクールになるんだ俺、こうして事前に知らせてくれたおかげで身構えられるんだから贅沢言ったらアカンぜよ! さぁ、いったいなにを──。
「マ……ハ……ヴ、ドォォォアッ!!」
ふざけんなテメェェェェッ!? このタイミングで即死付着の『ムド』とか、メガテン世界の護衛ミッションで許される魔法じゃねぇだろうがッ!! しかも頭に“マハ”が付いてるってことは広範囲に呪殺をばら撒くって意味でアカンこれじゃD民の少年少女たちが死ぬゥゥゥゥッ!!
お前らその紫のモヤモヤに触るなッ! とにかく離れろ避けろ近付くなァッ! こんなモンにビビってんのかだって? 当たり前だよバカ野郎フリじゃねぇんだイキッてないで早く離れだから触んなって言っておバカァァァァッ!?
って、アレ? 即死かと思ったらまだ生きてるぞ? 青ざめた顔で許しを乞いながらガタガタ震えてるあたり全くこれっぽっちも無事ではないが。
(あのニンゲンたち、ほっといたら助からないよ? ヘンテコな腕だったり虫だったりよくわかんないモノにMAGを削り取られてる。
あのままじゃあMAGを全部奪われてココロが死んじゃう。そうなればカラダも最後には終わっちゃうけど、いいの?)
よくないですッ! ナイス解説だピクシーさんッ! あとMAGがダイレクトにダメージ受けてるならディアでは回復できなさそうだな。そのためのリカーム? 使えないけど。
しかしなるほど呪殺魔法ね。即死じゃないならマシかなと一瞬思ったがそんなことねぇな。すっごいジワジワと苦しんでるワケでしょ? 肉体的な損傷よりも何十倍も厄介だよ! もぅッ!
この流れだと聖属性の即死魔法『ハマ』系もろくでもない効果を発揮しそうだな。精神を浄化することで真っ白に塗り潰すとか。
メガテンの天使はそれぐらいのことやるでしょ確実に。自信をもって断言するね、俺は。
ともかくできることをやるしかねぇッ! とりあえずMAG握り潰してダイレクトに叩き込んでみるか。キラキラ輝く右手を構え~精神分析(物理)だオラァッ!! ……よし、まだ恐怖でガチガチだけど雰囲気はマシになったな。
「おいッ! しっかりしろ!! あぁクソ、いったいどうなってやがるんだ!?」
「アンタなにを知ってるの!? あのデカい化け物が変な唸り声あげたとたんにこんなことになってッ!」
そりゃ知ってたから触んなって言ったのにお前らが忠告を無視したんじゃ──唸り声? あ、そうか。俺は魔法の名前を知っているから認識できるけど、そうじゃなければ意味不明な単語の羅列とか未知の言語みたいなもんか。
D民たちも疑問は尽きないだろうが、いちいち答えを用意してやるヒマなんか残ってない。これで時間を使って安定を狙うという作戦は使えなくなったからだ。5人のうちマハムドの影響で動けないのがふたりも出てしまったからな。
支えがなければ自力で歩けないぐらいに消耗しているし、もう1度マハムドが飛んできたら庇いながら避けるのはまずムリだ。ほかの3人はまだ助かる可能性はあるかもしれないが、2回目を食らったふたりはもう助からないだろう。
いいかお前ら、俺があの肉グモたちの注意を引き付ける。その間に気合いで洞窟まで逃げろ。あの図体なら通路までは追ってこれないはずだ。
やかましい煩い黙れつべこべ言ってないで準備しやがれ。危ないから触んなって言ったのに無視して死にかけたバカどもがなにを勘違いしてギャーギャー騒いでんだ。文句あんならテメェらだけでなんとかしてみろや俺はもうひとりで帰るぞ。
……ヨシ、上手に話せたな! もうね、コイツらが俺のことをどう思うかなんてどうでもいいよ。人気だのやる気だの知ったことかよ。
これで学習しないで文句ばっか言い続けるようなヤツはどうせいつかサクッとくたばるでしょ。俺ゃ自分の命を守護るだけで精一杯なんだ、生きるための努力ができないヤツにいちいち構ってられるかよ。
返事は待たず、肉グモ目掛けて突進する俺。
これで動けないようならもう見捨てる。せいぜい来世では幸せになれるよう祈るんだな。バイビーッ!
「あぁクソッ! クソッ!! おい、そっちは任せたぞッ! とにかくあの野郎が囮になってる間に安全なところまでみんなで逃げるぞッ!!」
よしよし、それでいい。な~に、そうやって必死に踠いているときなんて案外なんとでもなるもんさ。助けてやってんのに睨まれるのはムカつくけど、それもまた若さってことで我慢してやろう。
「──凍っちゃえッ!!」
(ヒーホーッ!!)
お、アイスブレスかな? 威力は控え目な感じだけど肉グモが怯んでくれたから時間稼ぎには充分に……じゃなくてさ。キミなにしてんのよ? ここは空気読んで逃げる場面でしょッ!
「私も、私も一緒に戦いますッ! 大丈夫です、みんながちゃんと逃げられたら私もムリせずに逃げますからッ! それに、少尉さんには聞きたいこともイロイロありますし……お願いしますッ!」
(そうだホー! オイラもアンタのトモダチみたいにババーンッ! ドカーンッ! ってすっごい氷を使えるようになってみたいホッ! 教えてくれるまで逃がさないホ~)
……チッ! どさくさ紛れに誤魔化せるかなぁ~って、少し期待してたんだけどなぁ~。
さすがにピクシーさんとウェンディゴとイッポンダタラの姿を見られてんのに気のせいで押しきるのはムリか? まぁムリか。