広島ゆかりのシンガー・ソングライターである村下孝蔵さんの代表曲に「初恋」がある。好きな子を遠くから見つめる少年の繊細な心を歌う。少年少女を描いた曲はほかにも。「16才」という歌は孤独で時に荒ぶる、多感な内面に寄り添う▲心揺れた10代の記憶は多くの人にあるはず。自分は何者か、どう生きたらいいのか不安だったり、他人とは違う自分を見せて認められたかったり。少年も似た思いに駆られたのだろうか▲遠いミャンマーで日本の高校生2人が保護された。特殊詐欺に加担させられていたらしい。愛知県の16歳は「インターネットを通じて、海外での仕事を紹介されて渡航した」。警察官をかたり、詐欺の電話をかけていた▲報酬はあったが、ノルマを達成しないとスタンガンを当てられたとも。少年を人身売買被害者とタイ当局はみる。しかし闇バイトと疑わなかったのか、親には黙っていたのか。16歳の冒険と大目に見ることはできない▲少年の不可解な行動を目にし、大人の大きな愛が必要―。村下さんはそう思い「16才」を作ったそうだ。若い心を歌い、「急げ 十六の夜をいけ」と背も押す。私たちがすべきことのヒントがあるかもしれない。