俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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おまたせしました
今回はちょっと長いのと また頂いたFAの紹介です

呼び出したトークンの数でミスがあったので修正しました(9/6)



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真機楼様より羽島リナちゃんの私服です!
ありがとうございます!


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同じく教授です!
こわい!



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同じく真機楼よりMeeKingの和やかなイラストです
多分ここからミラーブレイバーデッキでユウキちゃんの目が死にます



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朽木様より、羽島リナ先輩のFAです!
守りたいこの笑顔・・・



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ちゃもなか様よりたくさんのFAを頂きました!
フツオ・ユウキ・そして教授戦のハイライト!
特に教授戦、かっこいいです!



三十一話 生贄に捧げるとは、場に出ているカードを墓地に送ることである

 

 

 

「モブに勝ちたいって、この間勝ってなかった?」

 

 

 

 ユウキちゃんが吠えているところで、そんな言葉を投げかけたのは新しく入ったバイトの子。

 

「2回だけ、だけど」

 

 サレン=アンダーちゃん。

 新しく私たちのMeeKingに加わったバイトだ。

 

 一月前、店の修理をしているところにやってきたまだ女子高生の女の子。

 彼女の経歴をボクは聞いている。

 

 傭兵ファイターをやっているということ。

 ある悪の精霊、それと契約しているだろう闇のカード使いを探しているということ。

 あの時、ボクと戦った教授(プロフェッサー)……とは別の闇のカード使いが、サレンちゃんの探しているカード使いの手がかり、おそらく関係者の可能性があるということ。

 そして、また襲われるかもしれないボクの護衛という形でここにいたいという旨を全て教えてもらった。

 その上で茂札くんとも相談してサレンちゃんを雇った。

 

 それに茂札くんがいない日の穴埋めとして必ずシフトに入ってくれてるから助かっている。

 

「私は10回やって10回勝ちたいの! 10回やってたった2回、それも凄い調子がよかったのとモブさんが引き悪かった紛れ勝ちだけじゃん!」

 

≪そうよ、そうよ! 目指すは完全勝利なのだわ!≫

 

「ミラー勝率2割前後がなにか喋ってる」

 

「うきー! サレンさんだって負けるじゃん!」

 

「私はミラーでも勝率6割だけど」

 

≪むきー!≫

 

 一月前のメガバベルの事件で、知り合ったらしいユウキちゃんとサレンちゃんはとても仲良しだ。

 まだファイターとしての腕には差があるけれど、なんていうか、こう、少し歳の離れた姉妹でライバルみたいな関係性を感じる。

 

「モブに勝ちたいだけならメタデッキでも組めばいい。ちゃんと出来ていればあいつには八割ぐらいは勝てる」

 

「サレンさんみたいにコロコロデッキ変えても平気じゃないんですけど」

 

「共鳴が低くても、多少不格好な手札スタートぐらいだから慣れたらリカバリー力を磨ける」

 

「うぅ、理屈はわかるけどなんか納得が出来ないよぉ……」

 

「ボコボコにされるということはそれだけ課題があるということだから」

 

「くっそー!」

 

≪ファイトよ、ユウキ! もうぼこぼこにしてやりましょう!≫

 

「私は今仕事中。ファイトなら休日にしてほしい」

 

「サレンさんだって学校いってないの?!」

 

「色々と大事な事情で休学中だから問題なし」

 

≪うきー!≫

 

 うーん、仲良し。

 ユウキちゃんのデッキに宿ってる精霊のアリーシャちゃんともすっかり普通に喋ってるし。

 でもサレンちゃん、精霊は一般人には見えないからほどほどにね? 我王くんあたり、なんか見えてそうな気がするけど。

 

「サレンちゃん。バイトに出てくれるのは嬉しいけど、学校はいける時はいったほうがいいよ」

 

 彼女が通っている高校は中高一緒のお嬢様学校で、昔ボクも通ってた学校らしい。

 あそこの仕組みとして中学校はかなり休んでいても、高校まではエスカレーター式で上がれた。

 でもさすがに二年~三年と昇級に、卒業まで考えるといずれ学校には出たほうがいい。

 

「……考えておく」

 

