メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
それじゃあマモル、それにアキラ。ちょっとヨウイチくんのこと気絶させるから押さえててくれる? この子基地に戻ったあと興奮で余計なことペラペラ喋って状況を悪化させそうだし。
「え、いや、その。いくらなんでも、それはさすがにちょっと……」
「大丈夫ですよリーダー。もしそうなりそうだなと判断したら俺が顎ブッ壊すぐらいのつもりで殴るんで」
「いやいやいやいやッ! そりゃあんまりッスよッ!」
まぁ気絶うんぬんは冗談としても、報告するにはかなり慎重に言葉を選ぶ必要があるのは確かでしょ?
そりゃヨウイチくんも仲間がふたりも残念なことになっちゃってるワケだからいろいろ言いたいこともあるだろうさ。
けど事実として俺たちも相手のCクラス戦闘員のひとりを殺している。そしてそのあとの戦闘についても証明する手段がない。あの天使がMAG結晶体とか落としてくれればよかったんだけど、塵になって消えちゃったからな~。
ともかく、証拠があってさえも自分が見ていないことは信じられないのが人間という生き物だ。
俺たちD民上がりがCクラスの人間と揉めて死人が出た、その事実だけで判断されると思ったほうがいい。
あと、天使関係っていうのも大問題なんだよね。具体的になにが問題なのかは俺の粗末な思考能力では整理することはできないが、口に出したらその日が俺の命日になるかもしれないってことぐらいはちゃ~んと理解してるもの。
ともかく。
基地に戻ったら俺が適当に報告まとめて対応するから、お前さんたちはなにがあっても喋るなよ? なにか質問されたときは、揉め事のあとに襲ってきたヨモツイクサとの戦闘で混乱していて覚えてないって言っておけばなんとかなるべ。
◇◆◇◆
「MAG結晶体の扱いについて口論になり、興奮したキミたちの仲間が彼らの部隊の人員を殺害。そしてその後、多数のヨモツイクサの襲撃に遭いそれを撃退。
さらに人員2名を損失する失態を犯しつつもなんとか帰還することができた、と。ふむ。概ね双方の報告に違いはないようだな」
いやぁ~強敵と戦ったあとだからか基地のお出迎えも豪華ですね! 見てごらん、Cクラス戦闘員の先輩たちもあんなに迷惑かけたのにとぉ~っても笑顔! お礼に奥歯へし折ってあげたい☆
いうて想定済みだけどな。さっきの至近距離のマハガルーラ直撃に比べたら、アサルトライフルの銃口に囲まれる程度じゃケツから邪龍が漏れ出そうぐらいの恐怖にしか感じないぜ。
「ところで……代表として、キミがこうして報告しているということは、この集団の指揮官はキミであると受け取ってもよいのかね? ──そうか、ならばよろしい。
直ちにF8492を拘束せよ。但し彼が抵抗しないのであれば手荒な真似は控えるように。彼もまた日本帝国が保有する財産であり、その命は帝国の平和と発展のために使われるものだからね」
「ハッ! F8492、貴様が望むのであれば軍人の権利としてサーベルの帯刀を許可するが……?」
あ、いえ。これヨモツイクサ切って汚れその他が付着したままなんで。むしろいますぐ取り上げて洗浄していただいたほうがよろしいかと。衛生的な意味で。
「ふむ、素直なのはいいことだ。これならば手枷も必要なかろう。あぁそうそう。キミにも、そしてキミのお友だちにも余計な心労を与える意味がないので先に断っておくが、今回のことでF8492が処刑されるようなことはないので安心したまえ」
……どういうことだ? この命が安い階級社会で、下の人間が上の人間を殺してしまったのに、わざわざ俺たちにそんな配慮をして見せるなんて。
俺が考えているよりも帝国軍の規律は融通が利くのか? いや、それはないな。俺の処罰を軽くすることにメリットがあると判断し、これから無茶な任務を押し付けられると考えたほうが自然だろう。
「お言葉ですが中佐殿ッ! 仲間を殺して平然としているようなクズに更生の余地などありませんッ! 2度とこのような悲しい事件が起きないよう、すぐにでも処刑するべきですッ!」
「そうですッ! ここで甘い顔をすれば、次も許されるだろうと考え同じことを繰り返すに決まっていますッ! ここは新たな犠牲者を産み出してしまわないよう、厳罰に処すのがよろしいかとッ!」
お前らさぁ、そこはせめてもうちょっと真剣な表情しとけよ。ニヤニヤ笑ったまんま言っても説得力ねぇだろ。
「諸君らの意見も理解できる。しかしだね、こういうトラブルについて判断するのは私の仕事なのだよ。伊達や酔狂で中佐をしているワケではないのだ、まぁここは任せたまえよ」
やんわりと先輩軍人たちを窘める中佐殿。よく見たらこの人アレじゃん。ブタ玉野郎改め乙型ヨモツイクサとの戦いのあとに俺とマモルとホノカを回収しにきた人じゃん。
それにしても先輩方の意見具申が止まらんねぇ。どうやら、なにがなんでも俺を処刑したいらしいな? 仲間の無念を晴らす、な~んて雰囲気じゃないのは一目瞭然。単純に下っぱが苦しむ姿を見て楽しみたいってだけか。
「うむ。キミたちの心意気は理解した。ならば私もその気持ちに応えてやることにしよう。──おいッ! このバカどもを拘束して懲罰房に転がしておけッ!」
「へへッ! 残念だったなゴミ虫が──は?」
「中佐殿ッ!? これはどういうおつもりですかッ!」
「自分たちがいったいなにをッ!?」
「わからんかね? ならば教えてやろう。この件については私が判断すると言ったはずだ。そして私はその決定をこの場にいる全員に周知した。
わかるかね? 帝国軍中佐としての正式な決定であり命令なのだよ。それに対して尉官すら持たぬキミたちに口を挟む権利など無いと……知らなかったのかね?」
「あ……いえ……その……ッ!」
「軍事行動の柔軟性が損なわれるのは好みではないのでね、普段私はあまりそういう部分に拘らないことにしているのだが……本人が望むのであれば仕方ない。
喜びたまえ。キミたちの軍人として模範たらんとするその心意気を私は尊重しよう。なに、心配することはないよ。ちょっと数年ほどDクラス帝国市民と同じ待遇で肩を並べてヨモツイクサと戦ってもらうだけのことだ」
つまり事実上のCクラス市民権の剥奪か。案外この手の嫌なヤツほど生き延びたりするもんだけど、ピクシーさんの判定によるとコイツらのMAG保有量はそうとう少ないみたいだしなぁ。
手遅れになる前に力に目覚めるといいね! いまだに聞くタイミングがなくて、経口摂取以外でどうやって魔法を使えるようになったのか俺は知らんからアドバイスはしてやれないな~残念だなぁ~ッ!
「さて……これからF8492は独房に連れていかれるワケだが、部屋に到着するまでならば差し入れも見逃すとしようか。
ちなみに私のオススメは毛布だよ。独房のベッドは寝心地があまりよろしくないからね」
読者様の中でお時間に余裕のある方がいらっしゃいましたら、本文中の『天皇』を『皇帝』に修正する作業を手伝っていただけますと助かります。