メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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トランスファー:5

 ヒャッハーッ! 新鮮な個室だァッ!! 

 

 まず間違いなくカネサダを追い出すことは不可能だろうが、牢屋みたいなD民部屋でもなく独房でもない個人のために用意された部屋ッ!

 人間性を取り戻す音が聞こえるずぇ~。パキーントゥーンって握り潰す音がよぉ~。

 

 夕食の時間になったら迎えにくるとテッセン軍曹に言われたので、俺は単独行動で仕事をするから会議用のドリンクはいらないよと答えてみた。

 それに対して嬉しそうに、ならばほうじ茶を用意するよう炊事班に伝えておきますと返された。ちょっと感動、こんな世界で冗談の通じる相手と出会えるとは。

 

 

 ただまぁ、あーゆー態度は秩序的にはどうなんだ? って心配はあるけれど。

 

「……データとして、彼のように日本帝国の軍人として不適切な人材が所属する集団のほうが何故か効率よく運営されているという事実がありますので。私から言うことはなにもございません」

 

 口にしないだけで私、不満です! って表情を隠せていないぜカネサダちゃん。

 キミ本当にロボットっぽくねぇな? その顔の下ってどういう構造になってんだろ。ほっぺた指でつまんだら柔らかいのだろうか? 

 

 

(ケケッ! オレ様はあのニンゲンみたいに賑やかなヤツは嫌いじゃないぜ。い~い具合のMAGを蓄えてやがるからな。

 むしろボーっと生きてるヤツらはてんでダメだな、MAGが濁っちまってるからかじりてぇとも思わねぇわ)

 

 あー、なるほど。生体マグネタイトって人間の感情の動きが関係してるから、テッセン軍曹みたいな人は悪魔から見れば魅力的なのか。美味しそうという意味で。

 よかったな軍曹、この世界が悪魔や天使が当たり前のように出歩いてる世紀末ワールドじゃなくて。もしそうだったら熱烈なラブコールで周囲が騒がしくなってたんじゃないか? 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 夕食は……なにもイベントは起きませんでしたとさ。嫉妬の視線は全方位から突き刺さってたけど。ま、さすがに俺より階級の高い人たちはそれほどでもなかったかな。

 ただ情報がどんなふうに歪んで伝わってるのか知らんが、同じ少尉クラスの人たちからはなんつーか……好意的というか尊敬というか、とにかく居心地はよろしくなかったよね。だってホラ、勝手に期待されるって面倒なだけじゃん? 

 

 さて、飯を食うたからにはそれに見合う仕事をしなければなるめぇよ? というワケでさっそく戦仕度をしているのだが、カネサダから人修羅さんみたいなデザインのタイツを渡されてしまった俺。これ着て戦えと? 

 

「着用者のMAGに反応して耐久力が高まる特殊スーツです。中佐殿の計らいによりここでの少尉殿の扱いは信賞必罰の『信賞』になります。Dクラス帝国市民であっても、功績を評価され尉官に任命されるのだという実例になるワケです。

 つまり、基本的にその少尉用の軍装を脱ぐことは許されません。当然ヨモツイクサとの戦闘もそのまま行っていただきます。この特殊MAGスーツであれば動きを妨げることなく中に着用することが可能です。……おそらく」

 

 いま小さく最後に“おそらく”って付け足したの聞こえてるからね? 

 

 ……あ、これ。人間の定義から外されそうな見た目に反して意外と肌触り良好だわ。作戦行動中に着用者がおトイレに行きたくなる可能性を全く考慮されていない点を除けば悪くないかも。

 これから俺は戦場で廃棄物を体外に放出するたびに全裸になる定めを背負わなければならんのかぁ。あとカネサダお前これでようやくまともなデータが得られそうってどういう意味だオイ。

 

 はぁ。まぁいいよ。所詮俺は軍にとっては大勢飼育しているモルモットの1匹に過ぎんのだ。役に立つ間はちゃんとエサがもらえるだけマシだと考えよう。

 

 

 ともかく。準備は万端……万端? ということで明日からはヨモツイクサを狩りにお出かけしなけりゃならんのだが、さすがに地形をある程度把握するまでは単独行動は控えるべきだ。

 地の利を侮るヤツは必ず後悔することになる。事前知識もロクに無いまま東京都のとある駅に行ってみたり大阪府のとある駅に行ってみたりするぐらい後悔することになるだろう。なけるぜ。

 

 なのでここはひとつ、チームを組んで行動したいところなんだけど。

 

「はい、問題ありません少尉殿。私の任務には少尉殿に同行しヨモツイクサと戦闘することも含まれています。

 もちろん少尉殿が何らかの事情で単独行動を望まれる場合は命令していただければその通りに」

 

 よし、ロボ子さんならよほどのポンコツでもない限り迷子になる心配はないな! 

 

 

 あ、そうだ。鉱物資源の採掘してるってことは、アッチコッチ掘り進んでいるってことだべ? そもそも近付かないほうがいい場所とかもあるんじゃないの? 

 落盤で生き埋めになってみたり、あるいは急に足元が崩れてしまうことだってあるだろう。いくらMAGの影響で頑丈になっているとはいえ俺は普通の人間だもの、予測できるリスクはなるべく避けたいところである。

 

「危険地帯についてはもちろん把握していますが……単純に情報量が多いので現地でその都度説明するほうが効率的であるかと。

 決して少尉殿の記憶力を疑っているワケではありません。言語だけで説明しても、おそらくDクラス帝国市民として生活していた少尉殿ではイメージの構築が困難であると判断しての具申です」

 

 つまり当たって砕けろの精神で初見のダンジョンに挑むしかないのね。ナビゲーターがいるだけDクラスの初出勤よりは安心できるだけマシかな。

 

 ……でもカネサダって確実に俺の監視とか命じられてるよねぇ?

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