俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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少し遅くなりましたが、今回も更新
の前に、FAをいただきましたので紹介させてもらいます!



【挿絵表示】

モブくんや社長ちゃんなどの絵を書いてくださっている方より、
羽島リナちゃんのFAを早速頂きました!
大体こんな感じです! かわいい~



【挿絵表示】

藤音やすくら様より天儀ドロシーちゃんのFAを早速頂きました!
うおおおおおお!! ぱっつんぱっつん!
これはかわいい!!



【挿絵表示】

朽木様より同じくドロシーちゃんのFAを頂きました!
でっっっっ!!


【挿絵表示】

そうま様より茂札普夫のFAをいただきました!
うーんこれは特徴のない男ですねえ、ありがとうございます!!
素敵なエプロンだ!!


二十九話 セットとは、盤面にカードを配置することである

 

 

「おし、テーブルは片付けたわ」

 

「なんというかすいません。あ、こっちのフィールド電源入ってなくないです?」

 

「あわわちょっとまってくれ。えーとリモコンがこれだから……電源、電源どこでついてるか見れる?」

 

「専用のリモコンじゃなくて、操作端末ありません? 直引きのやつ」

 

「おらおら部長。普段やってないから、これ。これを、こうやって点けるんよ」

 

「うぅ、マニュアルさえあれば……」

 

「単純な操作ですからマニュアルより、覚えた奴に教わったほうが覚えやすいですよ。指で覚えるみたいな、あとスイッチごとにほら、これ色分けてるんで。メーカーが違っても、使うスイッチごとの色は統一されてるからセットで覚えたほうが事故りにくいです」

 

「詳しいんやなぁ」

 

「カドショでバイト中なんで。フィールドの電源入れたりするのも覚えました」

 

「茂札くん。部活に戻ってきてくれたりとか、いやかな?」

 

「いやですねぇ」

 

「そっかぁ」

 

「来年の新人か、部員の教育頑張るしかないわ~部長がんばりなはれ」

 

「うぅ、本来なら今年で卒業しているはずだったのに……」

 

「大変ですねぇ」

 

 ぐだぐだした。

 ちょっとなんかぐだぐだをしたけれど、なんとかフィールドで相対する。

 

 

「さて。やるで」

 

 

 特徴的な鈴を付けた右手とは逆の左手に、バトルボードの篭手を嵌めるのは羽島リナさんだ。

 既製品のタイプに似てるが細かいカラーリングが施されているし、頑丈性に長けたガントレットタイプだ。

 

「ジャッジはぼくがやろう。リナが終わったら交代で」

 

「りょかー。ま、うちにボコられてもう疲れましたっていうなら出番ないけどなぁ」

 

「無限ループとかコンボ終わるのに一時間かかる複雑手順じゃなければ大丈夫です」

 

 せめて省略できる手順にしてくれよ?

 

「想定がおかしない? というかもしかして、うちのデッキ知らんか?」

 

「知りませんね」

 

「なんか恥ッず! やばい、うち有名人気取りだったみたいで恥っず……!」

 

「幽霊部員だったツケだね。ぼくも今の一年にはかなりさっぱりだと思うよ」

 

 身悶えする羽島さんに、やれやれと肩を竦める湊手嶋さん。

 仲良しだ。

 しかし。

 

 どっちも面がいいからなんというかこう、青春してる感じがして眩しい。

 

 年長でいるほど精神年齢が高い自覚はないが、前世分の経験値が追加されているせいでこういうのを見ると眩しく感じてしまう。

 後方腕組み気分というか、続いていって欲しいみたいな。

 仲が良いというのはいいことだ。

 悪いよりもずっといい。

 

 とはいえ。

 

「まあ先輩方も今の僕のデッキは知らないでしょうから、フェアってことですね」

 

 真剣勝負だ、手を抜くつもりはない。

 だから手袋を付け替える。

 薄い手袋からいつも使っている分厚い手袋に。

 

「? 怪我でもしてるんか」

 

「いえ、こうしないと気合が入らないんで」

 

