メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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オープニング:1

 寝て起きたら病室でした。

 

 おかしいな、こういうときって意味深な夢を見たりするもんじゃないの? それがなかったってことは俺は無事モブキャラとしての道を歩めているということか。

 生存確率で考えればメインだろうがモブだろうが容赦ないのがディストピア系のお約束だ、なんて都合の悪い真実には蓋をしておけば存在しないのと一緒だから大丈夫だ。シュレ……シュレ……なんだっけ、シュガーハートの猫? 

 

 手足は……動く。頭痛もない。強いていうなら空腹感が強いぐらいか? お休みスプレー体験からどれだけ時間が経過したのかはわからないが、怪我を治すために大量のカロリーを消費したのかもしれない。

 

(おはようニンゲン。その様子だとしっかり休めたみたいね。さすがに失ったMAGは元通り、ってワケにはいかないみたいだけど)

 

 おぉ。よかった、ピクシーも無事だったか。な~に、失ったMAGはまたクリーチャーを倒して稼げば問題な……そういえばあのときの軍人たち、当たり前のように生体マグネタイトって言ってたっけな。

 俺たちD民には必要のない情報として統制されていたか、そもそもD民の見張り程度の任務しか与えられていない軍人は知らされていないのか……どっちでもいいか、そんなこと。この考察はいまは必要ない。

 

 優先すべきは現状把握。とりあえず拘束されてケーブルまみれにされなかったのはありがたいことだ。魔法の力を使えるぐらいのことでは研究する必要がない、ってことなのかな? 

 だとすれば日本帝国には、あるいは帝国軍には魔法を使える人間が普通にいるということだ。なら悪魔の姿が見えるヤツも当然いる……のか? 

 

 ピクシーと初めて出会ったときのことを考えると、そっちの可能性はまだ保留したほうがいいかもしれん。余計なお喋りは自分の首を絞めるだけ、古事記にもそう書いてある。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「おはようございます。よく眠れましたか? 食事を用意したから、ムリのない範囲で食べられるぶんだけ食べて──と、思ったけど。キミのお腹は準備万端みたいね?」

 

 白いご飯、玉ねぎとジャガイモのみそ汁、ほうれん草? っぽいゴマ和え、目玉焼きとウィンナー2本、それに茹でたニンジンとカリフラワーかな? 

 これだけ整った食事を用意されて腹の虫鳴らないヤツいたら逆にヤバいだろ。だってよ、デザートにフルーツゼリーまであるんだぜ? 病み上がりに適切な食事かどうかは別問題だけど。

 

 どう考えてもDクラス帝国市民に食わせるメシじゃないな。なに? 俺このあと銃殺刑にでもされるんですか? せめてもの情けとして美味しいご飯食べさせてあげるよ的な。

 つまりお姉さんは最後の慈悲を与えにやってきた天使ですね把握しました。

 

「フフ♪ 喜んでくれているようでなによりだわ。心配しなくても、ここに運ばれた子たちはみんなキミと同じ食事が与えられているから大丈夫。ちょっと病室が足りなくてキミだけ個室になっちゃったから、少し寂しいかもしれないけど。ゴメンね? 

 それから──嬉しいのはわかったけど、これからはあんまり不用意に『天使』という言葉は使っちゃダメよ? 偉い人に聞かれたりしたら軽度不敬罪で長~いお説教のあとに反省文を書かされちゃうから。それじゃあ、しっかり食べてゆっくり身体を休めるのよ?」

 

 

 軍で食事を用意してくれる人ってなんて言うんだろう。衛生兵……は、違うよな。ともかく俺の作業着より高級そうな軍服を着たお姉さんが運んでくれたザ・和食。こいつを自由にする権利を俺は手に入れた。

 まさに我が世の春。おかげで胸もお腹も変な具合に満たされて箸がなかなか動かない。だって天使って言葉が不敬罪になるなんて情報を知っちゃったんだもの、そりゃ食欲も減衰するわ。

 

 誰に対する不敬罪なのか? そりゃ規律を作った人たちに対する不敬罪でしょ? それってつまり人間が軽々しく天使という言葉を発することを許さないような存在が国家運営の中枢にいるってことだからな! ワッハッハ! 吐きそう。

 

 

(ねぇねぇニンゲン、このフルーツゼリー食べてもい~い?)

 

 あ、どうぞどうぞ。比喩でもなんでもなくピクシーさんは命の恩人だからな。おやつのひとつやふたつを献上するぐらいのことは喜んでやりますとも。

 

 さて、俺も気持ち切り替えて食べるとしよう。ほうれん草からパクッとひと口……うむ。ゴマとお醤油の香りにまともな青物の味わいが素晴らしいじゃないか。

 お次は目玉焼きの黄身を潰して~からの? おもむろにウィンナーを掴むぜッ! 黄身にチョンチョンと、こうやって食べれば……美味いッ!! 

 

 そこに白飯。白飯! 白飯ッ! そしてみそ汁ずるる~っと──ふぅ、幸福。明日からまた命を削りながら平和を求めて戦う日々が始まるからね、束の間の安心安全を楽しまないとね。

 

(安心、安心ねぇ~。ま、バケモノだらけの壊れた街の中よりはたしかに安全かもしれないけど)

 

 おや。ピクシーさん的には気になることでもあるのかな? 

 

 

 

 

(気になるっていうか……ホラ、さっきご飯を持ってきたアレ。見た目と違って中身はニンゲンじゃなかったし)

 

 

 

 

 へぇ~そうなんだ~ブッフォッ!? 

 

(アブなっ。よしよし、ゼリーは無事ね♪)

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