仕事における "根回し" がなんとなく苦手という人をちょいちょい見る。
なんだかフロー化されていない属人的で儀式的なやりとりみたいな感覚を持ってしまう人もいるかもしれないが、根回しはただ物事を円滑に進めるために必要な報連相を事前にやるというだけである。
根回しという言葉はもともと園芸用語で、樹木の移植にあたって事前に根の一部を処理して新しい根の発生を促す作業のことを指す。いいも悪いもない。
要はただの進め方のひとつで、ポイントを押さえれば誰でもできるしできるようになっておいたほうがいい。入門として押さえるポイントを雑に書き出してみる。
1. 話す人を決める
- まず事前に話をしておいた方がいい人を組織の力学を理解して見極める必要がある
- 意思決定者などキーマンが明確ならその人と話しておくとよい
- 組織によっては、もしかしたらメンツを立てるために話を通すみたいな力学もあるかもしれない
- 誰と話せばいいかわからなければ、上長に相談すればたぶん教えてくれる
- 「この人はなんか意見いいそうだなあ」と想起する人がいれば、その人は話しておくこと
2. 相談の予定を入れる
- 事前に相談したいという連絡をした上で、予定をおさえておく
- いきなり予定を入れまくるのはよくないという意見もあると思うが、なんだかんだ1人30分くらいずつ直接話すのが早い
- 先に予定を入れることで強制的に準備が進み、直前に中途半端に相談して結局当日にも色々突っ込まれるといった事態を防げる
3. フィードバックをもらう準備をする
- 当日に聞いたら突っ込みそうなことや気になることをヒアリングするイメージ
- どういう観点でその人の意見がほしいかを明確にしておくとさらによい
- ドキュメントを用意して、当日もらったフィードバックもそこに書くようにする。できれば事前にドキュメントを共有しておくとよい
4. フィードバックをもらう
- 方向性や考える順番といった次元ですりあっているかを確認するのは必須
- このタイミングではボコボコにされてもいい。そのための根回しだし、話しておくだけでも当日のサプライズはなくなるのでそれだけでもかなり前進したと思えばよい
- 具体的な進め方は うまくフィードバックをもらうためのTips が参考になるかもしれない
- 指摘ポイントを明確にして、必要なら2回くらい話しておくといいかも。3回以上必要になった場合には、進め方を見直した方がいいと思う
5. 当日に事前相談したことを話す
- 「事前に皆さんに少し相談していただいた意見を取り入れてきています」という話を最初にすると、「今はそういう状態のものを持ってきているのね」という認識が揃って前に進めやすくなる
- めちゃくちゃ細かいTipsだが、キーマンと概ね合意できているなら「◯◯さんとは事前のすり合わせで大枠の認識が揃っていて」のような感じで名前を出すとさらに話が早く進むこともある
ざっと思いつくのはこのくらい。営業職の方はもっとずっとハイレベルなことを当たり前のようにやっていると思う。
一番大事なのは、当日をできるだけリアルに想像してみること。「この人がこのへん突っ込んでこんな感じの空気になりそうだな」とか「この人が同意してくれてたらもうそのまま決まるよな」とか。
人ではなくてチームでも同じ。「リーガルチームの立場だったらどこが気になるのかな」とか「CSチームだったらこういうところ気にしそうだけどこれで足りてるかな」とか。
結局は想像力がすべて。根回しをしてできるだけ事前に懸念を潰しておけばいい。
それでも当日は思ってもない方向に議論が進んでしまったりもする。それはもう仕方ない。だいぶ疲れるだろうけれど、根回しが無駄になったわけではない。
「このチームはそういう考え方をするのか」とか、「この人はそういう角度から意見をするのか」といった感じで脳内シミュレーションをアップデートしていくと、少しずつ精度が上がってくる。それでいい。
続けていくうちに、物事をスムーズに前に進めるために必要なことをやるかくらいの感覚になって、"根回し" という言葉すらあまり使わなくなってくると思う。