さくらさくら、故郷(ふるさと)、荒城の月…。有名な唱歌が並ぶ。広島市安芸区出身で現代音楽の作曲家、細川俊夫さんが昨秋出したギター作品のアルバムだ。原曲の魅力を十分に残しつつ、1音ずつ慈しむような調べが心地いい▲このほど細川さんがスペインの世界的な賞に輝いた。日本の伝統音楽と現代西洋の美学の架け橋を築いた、との評価だ。4歳でピアノを始め、広島大付属東雲中から東京の音楽学校に。ドイツ留学後は東奔西走が続く▲栄誉ある賞をいくつも受けてきた今もなお、心の軸は広島にある。その音楽の源流をたどれば少年時代に行き着く。木や鳥、虫に囲まれ、何げなく聞いていた自然の音に深い影響を受けたに違いない▲広島に拠点を持ちながら東京や世界を駆け巡り、身に付けたという視点も興味深い。「日本を外から見ると同時に、東京中心の日本文化もまた、外から見られるようになった」。自伝的な対談集の中でそう語っている▲広島を離れる若者の多さから、引き留め策が議論されている。とはいえ、志を持って出ていく若者は誇りに思いたい。世界に羽ばたこうとする人の背中を押す。そんな地であることは、若者を集める力にもなるはずだ。