メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

16 / 129
オープニング:3

 2日ほどして。

 

 無機質な部屋にギュッと押し込められて「お前ら全員新しい装備で新しい職場勤務な」とモニター越しに説明されて、プラカードの代わりに大きな銃を持ったパワードスーツ姿のお兄さんお姉さんに誘導されてゾロゾロと歩く集団に交ざる俺。

 質疑応答? ねぇよンなもん。ひとり「オレはCクラスになったんだろ! なんでまだ戦わなきゃならねぇんだ! 化け物を殺すのはDクラスの仕事なんだろッ!?」と思春期特有の反抗をした少年もいたけどね。まぁ連れていかれるよね。もちろんこの移動集団には戻ってないよね。南無三。

 

 ただ新しい装備は皮肉ではなく本当だったようで、薄い鉄板を使ったプロテクターみたいなものを支給された。クリーチャー相手に防御力が期待できるのかは疑問だが、地形による擦り傷とかは防げるので行動の幅は広がるだろう。これでもっと遠慮なくローリング回避ができるようになるぜ! 

 

 ちなみに武器は新しい職場についてから渡されるようだ。それはそう。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「私はこれから『ホノカ』を名乗ることにした。私がいまも生きていられるのは、この火炎の力のおかげだからな。いつか名前に漢字を使える身分になったら炎の文字を入れようと思っている。組み合わせるのは『香』か『華』か……その辺りはそのときまでに考えるつもりだ」

 

「僕は『マモル』という名前にしました。そうです、護衛の『護』という文字から取りました。大型のクリーチャーに襲撃されたときの帝国軍の姿に思うところはありますが……だからこそ僕はしっかりと市民を護れる人間になりたいと、そう思いまして」

 

 何処に連れていかれるのかもわからない、そしてどうやって移動しているのかもわからない。気分はまるで出荷される工業製品のようだが、狭い部屋に押し込められても知り合いがふたりいるだけで扱いとしてはマシなほうだろう。

 

 これから先の仕事場では複数人での作業が基本となると説明され、このメンツでチームを組むように指示が出ているが……俺とこのふたりが選ばれたのは偶然だろうか。

 これが作為的なモノだとすれば、俺たちを回収した『中佐殿』あたりがなにか企んでいるのかもしれない。帝国軍でもそれなりの地位にある人間がD民の交友関係に配慮するとは思えないし。

 

 もっとも、逆に考えれば有象無象のD民のことなんていちいち記憶しているとも考えにくいんだけど。というかそうであって欲しい。

 普通のファンタジー作品なら上官の覚えがめでたいのは喜ばしいことだが、メガテン的には偉い人に気に入られるのもまた死亡フラグのひとつなワケだし。あれ、情報収集のための出世って、マジで自分で自分の首を絞めるのとあまり変わらないんじゃ……。

 

 それはそれとして。

 

 キミたち、ちゃんと名前考えたんだね。えらいゾ☆ 俺なんて悩みに悩んで結局決められなくて保留してるのに。

 

「なんというか……戦闘中といまとでは貴方の印象も落差が酷いな。あれだけ勇敢に戦った人間が、平時ではここまで優柔不断だとは」

 

「それだけ気持ちの切り替えが上手なんでしょう。僕なんか失敗をけっこう引きずってしまうタイプなので、むしろ見習いたいぐらいですよ」

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 真っ白なシーツ! 

 

 いつでもお湯が出るシャワー! 

 

 そしてなによりも素晴らしいのは、四方が壁とドアで囲まれた完全個室の水洗トイレッ!! 

 

 最も高いと書いて最高。

 

(これからはアンタがトイレするときに、いちいち意識の海に潜らなくても外で待ってればいいから楽ね~)

 

 それはそれでリスキーだけどな。なにせマモルとホノカと共同の三人部屋なんだし。

 

 

「Dクラスとは扱いが雲泥の差だな。信じられるか? 小型の冷蔵庫まで設置されているぞ」

 

「働きに応じた待遇を。明確な信賞必罰こそが日本帝国を繁栄させたのだと熱弁していた先生は正しかったワケですね。しかしなんというか、学校の宿舎を思い出します」

 

 あ~、言われてみれば。

 

 部屋に対する人口密度はまるで別物だが、国家貢献の義務が適応されてお仕事を始めるまでに過ごしていた施設はこんな感じだったな。

 

 その施設の名を『帝国福祉・特別人権教育学校』という。この国が子どもたちの教育にどれだけ真剣かつ本格的に取り組んでいるのかが伝わってくる素敵なネーミングしてるだろう? 

 どれぐらい真剣だったかというと、帝国放送で反逆者が処刑される様子が流されるときは子どもたちを全員集めて視聴させ、そのあと「正義の軍人さんたちの活躍でまた帝国の平和を乱す悪い人たちがやっつけられました。この国がまた1歩、宇宙で最も優れた国家として歩みを進めたことを皆さんでお祝いしましょう!」と言ってケーキをたくさん食べさせてくれるぐらいには教育熱心だ。そして俺がこの世界をヤバいと確信した瞬間でもある。

 

 いうて規則さえ守って過ごしてればそんなに悪くない毎日でもあったけどな。強いて不満をあげるなら、食事が1日2回なのと午後の活動が全部戦闘訓練なのがキツかったことぐらいか? 

 でも食事の内容はロールパンにトマトとキャベツのカレー味スープとかまともだったし、化け物が当たり前のようにいる世界なら戦いに備えるのも当然だし。

 

 

 ま、たまに「ちょっとぐらい平気だって! 先生にバレないようにすぐに戻ってくるって!」と言って敷地の外に出た奴らが翌朝には例外無く転校したと聞かされたときは流石と思ったが。

 若くて可愛らしい女の先生が優しく微笑みながら「彼らは規則を破ってしまったことを反省し、今日から日本帝国にその身を捧げて貢献しています。皆さんがお友だちともう一度会うのはとても難しいことかもしれませんが、心はいつでも一緒ですよ」とか言い出したときは股間の黄金郷にブリザードが吹き荒れてたっけ。

 

 

 うん、やめよう! 

 

 思い出すだけで変な汗止まらねぇ。

 

 

 そんなことより次のお仕事のことを考えたほうが建設的だな。そう、次のお仕事は……お仕事はぁ……な~んにも情報与えられてなかったわ。ま、どうせまたDクラスのときと同じように化け物退治だべ。よゆーよゆー!




あとからまとめて読んでいる方には関係のない話ですが……。


この話を投稿しているとき、Nintendo Switchでメガテンが半額セールをしていることに気が付きました。


投稿が遅れたら察して♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。