 手袋を嵌め終えてから、ホルダーからデッキを取り出し、軽くシャッフルする。

 自動シャッフル機能がボードにあるとはいえ、これをしないとなんとなくシャッキリしないルーティーン。

 

「気にせず」

 

 それが終わってからボードにメインデッキ・ライフデッキと順番にセット。

 自動シャッフル機能を起動させる。

 

 これをファイトが始まる前にやっておかないと公式戦では注意を受ける大事なマナーだ。

 

 手動のシャッフルだけだと積み込み、カードの順番を意図的に並べるなどの有利な小細工をする奴もいないわけではないし、シャッフルのやり方もきちんと複数混ぜないと無作為化がしきれない。

 ……そういえばこれも彼女に教えたことだったか。

 

「ファイトをしよう」

 

 自動シャッフルが始まり、軽く震える左手に思考を打ち切り、要件を告げた。

 

 

「はん。雰囲気あるやないか」

 

 鈴が鳴る。

 鈴を鳴らしながらメインデッキをセット。

 そこから入念にシャッフルしたライフデッキを羽島さんはセットする。

 あの動き……土地オンリーじゃないな。

 魔石か、あるいは呪唱か、かなり差している動きだ。

 

「楽しませておくれやす」

 

 自動シャッフルの動作音。

 シャカシャカと流れる小気味の良い音がしばし流れて、止まる。

 

「双方準備はいいか?」

 

 

「いつでもええで」

 

「どうぞ」

 

 

「では双方これよりレディ――……ファイト!!」

 

 

 

 

 互いに手札五枚を引き抜く。

 先行は……あっちか。

 

「うちの先行! ライフカードを2枚ドローし、土地をセット。1コスト支払い、<火付け尾トカゲ>を召喚や!」

 

 尻尾に火が籠もった小柄なトカゲ。

 といっても子供ぐらいのサイズはあるクリーチャーが召喚される。

 

「……灼熱龍士(サラマンドレイク)か」

 

 2/1クリーチャーだ。

 <火付け尾トカゲ>は召喚時に点火カウンターが1つ乗る。

 

「トカゲの上に【点火】カウンターが1つ乗るで! このカウンターは次のターンのアップキープで1つずつ増えていく、まずはこれでターンエンドや!」

 

 点火カウンターは特殊な破壊効果を持つカウンターだ。

 このカウンターの数が付けられたクリーチャーのタフネスを超えた時、点火。

 そのクリーチャーを破壊する。

 <火付け尾トカゲ>は次のアップキープ時にカウンターで自壊し、誘発効果でプレイヤーかクリーチャーに2点ダメージを与える。

 自走式の爆弾といってもいい。

 

「僕のターン。アップキープ、レディ、ドローフェイズ……メイン1枚ドロー、ライフカードを2枚ドローします」

 

 灼熱龍士がメインなら先に魔石の<燻る大地>か秘宝<焼け石拾い>を並べてくる。

 

 燻る大地は灼熱龍士共通の点火カウンターを一つ取り除くか、コストを1つ生み出す起動効果を持つ魔土地。

 これがなければ”灼熱龍士”関係は召喚酔いで殴れない分、バーンのテンポロスに、クリーチャー()の分不足するどっちつかずになりやすい。

 となれば速攻付与の装備品か、あるいは付与してくるサポートをいれるのが加速サラマンの動きとして判断可能。

 

 もう一つの<焼け石拾い>は1コストだから、出せるなら先に出したほうが得なはず。

 あれは破壊(自壊)したクリーチャー分だけ砲弾カウンターをためて、起動して蓄積ダメージをぶん投げられる灼熱龍士の副砲。

 

 これを両方出してこないってことは……

 

「土地をセットして、受粉ゴブリンを召喚」

 

 ――切腹加速か。

 手札にどっちもないが、コストがやや重いやつを用意してると見た。

 

 ゴブリンを焼いてもらうほうがいいな。

 

「ターンエンドです」

 

「ゴブプラ? 渋いなぁ、あんた。うちのターン」

 

 ターンが切り替わる。

 

