メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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トランスファー:2

「コーヒーを嗜んだ経験は? ……それは結構。さすが乙型の中でも強力な個体を3人で撃退しただけのことはある。嗜好品を購入する程度に余裕はあったようだね

 残念ながら高級将校たちが日本円で購入しているようなブランド豆ではないが、これはこれで良い物だ。これでミルクと砂糖を好きなだけ使わせることができれば上官として格好もついたのだが」

 

 翌日のこと。

 

 皆が毛布やらちょっとしたお菓子などを差し入れとして持ってきてくれたお陰でそこそこ快適に過ごしていた独房から出された俺は、今後の処遇について面談をすると言われ中佐殿と同じテーブルでコーヒーを飲んでいる。

 D民からの成り上がりに軍隊言葉なんて期待していないからと、あまり言葉遣いを気にせず会話をしようと提案されたが……こうも友好的だと処遇とやらの内容が気になるところだな? 

 

 

「善き哉。疑ってはいないが信用もしていない、その用心深さはヨモツイクサとの戦いでは必須と言ってもいい。愚直な人間も嫌いではないがね。そうした人材を使いこなし生き残らせるのも我々の仕事だ。

 さて、コーヒーが冷める前に本題に入ろう。キミはこれからとある惑星に向かってもらう。表向きは懲罰としてだが、もちろん本命は別にある」

 

 はい。知ってた。

 

 しかし惑星ときたか。そこが新しい職場ということは、人間が活動するための条件も揃っているところなのだろうか? 

 

「もちろんだとも。残念ながら地表は現在の日本帝国の科学力を以てしても人類が生存できる環境ではないが、地下ではちゃんと帝国市民たちが生活しているよ。

 なにせ資源採掘を目的として開発され発展した惑星だからね。慣れるまでは頭の上にある岩石の天井が気になるかもしれないが」

 

 う、う~む……。メガテン世界で地下生活って、もうそれだけで不安しかないんですが。そうでなくともゲーム好きにとって地下都市ってのはロマンと同時に危険を感じちゃう舞台だし。

 地球を離れて宇宙にコロニー浮かべるだけの技術力があっても克服できないという地表の環境も気になるな。ヨモツイクサの勢力圏が広すぎるとか? いや、それなら最初からそう言えばいいだけだろう。

 

 

「キミの役目はふたつ。1つ目は現地のDクラス帝国市民の士気向上。これからキミには日本帝国軍特務少尉の地位が与えられる。

 名前が決められずにいることを利用させてもらうことにした。すまないがしばらくはまた管理番号で過ごしてくれたまえ」

 

 いつかきっと、という希望ではなく出世した実例を見せるワケか。戦うことそのものに疲れてしまった子たちにはどこまで効果があるか微妙なところだが、貢献義務に積極的な子たちのやる気はたしかに上がるかもしれん。

 

 ふむふむ? ヨモツイクサとの交戦時に限り中佐以下の軍人の命令に従うことなく自分の判断で戦ってよい、と。但しほかの軍人に命令する権限は無く、指示を出せる相手はDクラス帝国市民だけ。

 つまりトラブルが起きたときに誰かに責任を擦り付けるのが難しくなったということか。あんまり嬉しくない厚待遇だなぁ。

 

「そうそう、キミの昇進には態度に問題のあるCクラス戦闘員を炙り出すエサという役割も含めてある。是非とも大いに活躍し、無駄飯食らいどもの自尊心を踏み砕いてくれたまえ」

 

 トラブルが起きることが確定しちゃった☆ むしろ推奨されちゃってんじゃん! ほらぁ~やっぱりクッソ面倒なことになったじゃないか。いやD民に逆戻りよりはマシな扱いだけどさ。

 しかし、わざわざD民の成り上がりを少尉に任命して当て付けしなきゃならんほどCクラスには問題児が多いのかな? 昨日の連中みたいに上官の決定にニヤニヤしながら逆らうアホが。

 

 

「2つ目の任務についてだが……そちらは現地での生活に順応してから説明するとしよう。1度になんでもかんでも覚えようとしても大変だろう?」

 

 

 うわー中佐殿ってばとぉ~っても楽しそう♪ 有能なインテリの営業スマイルとか不安要素てんこ盛りですがな。これ任務が終わったあとに用済みズドンッ! の可能性にも備えないとマズくない? 

 

 そういう意味では単独行動が許されるのはありがたい措置だな。MAG結晶体を砕いて……いや、吸収効率を高めるために前みたいに食べたっていい。

 それに悪魔が封印されている結晶体を見つけたときに交渉するのも楽になる。結局ピクシーの姿はマモルたちには見えていないし、万が一戦闘になったときのことを考えれば俺ひとりのほうが被害は少ないだろう。

 

 

 問題は天使が出てきたときだが……う~ん、仲魔の天使と独立して行動する天使は別物だし……回復や補助が使える仲魔も欲しいからなぁ~。なんでもかんでもピクシーさんに任せるのも気が引ける。

 

(ケケケッ! オマエがもう少し力をつけたらオレ様も一緒に戦ってやるから安心しな。もちろん仲魔を増やすってのには反対しねぇがよ。

 ただ、いまのオマエの意識の海にストックできるのはあと2体が限界だな。それ以上はオマエのMAGが枯渇してオレ様まで消えちまうから断固拒否させてもらうぜ)

 

 ナイス情報! 大家に物件の問題点をしっかり報告してくれる店子の鑑だなウェンディゴくん。というか実体化はまだでもコミュニケーションできるぐらいには力を取り戻すことができたんだな。

 

 

 視点を変えよう。中佐殿がわざわざ権力を使って俺にレベルアップの機会をくれたと思えばそこまで悲観するような状況じゃない。

 コーヒーの味がわからなくなる程度には不安要素もあるけれど、生き残るために力が必要なのは揺るがぬ事実なのだ。せいぜい利用させていただきますよ、中佐殿? クックック……ッ!

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