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伝道者の書7章

 高校を卒業して神学校に入ったばかり、ある老人と食事をした時のことだ。「今の時代は刹那的だ」という。「刹那的?」と切り返す私に「ほら」とその老人はテレビを指した。画面には、ビーチではしゃぎながら、ビールを飲み浮かれている水着姿の女性が映し出されていた。ビールのCMである。なるほど刹那的ね、と考えさせられた時だった。確かに、どうしたら「今・ここ」という瞬間を愉快に過ごせるか、そんなことばかり考えて生きている時代がある。若い時分には、誰にでも身に覚えのあることではないかと思う。
 しかし、いずれ人間は、そんな薄っぺらな人生を生きてきたことに、恥じ入る時が来たりする。人は、面白おかしく今だけを生きていくその結果を、やがて刈り取らなくてはならない。ある日突然惨事に打ちのめされて、自分の人生の脆さに思い知らされることがあったりする。真面目に生きるのが一番である。だから、悲しみや苦しみに目をつぶってはならないし、忠言や苦言に耳をふさいではならないのだろう。物事の不幸を避けて通っているようではいけない。宴会よりも葬式に列する方が得であるというのは、それだけ人生を深く、真面目に考えさせるからだろう。よりよい人生を生きようとしたら苦菜が必要である。適度に苦みがあればこそ、目を覚ました生き方もできる。名前負けする、ということがあるが、自分の名を汚すような底の浅い生き方はしないことである。
 次に人生は知恵を持って生きるべきものである。短気は損気と言われる。忍耐力をもって物事を慎重に考え抜く者が、人生をしっかり生きていくことができる。お金に惑わされてはいけない(8節)。過去に拘り過ぎてもいけない(10節)。人間の愚かさのパターンというのはある程度決まっているようなところがある。しかし誰もが同じような罠に引っかかってしまうのだから、敢えてこのような警告も必要なのだろう。人生を破綻させたくないのであれば、愚かだといわれることからは身を引く事も大切である。当たり前に言われていることを当たり前のように守っていく、それが知恵をもって生きると言うことであり、知恵をもって生きるというのは頭がよいということとは違うのである。
 さらに、無理してはいけない。自然の流れというものがある。高齢者の方々とつき合う機会が多くなり、学んだことが一つある。物事の成り行きを見守ることである。自分で竿を刺して、船首を動かしたいと思うような時には、ぐっと堪える。まず物事の流れを見ていく。石橋を叩いても渡らないと言われようが、物事の推移をある程度見守っていくことが肝要である。というのも、「遅すぎる」と思うのは人間の常であるが、物事のすべては、神の御手に動かされているのであって、人は神のなさることを見極めなくてはならない。自然界の道理に逆らってはいけない。そして順境の時には素直に楽しみ、逆境の時には、素直に我を顧みる。そして神が、最善をなしてくださることを信じ、神のみわざに目を留め、それに沿っていくのである。
 そういう意味では中庸という、イスラエルの知恵にも学ばなくてはならないのだろう(16節)。正しすぎてもだめ、悪すぎてもだめ。知恵がありすぎてもだめ。愚かすぎてもだめ。極端に走るのではなくて、中庸を選んでいく。あれもこれもはよくないと言われるのは日本の社会であるかもしれない。あれかこれかの世界である。しかし、あれもこれも目を留めつつ、神が与えられるものをしっかりつかみ取っていくという生き方もある。要するに慌てないことである。迷いに甘んじるというべきか。物事を単純にではなく、複雑に受け止めていくということではないか。21節。「人の語ることばにいちいち心を留めてはならない」確かにそうだ。人のことばに一々躓かないことだろう。人はよく考えもせずに物事を語っていることがある。そんなことばに一々躓くことも馬鹿馬鹿しいではないか。変なことを言っているなと聞き流す、それだけの器の広さと深さを持ち、本当に留めるべきことばを選んでいくことだ。スポルジョンは語っている。「人の舌を止めることはできない。だったら、自分の耳を閉じて、話されたことを気にしないことである」
 28節「見いだしたことは次のとおりである」伝道者は、中間的に結論を述べている。「神は人を正しい者に造られたが、人は多くの理屈を捜し求めた」(29節)。つまり、神は人が正しく生きる者として創造されたのであるが、人はその目的にかなわない者となった。人は神の目的を退け、自分が満足する目的を追い求めて、結果的に矮小な罪の世界に生きるようになったのである。
 今ここで少し立ち止まってみようではないか。刹那的に薄っぺらに生きていやしないか。近視眼的に、短気丸出しで両極端に生きていることはないか。神の知恵の深さに生きる事を考えてみよう。深く掘り下げて人生を生きる様に、自分の人生の方向転換をしてみようではないか。
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