「このアップキープ時に点火カウンターは追加される。点火カウンターがタフネスを超えた<火付け尾トカゲ>は破壊されてしまうが、このクリーチャーは破壊された時効果を発動する。プレイヤーかクリーチャー、どれかに2点ダメージ。うちは<受粉ゴブリン>を焼くで」

 

「通します」

 

「ゴブリンは見たら焼け、これお約束な」

 

 それはそう。

 受粉ゴブリンが焼かれて墓地に送られる。

 そうだよね、コスト加速するようなやつは生かしておいてろくなことにならん。

 

「レディフェイズ、土地をレディにするで」

 

 そういうもんだ。

 

「ドローフェイズ、メイン・ライフをドロー」

 

 丁寧な所作でカードを引き抜く羽島さん。

 さて。

 

「魔石<燻る大地>をセット。これは魔石であり、土地でもあるから普通にコストが出せる」

 

 今引いたな。

 で、使えるのは4コストじゃなくて2コストしか使えないが、どう動く?

 

「2コスト支払い……うちは<始まりの竜 レイド>を召喚する! 来いや、ひよっこ!!」

 

 そういって呼び出されたのは小さなトカゲのようなドラゴンだった。

 ずっしりと現れたのに寝転がり、ぷぅぷぅと鼻提灯を膨らませた子どものドラゴン。

 

 ――”進化サラマン”か。

 

 

 相手のデッキタイプに見当がついた。

 あとはどの派生か。

 

「ターンエンドや」

 

 判断しないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 うーん平和だなぁ。

 

「買おうかな、かおうかなー、かえばきっと……」

 

「だめよマキヤくん! 展示されてるカードは私たちキッズに買えるものじゃないわ! お年玉が消し飛んじゃう」

 

「でもこれを揃えばきっと勝てるって!」

 

「マネーはもうゼロよ!」

 

「くくく、脳が破壊されて判断力が壊れてしまってるねぇ」

 

「それ買うぐらいなら我々四人で頑張って集めたボックスでほしいの取り合うほうがよいのでは? 我は訝しんだ」

 

 販売ショーケース前にはいつもの小学生たちに、ちらほらと見慣れてた顔と見れてない人がテーブル席でファイトをしている。

 新しいエキスパンションが出てここ最近は忙しかったけれど、さすがに一週間も経てばペースも落ち着いてくる。

 優秀なバイトも入ってきてくれたし。

 

「平和だねぇ」

 

 うん、実に平和だ。

 ずっとこんな日が続けばいいなぁ。

 

「店長。暇ならテーブルの片付けとかやってほしい」

 

「はーい」

 

 うん、優秀なんだけどちょっと厳しいのが玉に瑕かな。

 茂札くんだったらなんだかんだで優しくしてくれるのに~。

 

 

「たのもー」

 

 

 お?

 バーン、とはいかないで普通に扉を開けてきたのは見慣れた顔の少女。

 

「こんにちはー、セト店長!」

 

 ユウキちゃんだった。

 

「こんにちはー。あれ、今日も学校帰り?」

 

 着ている中学のセーラー服姿。

 すっかり見慣れてしまったけど、学校が終わってそのままやってくるあたり本当にLifeに染まってたんだねぇ。

 

「はい。もう全力で走ってきました!」

 

 ニコニコ笑顔。

 うんうん、楽しんできてくれてるみたいで店長として嬉しい。

 

 ん? あれ?

 

「うーん、それは嬉しいけどユウキちゃん部活やってるんじゃなかったっけ?」

 

 どこの学校でも大体あるファイト部、もしくはLife部。

 それに入ったみたいなかなり前に聞いたみたいだけど、最近はずっと夕方ぐらいには来るんだよね。

 春のエレウシスは終わったばかりとはいえ、どうしてるんだろう?

