
想像以上の気温の上がり方だった……
林:
今年が、平年より平均気温が2.3℃高かったというニュースで、あのグラフを見ると……あのコロナが爆発した時みたい感じになってるじゃないですか。来年もこのペースで平均気温が上がるのかなって思うと……。

増田:
どうでしょうね。去年、一昨年までのところで、これは2025年がカギを握るのかなあと思っていて……過去のグラフを見ていてもこのぴょこっと突き出すタイミングはあったので、もしかしたら戻るのかな……というふうにも思っていましたが、2025年の夏はそんなの全部すっ飛ばしてポーンと上がって、今までのどの上がり方よりも上ですよね。

林:
この、天気の話をすると、脅かしてPV集めるみたいな感じにならないように心がけてはいるんですが、この気温をみると、びっくりしますね。
増田:
ここまで来るとそうですよね。今まで「いや、高温ってなんだかんだ言っても」なんて思ってた方々も、このグラフをみたら水戸黄門の印籠を見たときみたいに「ヘヘーッ」って、なっちゃうんじゃないかと。

林:
この連載は、明日雨だとか晴れだとか、そういう直近の話じゃなくて、長期的に見ればそんなに一喜一憂するものでもないんだというのが根っこにあったんですが、長期的に見ても……長期的に見てるからこそ……なんか、困ったな(笑)
増田:
今年の気温の上がり方は本当に飛び抜けてますからね。ただ、東京の最高気温は38.5℃です。これが、40℃になったらどうしようと思われる方、多いと思うんですが、大丈夫です。群馬県の伊勢崎をはじめ、そういうところの皆さん40℃でも生活してらっしゃいます。そう悲観的にならずに。
林:
別に群馬で山火事がガンガン発生してるとか、暑さでモバイルバッテリーが次々爆発したりとかしてるわけじゃないですからね。
増田:
こんなこと言うと「危機感がない」と怒られちゃいますけれども。
そういう話でなく、これから気温が上昇して暑くなることはわかっているわけですから、じゃあその先をみんなで考えて、先進地域(すでに暑い地域)の方々の生活も見習って、わたしたちも対応・対策して慣れていくというのも大切ってことですね。
林:
最高気温ランキングも気づけば今年ばっかりですもんね。
西村:
20位までに限ると、30℃台がもう無いんですね。
増田:
(1933年の記録の)山形がなんとか踏みとどまってますが……来年ぐらいで消えちゃうかもしれないですね。
西村:
山形は今後40.8℃以上の記録が6箇所ほどでると(トップ20からは)消えちゃうということですね。
増田:
74年間、日本の最高気温の座を守り続けてたんですよね。
林:
74年前の山形は異常値というか、たまたまちょっと出ちゃって、それからはあまり出なかったんですよね。
増田:
そうですね、この山形の40.8℃の時は、台風が日本海にあって南の暑い空気を引き込んでフェーン現象が起こってこの気温になった。

林:
この天気がもし今来たら……。
増田:
まあ、あり得ますね。今これだけベースの気温が上がってますから。
西村:
今(2025/9/3)台風が来てますが……。
増田:
南海上を進んでますが、もしこれが一気にグーッと北上したら……。
林:
鬼に金棒ってことですね。
増田:
気温のランキングは今年みたいに記録が一気に塗り替えられるような年が、今後は度々出ると思います。
林:
これがまあ、次は2029年ぐらいにくればいいんだろうけど……来年だったらやだな(笑)
西村:
全体的に少しづつ上がって来てはいるんだけど、この、なんだろう? 細かな上がり下がりで今年はたまたまグッと上がったので、来年はちょっとは落ち着くんじゃないか。という見方もできますかね。
増田:
そうですね。でもね、去年もそう思ったんですよねー(笑)そう思ってたらポーンで跳ねたから。どこかで必ず下がるタイミングは来ると思うんですけど、でもそれも結局またどっかでポーンと上がる、上がり基調になっている感じですね。
アクシデントで気温が一時的に下がる可能性は無きにしもあらず
林:
公害って、公害対策をしていたら、30年とか40年で東京の空気は変わったじゃないですか? 温暖化対策ってそんな20年、30年の短期間で効果はでるんでしょうか?
増田:
世界規模のスケールになると、さすがにすぐには。
林:
100年単位ぐらいで下がっていくのかな。
増田:
ただ、それこそなにか大きな要因、アクシデント的なものが起こる、例えば大規模な噴火があって、火山灰が広範囲に広がるとか、1991年にフィリピンのピナツボ火山が噴火したときは、火山灰の影響で気温が少し下がりましたから。そういう可能性も、無くはない。
林:
火山の噴火に期待? いや、期待しちゃだめですけど、そうか、噴煙で日光が遮られて気温は少し下がるのか。
増田:
天気だけで考えると、気温はどんどん上がっていってしまうわけですけど、そういったアクシデントで下がるというのはあるかも知れませんね。