 まあ事情が事情だからしょうがないけど。

 最悪、彼女の腕ならプロのファイタールートに進むという手もあるし。

 

 あまり使いたくないけど、ボクから連絡すればスムーズにそういうルートに進める。

 方舟教会(アーク)のグランマたちには心配をかけたからずっと連絡を絶ってたけど、いざとなればそっちにも事情を話せばわかってくれるだろう。

 

「……ふふ」

 

 不思議だな。

 色々と先の事を考えている。

 ずっと止まっていたボクの時間が、この一月で目まぐるしく動いてる。

 

 サレンちゃんが店で働き出してからだろうか。

 ユウキちゃんが店に来てからだろうか。

 いや、もっと前から。

 

 茂札くんが店にやってきてから少しずつ動き出していた気がするなぁ。

 

 早く明日にならないかな。

 そしたらまた彼が来る。

 

「ふふっ」

 

 気分が弾む。

 明日を前向きに感じられる。

 

 ああ、この気持ちが、”彼女(・ ・)”に伝わればいいのに。

 

 今も金庫の中で眠っている彼女を思う。

 あの時から。

 あの()()()()()()に襲われて、いや、ボクのせいで負けてから彼女の時間は止まっている。

 ボクの時間も止まっていた。

 いるべきだと思っていたのに、こんな楽しくて、夢を見るのは許されるのだろうか。

 

 罪悪感がある。

 いいのかと思う気持ちもあるけれど……

 

「言うわけないか」

 

 ボクが知る彼女が、そういう楽しみをしていたら怒るなんてことはない。

 そんなことを思い出す。

 思い出せるようになった。

 少しずつ考えないようにしていた昔を思い出せるようになった。

 

 これはきっと進歩で、嬉しいことだ。

 

「はいはい、サレンちゃんもユウキちゃんもそこまで。まだ仕事中だからね、戯れるなら休憩中にやりなよー」

 

 思い出に浸るのを切り上げて、仲良く喧嘩する二人に手を叩いて仲裁する。

 

「店長に言われたくない、仕事しろ」

 

「セト店長こそ、大体モブさんに丸投げしてるのにー」

 

「うぐっ」

 

 と思ったら思わぬ反撃を受けてうめいてしまった。

 

「店長はもうちょっとキビキビ動くべき、私のように」

 

「そうだよ。サレンさんぐらい軽く身軽になるべきだよ」

 

「ユウキ?」

 

「うぅ、若人がいじめる……助けてフツオくん」

 

 しくしくしく。

 

「モブが卒業して辞めたらどうするつもりなんだろう」

 

「フツオくんはずっと働いてくれるもん」

 

 だよね?

 いやなんか卒業したらちゃんとしたところで就職するとかいってたけど、給料上げたり、正社員制度作れば残ってくれるはず。

 はず。

 はず!

 

 うん!!

 

 

 

 

「モブさん、違うお店で大会かー。楽しいのかなぁ、部活とかやってないのかな?」

 

「野良大会は楽しい。大体年上ばかりだから最初は緊張するけど、色々なデッキと戦える。大体荒削りだけど、その分色んな手口が見れる。楽しく賞金もゲット出来る」

 

「それ勝てる前提だよね?」

 

「負けるために挑むやつはいない」

 

≪キリってした!≫

 

「かっこいいことを言っているけど、勝てる人が言っている前提だと思うとなんかやだなぁ」

 

「あとモブには多分部活は向いてない」

 

「? なんでです」

 

 

 

 

「あいつはちょっと()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 うちの目の前に地獄が広がっていた。

 いや、地獄か?

 

「なんやこれ」

 

 <ブレイバー・影刃>(0/1)が2体。

 <ブレイバー・焼刃>(0/1)が1体。

 <爆産ゴブリン>(1/2)が1体。

 そして、分身トークン(1/1)が8体と残っていた1体で合計9体。

 

 つまり全部で2の1の1と9で、”13”体のクリーチャーが目の前を並んでいた。

 これがたった1枚のカードで、たった1体のゴブリントークン(1/1)の生贄から飛び出た光景だった。

 死亡宣告(13)かぁ??