 

 そう思って聞いたみたんだけど。

 

「……いやぁ、その」

 

「どうしたの?」

 

「…………部活の皆じゃあちょっと相手にならなくて、練習にならないというか」

 

 うわ。

 

「ストラちゃんは色々憶えてデッキとか一緒に弄ってるんですけど……他の部員とか、私とファイトするの避けてるみたいな」

 

「そんなユウキちゃん強くなっちゃったの?」

 

「そんなつもりないんですけど……なんか強すぎるって」

 

 んー。

 まあ中学ぐらいの部活動だとそこまで本格的にやってる人は多くないからなぁ。

 あくまでも日常のファイトの延長線みたいな。

 デッキを作るのにも資金的に厳しいだろうし、よほどのファイトエリート学校でもないと専門的な指導者もいないはずだ。

 だから今のユウキちゃんが相手だと厳しいのかもしれない。

 

 そう考えると今もユウキちゃんとフリープレイしてへっちゃらで楽しんでいるあの子たちもかなり逞しい。

 

「いいもん、いいもん、私はこのお店がありますもん!」

 

「……いつでも遊びにきていいけど、学校の友達とも仲良くね?」

 

「ストラちゃんとは大親友だよ!」

 

 …………それ以外は?

 

「そんなことより。モブさんはどこです?」

 

 ユウキちゃんがモブさんと呼ぶ相手を、私は知っていた、

 茂札普夫くんのことだ。

 店員さんと呼んでいたユウキちゃんだが、茂札(もふだ)くんの名字をもぶと勘違いしてたらしい。

 

 一ヶ月前のあれこれ慌ただしい事件の後にちゃんと名前を教えたのだけど、呼びやすさと、茂札くんがそれでいいよと許可をしてしまったことからすっかりユウキちゃんはそう呼ぶようになったしまった。

 あともう一人のバイトちゃんもモブ呼ばわりで、常連たちもちらほらそう呼ぶ始末だ。

 

 まあ元から店員さんって言われるばかりだったから愛称があるのはいいと思うんだけど。

 

 

「フツオくんなら、今日は休みだよ」

 

 

 モブというのはちょっと感じが良くないとボクは思うので名前で呼びます。

 

「え゛っ、なんで!?」

 

「なんでっていわれても。そういう日もあるんだよ」

 

 確か平日の休みはどこかの大会に出てるって言ってたかなぁ。

 

「そんな……今度こそ勝つつもりで来たのに。頑張ってデッキも調整してきたのに!」

 

「そんなに悔しかったの?」

 

「そりゃあもう! この間は悔しくて夜も寝れなくて、デッキと集めたカードずっと弄くってました!」

 

「まだ成長期なんだから夜ふかししないでちゃんと寝ないと駄目だよ」

 

「悔しかった。もぉ、本当に!」

 

 ギュギュギュと音が鳴りそうなぐらいに左拳を握るユウキちゃん。

 そんなになるほどかぁ。

 いやまあ、確かに、なるかもね。

 

 ボクも見ていてちょっとうわぁーってなったし、あれ。

 

「だから絶対勝ちます、モブさんに!」

 

 おお、燃えている。

 

 

 

あの”ヒーローデッキ”になんて絶対負けない!

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

「僕のターン。レディ・アップキープ・ドローフェイズ」

 

 さて、どうするか。

 ”進化”してくるだろうから、下手な壁でぶつけるのも時間稼ぎにならない。

 それとなにより準備が足りない。

 

「ライフ・メインドロー……ふむ」

 

 引きは悪くはないが、まあなんとかするか。

 

「土地をセット。0コストで秘宝<名義貸し>をセット」

 

「……名義貸し?」

 

 知らないのか。

 

「……ケルベロスは組んだことがないみたいだな」

 

「ケルベロス?」

 

 ミサイルドッグズ+灼熱龍士(サラマンドレイク)人狼遊戯(ウルフワード)三重狗士(ケルベロス)では必須パーツなんだがな。

 かつてのトップメタの一つが知られていないことを残念に思いつつ。

 僕は一つのカードを掴み取った。

 

 

「2コスト支払い――<ブレイバー・影刃>を召喚します

 

 

 ”ゴブリンヒーローデッキ”。

 

「通りますか」

 

 そのメインエンジンを出した。

 

 

 

 

 

 

 






 のんきなのんきな怠慢な竜は今日も夢を見る。

 大きく羽ばたく翼を、夢の中で微睡むのだ。


                     ――始まりの竜 レイド
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