メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
「おっと新人ども、ここは通行止めだ。どうしても通り抜けたけりゃ手持ちのMAG結晶体を全部置いてってもらおうか」
「どうしても嫌だっていうなら仕方ねぇ、代わりに女たちでの支払いも受け付けてやるよ。その背中に背負ってるヤツらも優し~く世話してやっからよ? イヒヒ……ッ!」
チンピラ風味の先輩方にからまれるというジャンル問わずの定番イベントも、いまの俺にはすっかり色褪せて見えてしまうよ。なにせ身内がニュークリアボム並みの爆弾を抱えたまま基地に帰ろうとしているのだから。
これでハーフデッドボムまで揃えばレベル不足でも十賢者が倒せちまうぜ。いや、すでにヤベェ状態のがふたりいるんだからもう準備は完了してたな! ガハハハ!
ゲスい要求に当然の権利のようにキレる仲間たち。それはそう。包囲されて銃口を向けられているとはいえ、こちらも全員が身体強化された異能の力を持つ者たちである。簡単に弱気な姿を見せるようではヨモツイクサと戦ってられんからね。
「ふざけるな! このMAG結晶体はオレたちが命がけで集めた大事なモノなんだぞ! それを横取りしようだなんて、同じ軍人のクセに恥ずかしくないのかッ!」
「おーおー、元気に吠えるじゃねぇの。……言葉には気を付けろよゴミ虫が。テメェら使い捨てのDクラス産まれと俺たちを同列で語ってんじゃねぇッ!」
「そうそう。お情けで軍隊に面倒見てもらってるカスどもとはスタートラインがまるで違うんだよ。番号で管理されて名前も無かったような連中が、生粋のCクラス帝国市民さまに逆らっちゃダメでしょ~?」
「おい、良くみたら名前すらねぇヤツがひとり混ざってんぞ! おうノロマッ! 名前も決められねぇノロマのクセにまだ生き残ってやがるのかノロマ! どうだ、俺が名前を付けてやったおかげで優しい先輩方がお前のことを覚えてくれたぞ、嬉しいだろノロマッ! ハッハッハッ!」
ハイハイ、キミたち殺気立たないの。お前さんたちはちょっとヨモツイクサの警戒しててよ、俺も少し先輩の皆さんと話をしてみたいんでね。
さて先輩方。単純な疑問なんですけどね、ぶっちゃけ俺たちから献上品を集めるより自分でヨモツイクサを倒したほうが効率良くないッスか?
だって、もしかしたらこの道を通らなかった可能性だってあるんだし。そしたら無駄に時間を過ごすことになってたワケですし、かえって面倒なことしてませんか?
「ふむふむ、なるほど。たしかにそういう考え方もできるな。よし! 物知らずでバカな後輩に世の中のことを教えてやるのも先輩の仕事だからな。テメェらゴミ虫と俺たち人間との違いを教えてやる」
「使い捨てでいくらでも代わりがいるDクラス上がりと違って、俺たちみたいな正式な軍人はいちいちMAG結晶体なんざ集めなくても給料が支払われるのさ。だからこれはただの小遣い稼ぎってワケよ」
「つまりは遊びだよ、遊び! 遊びに命がけになるアホなんているワケねぇだろ? これでまたひとつ賢くなれたな、感謝しろよノロマ」
えぇ、ありがとうございます。……ピクシー、こいつらってMAG反応あるんか?
(ないよー。あ、全然カラッポってワケじゃなくてね? ただヨモツイクサってのと戦えるとは思えないほど弱そうだし、魔法を使うなんて絶対ムリだろうね。でもアーマーとか銃からはMAGの力を感じるよ)
ふ~ん? つまりこのまま戦闘になってもそうそう負ける要素はない、と。しかし本人たちは自分たちのほうが無条件で有利だと思っている様子ときたもんだ。
と、いうことは。……えー、生意気な態度を見せてしまい大変失礼しました。Dクラスから昇格して気分が大きくなっていたようです。やはり先輩方のような本物のエリートは軍隊での立場が違うんですね!
「なんだよノロマ、お前ちゃんと礼儀正しくできるんじゃねぇか。えらいえらい! こりゃノロマなんてあだ名を付けて悪いことしちゃったかな?」
「そうそう、素直にそうやって頭を下げてりゃ俺たちも少しは見逃してやろうかって気持ちになるんだ。下の者にも寛大な心ってヤツを見せるのも上に立つ人間の役目だしよ」
「後ろのキミたちもこのノロマ……じゃないか、もう。コイツみたいに賢い選択をしたほうが身のためだよ~? なにせ俺たちはいずれ──選ばれし『天使兵』まで出世する予定だからな!」
うーん、わかりやすい。そして扱いやすい。出世コースが約束されたかのような言い方は、事実としてD民とC民の扱いの違いから出てくる言葉なのだろう。
だがコイツらが本当にエリートなのかは怪しいところだ。おそらくはD民上がりの連中なら全員が知っているであろうMAG結晶体を使ったレベルアップを知らないんだから。
なんなら勇敢な最後を期待されてここにいる可能性だってあるぞ? 煽てて戦場に立たせて、不幸な事故が起きればそれでよし、そうでなくともこんな世界じゃ一度軍隊に入れば簡単には抜け出せない──おん?
「てん、し……てんし……?」
「へ? ちょっ、動いちゃダメだよ! 落としちゃうから……うわっと!?」
「おい、待てよ! まさかそいつらの言う通りにするつもりじゃ──うおッ!?」
相変わらずブツブツと呟きながら、そして止めようと腕を掴んだヨウイチを振り払い、自称エリートの前まで歩いていく。
どう見ても様子がおかしいせいで、こちらは誰も動けない。俺? 俺は違うよ、嫌な予感しかしないから動かないだけだもん。別にビビってなんかいますけどなにか?
「お? なんだ、自分からくるたぁお前も賢いみたいだな。よし、お前は特に丁寧に可愛がってやろう。感謝しろよ? 未来の天使兵さまに遊んでもらえたって、皆に自慢できるぜ! ハッハッハッ!」
「…………が」
「うん?」
「──貴様ら如き下等生物が、軽々しく天使と口にするなァッ!!」
「あぁんッ!? テメェ殺さ──ゴポァ……」
はい、というワケでヨウイチくんのお仲間の女の子が先輩の心臓を素手で貫いたところで戦闘ラウンド開始です! これもう中にガチ天使っぽいもの入ってるって認識でいいよね?
つまり女の子たちの自我はもう手遅れってことですねコレは。洗脳よりタチ悪いじゃねーか! でもメガテンの天使ってこんなもんだよね! いつもの連中だよ知ってたッ!