 

「コスト4<花葬輪廻>はゴブリンを生贄に発動。墓地から生贄になったゴブリンのパワー以下になるようにクリーチャーを好きな数だけ選択し、場に出します」

 

「……パワー以下って、明らかに4体ぐらい1枚で出てるんやけど」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 微笑んでる。

 丁寧に微笑んでいる。

 愉悦とかじゃない優しい顔だった。

 こうしてみるとわりと整ってんなぁ、とか思ってる場合やない。

 

「そうか、だからパワーが0のクリーチャーとかが多かったんやね」

 

 上を見る。

 天井を見る。

 建てられたばかりの真新しい天井が見えた。

 

「<名義貸し>の効果、全てのクリーチャーは分身トークンを参考に【ブレイバー】を得ているため、場に出た時に分身トークンを生み出します。トークンの生成はそのクリーチャーが場に出るという意味です」

 

「うん、うん、常在効果ってことやな」

 

「はい。それで焼刃の効果が共有されます。()()()()()()()()()()/+()()()()()()()()

 

「わあ、パワーが13のクリーチャーが3体に、パワーが14のクリーチャーが10体並んだで」

 

 つまり13*3(39)の、14*10(140)で、全部受けたら179点かー。

 うんうん。

 

「どう足掻いても死ぬわ」

 

 9回死んでも余るわ。

 

「戦闘します。召喚酔いをしていない分身トークンで殴ります」

 

「<喪失黒竜グランレイド・ドラゴン・オニキス>でブロックするで」

 

 何度も進化をして辿り着いた最終形態手前。

 攻撃をしてもステイにならず、さらに相手から受ける能力の対象にならない。

 その上で勝利すれば、【進化】のためのコストを減らす自分の分体(オニキス・ドラゴン・トークン)を生み出すグロウ・アップ・ドラゴンの強力なクリーチャー。

 

 それが、強化された影刃の分身トークンによって両断される。

 

 うん――14/14のクリーチャーに勝てるわけもないので。

 

「うちのドラゴンが死んだのでカードを1枚ドローするで」

 

 茂札が置いた<繁殖の力>の効果はこっちにも理がある。

 それはクリーチャーが死亡する度に、そのコントローラーはカードを引いても()()という効果。

 

「どうぞ」

 

 引いた。

 うん、全体除去じゃない。

 

「ではターンエンドです」

 

「うちのターン、レディ、アップキープ、ドロー」

 

 ここから勝つにはどうすればいいか。

 息を吸う。

 神経を集中させる。

 

 ――全体除去を引くしかない。

 

 それで盤面をリセットする。

 単体のクリーチャーパワーはもうこっちのほうが圧倒的に上なんや。

 引き勝負で殴っていけば捲り返せる目があるし、なんだったら。

 

 

「ところで茂札はん、君今デッキ枚数残り何枚や?」

 

 

 上手く行けばデッキを引き切らせる事が出来る。

 かなりデッキを消耗したはずや、上手く15枚引き切らせればそれで――

 

「大体20前後ぐらいですね」

 

「そっかぁ」

 

「あと<繁殖の力>は引いてもよい、なのでドローの強制力はないです」

 

「そっかぁ」

 

 望みが絶たれた!!!

 

 まて。

 いやまてや、まだ希望はある。

 うちだってエレウシスの、全国の猛者たちとの戦いで身につけた力が。

 

 あの京都校共(アホども)を相手に掴んだ力が。

 

「ふぅうううう」

 

 息を吸う。

 息を吐く。

 集中する。

 デッキの息吹を感じる、普段感じる風……【熱の籠もった風】に意識を向ける。

 うちの感覚。相手の危険札を感じる、ギミックを感じ取れる感覚。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()見逃してもうたが、これはその応用。

 

「いくで」

 

 デッキに熱が宿る。

 風が渦巻いた気がした。

 

 それの名前は子供でも知っている。

 

 そして、うちらは――全国に出るまでただの都市伝説だと思っていた力。

 

「どろぉおおおおおお!」

 

 共鳴ドロー

 

 デッキの可能性を引き出すファイターとしての力。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()辿()()()()()()()()

 

 ――引き当てたのは。

 

 

 

 

 <光臨真竜 グランレイド・ドラゴン・ネクサス>

 

 

 

 

 それはうちの最強のエースにして切り札。

 出るだけで勝利を確実にするもの。

 

「うん」

 

 つまり。

 

「……ターンエンドや」

 

 全体除去は引けなかった!