今年の梅雨を総括。結局、増田さんの言った通りになった
林:
梅雨の話です。気象庁の梅雨の確定値が出ましたが、関東の梅雨は5月22日から6月28日ごろということになりました。東京の降水量のグラフに書いてみたんですが……。

(速報値:6月10日頃~7月18日頃・確定値:5月22日頃~6月28日頃)
林:
これは速報値で出しそこねた……って感じですかね。
増田:
気象庁はなぜこんなに(梅雨明けを)待っていたのか……というのはありますね。
林:
でも、わかりますよ、こういうことってありますよね「あー、乗りそこねた!」っていう、「どうしよう、今更言えない!」みたいな(笑)すごくみんな身に覚えのある感じじゃないですか?
西村:
わかる……(笑)
林:
増田さんは3ヶ月前のこの連載で、もう5月の下旬から梅雨って言っちゃっていいじゃないですかと。で、梅雨明けは発表するなら6月の18日ぐらいじゃないかと。でも、それは気象庁は難しいだろうって、おおよそその見立ての通りになりました。結局、気象庁は速報値ではここの雨(7月10〜17日頃の雨)まで入れてたわけですね。

増田:
気象庁は6月下旬の雨(25〜27日頃の雨)は梅雨の確定値に入れましたけど、たった3日だけですよ。この3日の雨は梅雨と言っていいのかどうかっていうところはありますよ。
西村:
この感じならただ、2、3日天気がぐずついただけっていう見方もできますもんね。
増田:
ただ、いろんな推測をすると……このデータだけ見れば、梅雨明けはここ(6月半ば)だと思うんですよね。でもやっぱりね、7月半ばまで梅雨明けを引っ張ったのは、そんな早い梅雨明けの前例がないっていうのが大きかったんじゃないかなと思うんです。
林:
なるほど。
増田:
6月末の梅雨明けというのは一応あるので、まあ6月末ならなんとか許せるんだけど、6月中旬の梅雨明けはそんな早いの今までなかったから……でも、6月末という早い梅雨明けの例がこれで増えましたから、じゃあ次、このへん(6月中旬)でどうかな? ってなった時に行けると思います。
林:
それって、さっきの気候の変化の話でもそうですけど、前例主義とかそういう話じゃなくて、科学者としてそんなに急に変えちゃうとその後の整合性がとれないからっていうことかもしれないですね。
増田:
そういうのもあると思います。やっぱり季節現象で、本当にまあ、この辺かな? というふうにやっているので、そうすると、変化も少しずつという感じにしないといけないというのはあるでしょうね。
林:
等圧線を急にグニャッと書いちゃだめなのと同じで。
増田:
そうそうそう、滑らかに滑らかになるように。天気はそうかも知れないですね。梅雨に関しては、これはもう、今後こういう梅雨ってあり得ると思いますね。前にもお話しましたけど、夏が前と後ろに延びているんだから、当然梅雨だって前倒しになって、5月の梅雨入りっていうのもあると思うし、で、6月ごろまでが梅雨として、その後はまあ、いわゆる戻り梅雨という扱いにすればいいですし、別の言い方でしたら、梅雨シーズン2、シーズン3でもいい。
林:
こうやって、データを眺めて見てみると、なんかむしろ、気象庁の人の苦労が、手に取るようにわかりますね。……なんか「乗り遅れて撤退しにくい」って、仕事とかでもあるじゃないですか、会社でも今更TikTokやるんですか? でも始めたからには3ヶ月はやるぞ! みたいな。そういうことですよね。
西村:
株価が上がってる時に……あぁ、今買っても遅いんだ、みたいな。
増田:
最初の気候の話なんか、経済指標みてるみたいですもんね(笑)
