名前のわからない男に判決、裁判官「初めてです」 缶ビール盗んだ罪

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根本快
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 「30年以上裁判官をやっていますが、名前が分からないまま判決を伝えるのは初めてです」

 缶ビール1本を万引きしたとして窃盗罪で起訴されたが、捜査段階から一貫して氏名や生年月日を答えない男の裁判の判決が10日、神戸地裁であった。大西直樹裁判官は罰金15万円の判決を言い渡し、男にそう語りかけた。

 この被告は誰で、判決後どう生きていくのか。誰にもわからないまま裁判は終わった。

 判決によると、男は6月、神戸市中央区のコンビニエンスストアで缶ビール1本(311円)を万引きした。所持金が底をつく中、ビールを盗もうと考えて入店し、バッグにビールを入れた。店を出た後、店長に取り押さえられた。

 8月の初公判。男はジャージーの上下で出廷した。男の髪は白髪交じりで首元まで伸びていた。中年より高齢に見えた。

野宿生活の前は「友達の家」 今後は「考えていない」

 名前を問われると、かすれ気味の声で「言いたくありません」。起訴内容は認めた。

 検察側は、男の指紋やDNA型と合致する情報はなかったと明らかにした。

 被告人質問によると、男は万引き前の約1カ月間、野宿生活をしており、逮捕時の所持金は81円だった。その前は「友達の家に2~3カ月いた」と述べたが、友達の名前は明かさず、さらにその前の生活は「言いたくない」と答えた。

 なぜ名前を言えないのか。弁護人も検察官も問いかけたが、男は「べつに」と答えるだけだった。

 弁護人「今後、どう生活していくつもりか」

 男「そこはちょっと考えていない」

 裁判官「家族や友人、頼れる人はいるか」

 男「特には、いてない」

 質問には淡々と答えた。語尾…

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この記事を書いた人
根本快
神戸総局|事件・司法担当
専門・関心分野
事件、政治資金
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    インベカヲリ★
    (写真家・ノンフィクションライター)
    2025年9月11日0時2分 投稿
    【視点】

    世の中には、他人からすれば取るに足らないことを頑なに秘密にする人もいるが、まさか逮捕されてもなお名前を明かさず、それがまかり通るとは驚きだ。 ホームレスで所持金が尽きていたというが、盗んだものは食料ではなくビールという嗜好品であり、そこに切

    …続きを読む