 というかデッキ内の全体除去もう使い切ってた!!

 幾らドローしても、デッキにないものはない!!!

 

 これを出したところで普通に殴り倒されてそのまま死ぬわ!

 

「……事故った?」

 

「ふ。勝てない手札やったが、サレンダーはせん!」

 

「わかりました。えーとバトルです、<爆産ゴブリン>から攻撃」

 

 死んだらゴブリントークン出す奴やな。

 

 どたどたと走ってくるパワー14のゴブリンと呼びたくないクリーチャーに、うちは。

 

「さあひと思いにやれ! グアー!!」

 

「リナぁあああああああ!!」

 

 思いっきり吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 ●

 

 

 ●

 

 

 

 ●

 

 

 

 

 

「いやー死んだ死んだ。完敗やで」

 

 まあ所詮ボードでの立体映像やけどな。

 ちょっと衝撃っぽいのが出てびっくりするけど、怪我なんてするわけもない。

 

「いい悲鳴だったね」

 

「映像だってわかっていても口から出るわ、あんなん」

 

 ジグにからかわれるが、しょうがない。

 なんだかんだでクリーチャは怖いのだ。

 

 ド派手なバーンや、全体除去の魔法など目がチカチカするし、フィールドの出力や設定次第では臨場感が増す。

 エレウシスの決勝なんて最上級の、プロ仕様(レベル)のバトルフィールドだったからめちゃくちゃど派手やったわ。

 緊張もあってほとんどうろ覚え、夢みたいなものやったけど。

 うん楽しかったことだけはしっかり憶えとる。

 

 

「グッドゲーム。誉れ高い気持ちになれました、ありがとうございます」

 

 

 そんな事を考えている時、ボードからデッキを引き抜きながらこちらを破ってくれはった奴が来た。

 

「煽りかいな? いい趣味してはりますな」

 

 こっちは仮にも全国大会優勝したチームやったというのにまさかの完敗。

 外で見られる形だったらいい赤っ恥や。

 

「ドラゴン倒せるのは嬉しいですよ。あとこっちも、綱渡りでしたよ。僕の引きが(上振れしてたんで)

 

「上振れ……?」

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

「まあええわ、お世辞ならいらんで」

 

「本当なんだけどなぁ」

 

 ポリポリと頬をかきながら困ったような顔を浮かべる茂札。

 

「まあいいや。それより羽島さん」

 

「うん?」

 

 

 

このデッキのマスカンは【名義貸し】です

 

 

 ん?

 

「なに?」

 

「二枚いれてるし、それ以外でも戦えるようになってますけどやっぱり破壊されると展開もパワーも激落ちするんで破壊したほうがいいですよ」

 

「はぁ?」

 

「あとそうですね。やっぱり軽くても全体除去、灼熱龍士でも確か1点か2点ぐらいの全体撒き散らしがあったと思うんでそれもいれて。グロアもレイド以外の亜種、先制攻撃もちのタイプをいれておくとタフネス削った奴を一方的に削りやすくなるんで結構おすすめです。軽いですけど、軽量2・2ずついれて回してみたらいいんじゃないかな」

 

「……」

 

「高速パワービートダウンだからいらんってのは割り切りとしてはいいんですけど、個人的にはピン差ししても邪魔にならないと思います。早めに使い切ったら使い切ったで、仕込んでるって警戒させれば手が鈍ることもあるんで。じゃなくてもデッキを掘っていけば割れるって思うと、安心感あるんですよ。それがプレイしていても伝わってくるみたいな?」

 

「えっと……」

 

「今回は名義貸しがマイナーだったのが刺さっただけなんで次やったらかなり苦戦するか、なんとかバレる前にぶっ殺しにかかるんで」

 

 なに?

