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特集 :処方箋の裏側2015
ジクアスをムコスタに切り替えたわけ
日経DI2015年6月号

2015/06/10

いしおか・みさき氏◆1989年横浜市立大学医学部卒業。同大学病院、米国ハーバード大学、東京歯科大学市川総合病院などを経て、2008年開業。11年9月号で、涙が多く出て困る患者にドライアイ薬を使う理由を紹介。

「眼が乾くというよりは、ゴロゴロして、ゴミがいつも入っているような感じで痛いんです」。和泉ひかるさん(仮名、34歳)はこう訴えて、当院を受診した。和泉さんは、ドライアイが悪化して糸状角膜炎を起こしていた。

 糸状角膜炎は、角膜上皮の新陳代謝がうまくいかず、“垢”のようなものが糸状になって付着する病態。強い異物感と、まばたきをする際の痛みを訴える患者が多い。糸状物をピンセットで除去すると症状はなくなるが、すぐに再発する厄介な疾患だ。和泉さんは、前医でドライアイ治療薬のジクアス(一般名ジクアホソルナトリウム)とヒアレイン(ヒアルロン酸ナトリウム)を処方されていたが良くならず、たびたび糸状物の除去を受けていたようだ。

 私は和泉さんの処方を、同じドライアイ治療薬のムコスタ(レバミピド)に迷わず切り替えた。最近になって、この糸状角膜炎にムコスタが劇的に効くことが分かってきたからだ。なぜかジクアスは糸状角膜炎には効かないのだ。

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 添付文書によれば、ムコスタの作用部位は、角膜上皮細胞およびムチンを産生する結膜ゴブレット細胞であり、ムチン遺伝子の発現を亢進させると同時に、両細胞の数を増加させる。一方のジクアスの作用部位は、結膜上皮および結膜杯細胞膜上のP2Y2受容体で、細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させ、水分およびムチン分泌促進作用を示す。このような作用機序の違いなのか、防腐剤など異なる添加物が影響しているのか明確ではないが、ムコスタとジクアスは効き方に差があり、その使い分けがドライアイを専門とする眼科医の間で議論されている。

 私は、和泉さんのように異物感を訴えるドライアイにムコスタを、シェーグレン症候群など涙が非常に少ないタイプのドライアイにジクアスを使うことが多い。ジクアスには、ムチンだけでなく水分も増やす作用があるためだ。

 副作用もそれぞれ特徴的だ。ジクアスは眼脂、充血を生じやすい。充血は点眼を続けると慣れて症状が治まることが多い。一方のムコスタは、点眼後に口の中に生じる苦みや、眼周囲に成分が付着して白くなるのを嫌がる患者が少なくない。ムコスタで効果が得られても白濁を嫌がる患者には、例えば朝晩はムコスタを、日中はジクアスを点眼するというように、2剤を併用することもある。

 なお、ムコスタは、人工涙液のソフトサンティア(第3類医薬品)などホウ酸を含有する点眼薬と一緒に差すと粘性が高まるので、使用する際には時間を空けるようにアドバイスしたい。また、ムコスタが効かなかったという患者に聞くと、数日しか使っていないことが多い。効果を実感できるまでには一般に2週間以上、長い人は数カ月ほど掛かるので、服薬指導の際に伝えてほしい。(談)

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