メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
「非礼を承知で申し上げますが、少尉殿の階級は正真正銘の飾りでしかありません。故に相応の立ち振舞いなどは求めていませんし、任務にも礼儀作法の類いは含まれておりません。
しかし周囲の視線には常に気を付けるようお願いいたします。少尉殿には戦闘以外にDクラス帝国市民の士気高揚、そしてCクラス戦闘員の特殊教育が期待されていることをお忘れなく」
移動用のジープを前に、ついワクワクソワソワしてたらカネサダに窘められてしまった。悪かったって、俺こういう車とか好きなんだよ。
この偉そうな格好がD民たちの鼻先にぶらさげるニンジンだってこともちゃんと理解している。心配しなくても他人の前で得意気になれるほど余裕は無いから大丈夫だって。……自分で言ってて情けないが、事実なんだから仕方ない。
途中Cクラス帝国市民が生活してる居住区が見えたが、マインクラフトの初心者が効率だけを求めて作った建築物にとっても似ている町並みでした。資源惑星にある居住区だからこうなのか、それともCクラス帝国市民全体がこんなものなのだろうか?
テレビに映っていたAクラス帝国市民なんかは武家屋敷みたいな場所に住んでいたっけ。先生は一所懸命帝国に貢献すれば、俺たちのようなD民もいつかはあんな家に住めるかもしれないと言っていたが、それを成し遂げたヤツなんて本当にいるのか疑わしいな。
◇◆◇◆
ザ・普通の坑道。
そうか、手作業で採掘してるから前世のイメージとあまり変わらないのか。洗脳教育がキッチリ行われていれば反乱の心配なんていらないだろうに、帝国側のお偉いさんはリスクマネジメントが過剰なんじゃないか?
案外、最初からそこまで教育の効果を期待してなかったりするのかも。産まれながらのC民がどういうものかは知らないが、俺たちD民は言ってしまえば工業製品のようなもの。いらないモノは処分して新しいD民を補充すれば……それでも12年は長いよなぁ。
俺が働いてたコロニーとは別に、この資源惑星にもD民の生産工場があるのだろうか。なんだかファミコンウォーズの歩兵にでもなった気分だ。やってることもだいたい一緒だし。
新品のサーベルと、大口径の拳銃を装備して。支援役のカネサダは刃渡り長めのナイフにマシンピストルを構えて。坑道の奥へ奥へと進んでいく。
ふむふむ? 入り口から近い安全な区域で採掘作業をしているのはCクラス帝国市民の皆さんで、奥の危険な区域がD民の仕事場だと。うーん、実に露骨で分かりやすい格差社会!
しばらく歩き続けると、天井がない広々としたフロアに出た。どうやらここから先がヨモツイクサの出現区域であり、D民たちの活動拠点となっているらしい。
武器を持っているヤツらが戦闘を担当して、つるはしを担いでトロッコ押してるヤツらが採掘の担当か。ヨモツイクサと戦わなくてもチップがもらえるのは本来なら羨ましいと思うところなんだろう。
そして監視役の軍人たちだが……なんとなくコロニーよりも緊張感があるような気がする。それだけ危険が多いのだろうか?
いや、多くて当たり前か。見通しが悪くてヨモツイクサの接近に気が付かない、なんてことも普通にあるだろうし。それにコロニーとは違って常に上からの奇襲にも警戒する必要がある。
ふ~む? 敵が来る方向が絞られるから廃墟より戦いやすいかなとか考えていたけれど、そんなことはなさそうだな。いざというときに広い場所に誘き寄せて仕切り直す、って戦法が使えないのも厳しいか。
カネサダに教えてもらい中尉さんに敬礼。単独行動が許されているので会話の必要は無し。なんのための特別待遇なんだろうと思っていたが、単純にボロが出ないようにとの配慮なんだろうな。
デスマスアリマスなんて堅苦しい言葉遣いをしなくていいのはマジで助かるわ~。だって戦争やってんだぜ? 俺ら。緊急時にいちいちそんなもん気にしてられないっちゅーの。
「少尉殿は福祉学校で昆虫図鑑などは読みましたか? ──ならばその図鑑に掲載されていた『アリ』や『クモ』のことを思い出してください。
ここで戦うことになる丁型ヨモツイクサは形状や性質がそれらの虫と類似しています。特にアリ型は複数体で行動する習性が確認されていますので、包囲されないよう周囲の警戒を怠らないようにお願いします」
地下の洞窟でアリとクモとな? なんてこった、俺はいつのまにか地球防衛軍になっていたのか! え、もしかして体液飛ばしてきたり粘着性のある糸を吐き出してきたりすんの?
「はい少尉殿。深部ではそうした個体も確認されています。データによると過去に破棄された採掘基地が存在し、その座標に接近するほど強力な個体との遭遇率が高くなっています。
かつてはその採掘基地の奪還を目的とした作戦も何度か決行されたようですが、充分な成果を得られたという報告はありません」
ほぅ。ピクシーさん、どう?
(正確な場所はさすがにわかんないわよ。けどMAGの反応からなんとなくあそこかな~? って感じはする。アンタが行ってみたい、って言うなら案内してあげてもいーけど)
いえ、私は遠慮しておきます。過去に廃棄された基地から強力な敵が出てくるとか完全にフラグじゃん。ゲーム好きマンガ好きの日本人ならだいたいこの先の展開なんて読めるに決まってるだろ!
つまりそのヨモツイクサの巣窟になっている基地にさえ近寄らなければ安心ってこった。危険な敵だろうと出現の傾向が予測できるなら対策もできるってもんよ。
ブタ玉や天使もどきとの突発的な戦闘はさ……アレはだって俺は悪くないよねぇ? なにも情報は無かったし予測なんて出来なかったんだもの。
だが今回は違う。こうして事前に情報をゲットできた。ピクシーさんやウェンディゴに協力してもらえば基地の場所もある程度把握できる。今度のお仕事は楽勝だな! ガハハハハッ!
後書きによる補足をしていない本作は読者の皆さんにとってはそうとう不親切だろうな~とは思ってます。思ってるだけで補足はしませんが。
ただ、いただいた感想から「この情報はなるべく早めに組み込んだほうがいいかな」と考えたりしているので、疑問に思ったことを書き込んでいただけるのは作者としてはとても助かっています。いや、本当に。