 なに? なんなの、これ。

 

「もっと白熱出来ると思います」

 

 なんなんや……こいつ。

 

「なんなん、君」

 

「――あ。ごめん、ちょっと一方的に話し過ぎたかな、すみません」

 

 ハキハキと喋っていたのを取りやめて、ばつが悪そうに謝ってくる茂札。

 いやすごい早口……というわけでもないから聞こえたし、距離もあってから大丈夫、大丈夫やったけど。

 それどころじゃない。

 

 こいつ――正気か?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 うちらと茂札は友達やない。

 一緒の部活の仲間でもない。

 今日初めて顔を合わせたばかりのほぼ赤の他人なんやぞ。

 

 それを、自分のデッキの構築を、それも弱点を晒すなんて。

 

 

 

「え? 競技とか、大会前とかじゃない遊び(フリープレイ)じゃないか」

 

 

 きょとんと。

 本当にきょとんと不思議そうに目を丸くして。

 

「そこまで気にすることです?」

 

「……容赦なく次やる時は突くで?」

 

 動きが分かれば、要が分かればそこから打ち崩す。

 そういう意味での宣言だったのだが、茂札はなんでか薄く微笑んで。

 

「いいですよ。というか当然でしょ、そのために今教えてるんですし」

 

「当然って……マゾか、あんた」

 

「マゾって何いってんだ」

 

 少しだけ。

 少しだけ心外とばかりに顔を歪めて。

 

 

「そうやって殺し合うのが楽しいんじゃないか」

 

 

 そう茂札は言った。

 まるで当然のように。

 ニコニコしたり、怒ったり、目が焼かれているでもなく、当然のように。

 

 頭脳戦を、Lifeというゲームを、()()()()()()

 

 

「――」

 

 それに。

 それに。うちは。

 

「………………やっば」

 

 そういうしかなかった。

 そうとしかいいようがなかった。

 

 バトルジャンキーも、祈るための儀式だの、自分に課せられた義務だの、見返したいだの、そんな奴はいた。

 誰もが競技で、学校を背負って、自分の誇りのために戦っていた。

 けれど。

 こんなやばいやつは見たことがない。

 こんなにやばいやつはいなかった。

 

「やばいやつや、おまえ」

 

 苦笑する。

 苦笑いするしかなかった。

 

「げせぬ」

 

「げせやぁ~」

 

 困惑する茂札くんを見て、うちは笑った。

 大笑いするしかなかった。

 

 

「それじゃ次はぼくの出番か」

 

 

 それを終わらせたのはジグの声だった。

 

「お? ジグ、初っ端から本気かいな」

 

 ジグの姿。

 ボードを展開するジグの顔には、眼鏡がかけられていた。

 

 ジグの本気モードの所作や。

 

「当然。リナが負けたんだ、ぼくも油断するわけにはいかない」

 

「あ。もしかしてぶっ飛ばされたほうがよかったか?」

 

 いやでも真剣勝負っていったからなあ。

 とごにょごにょ悩む茂札くん。

 

「衆人環視じゃないんだ、八百長はしなくていい。なにより自力で勝てなかったリナが悪い」

 

「事実だから反論出来んわ」

 

「だが――おかげでデータは取れた」

 

 トントンと、ジグがつま先で床を叩く。

 

 

ぼくの勝率は93%だ

 

 

 

「当てにならないぜ、その数字」

 

 茂札がデッキをボードに差し変えながら、言った。

 

 

「相性が悪い、メタデッキだったら勝率は1割も残らないからな――刺さるか刺さらないかの二択だ

 

 

 

「頭が悪い計算するのやめてくれないか?」

 

「大体あってるのでは? ニュアンス的に」

 

「否定はできないけどさぁ」

 

 うーんぐだぐだ。

 

「じゃあうちがジャッジするでー」

 

「「はーい」」

 

 和やかなトークを聞きながら、さっきまでジグが立っていた場所にうちが移動する。

 

 まあジグなら勝てるやろ。

 データさえ把握していれば、あいつに勝てるやつはおらへん。

 ものすごくノッたうちか、ドロシーでもなければ全国でも勝てる奴が数える程度。

 

 【水底の羅針盤】の渾名は伊達ではない。

 

 あいつのプレイングは本当にブレない。

 いつだって勝利へと正確に進んでいく。

 

「……ん?」

 

 そこまで考えて、ふと気づいた。

 

 

 

 

 

 

 茂札くんのデッキ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 






 死を埋める。
 土を埋める。
 花を埋める。
 時を埋める。

 生が咲き誇る。

                       ――花葬輪廻
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