現役時代に見てきた課題を“外側”から解決

フィギュアスケート選手として五輪などで活躍し、現在は研究者の道を歩んでいる町田 樹氏。現役時代の経験を生かし、競技の内外に存在する課題を学術的視点から解決しようとしている。今回は、スポーツの世界にもインパクトを与えている「AI」について、フィギュアスケート界での活用動向やその影響、秘めた可能性などを聞いた。

町田 樹氏
町田 樹氏
國學院大學人間開発学部 健康体育学科 准教授 1990年神奈川県生まれ。フィギュアスケート選手として2014年ソチ五輪で5位入賞。2014年に現役引退し、その後は博士号を取得し研究者の道を歩む。

町田先生は、フィギュアスケーターとして国内外の様々な大会で活躍されてきました。その経験は現在の研究にどのような影響を与えていますか。

町田 約25年にわたりフィギュアスケートにかかわってきましたが、その中で業界の“内側”にいるからこそ見える多くの問題を目の当たりにしてきました。

 例えば、地球温暖化の影響を受けてウィンタースポーツの環境はどんどん縮小していますが、スケートリンクも様々な理由で減少の一途を辿っています。また、女性アスリート特有の三主徴(エネルギー不足、無月経、骨粗鬆症)の問題も深刻です。このような問題は、業界の内側からの視点だけではなかなか解決できません。構造的、社会文化的な課題を俯瞰してとらえ、解決するため、引退後は“外側”であるアカデミアの世界に身を投じることにしたのです。

町田先生は、自らの研究領域を「汽水域(淡水と海水が混ざり合う領域)」と表現しています。その理由を教えてください。

町田 フィギュアスケートはスポーツと芸術の中間に位置する「アーティスティックスポーツ」ですが、様々な要素が混在しているために、時には「純粋なスポーツでも芸術でもない」といわれることがあります。私も現役時代はその両面性にコンプレックスを感じたことがありました。

 しかし、研究を進めるうちに、この特徴、いわば「汽水域の競技」であることがフィギュアスケートの魅力であり奥深さだと考えるようになりました。複数の要素でできたものを理解するには、スポーツ科学や芸術学などの多様な視点が必要です。そこで、学際的なアプローチに基づき、既存の方法に縛られない研究に取り組んでいます。

現在はAI/生成AIが世の中を騒がせています。スポーツの世界にも入り込みつつありますが、フィギュアスケート界の活用の現状を教えてください。

町田 この分野では、まだ競技にAIが取り入れられているわけではありませんが、採点の領域でAI活用の兆しが見えています。フィギュアスケートの採点は、大きく「技術点」と「芸術点」に分かれますが、中でも技術点の領域で徐々に取り組みが進んでいます。

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