メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
爆発による粉塵が晴れたあとから現れたのは、下半身が消し飛びオークもどきからオークの上半身に変化したボスでした。
素人目には控えめに言っても瀕死に見えるが、それにしてはMAGの減り方が少ないとピクシーは判断している。どっちを信じるかって? 逆に聞きたいよね、この状況で俺の主張を採用するヤツおるんかって。
近寄るのは危険か? 確実に止めを差すべきか? 悩んだ時間のぶんだけ苦労して手繰り寄せたこの有利が無駄に消耗するが、判断を間違えれば全てが一瞬でひっくり返る。
せめて魔法を使えるだけのMAGに余裕があれば──うるさッ!? なに!? 急に雄叫びとかまさか麻痺付与のバインドボイス的なスキルで俺たちを足止めぇぇぇぇどころじゃねぇッ!! 死に体だった養殖ブタどもが復活してにじり寄ってきてるぞ!?
復活魔法のリカームに近い効果なのか? いや、それにしては様子がおかしい。なにが変なのか上手く言葉にはできないが、生き返ったワケじゃないと何故か確信できる。
うん、なんだ。とにかく迷ってる暇は無くて、いますぐ決断が必要な状況に追い込まれてることだけは理解した。今日は1日そんなんばっかだな? 厄日か? メガテン世界そのものが厄災まみれなのに厄日もなにも無いか! ガハハハハッ!
ピクシーすまん。もう一回だけ無茶を頼む。死ぬのは絶対に嫌だが気絶で済むならセーフでいいかなって気分になったし。狙う場所は言わなくてもわかるだろ?
(そりゃね。一部分だけだろうけど、強い反応があるMAG結晶体がキラキラしてるの見えてるし)
正直、いまの時点で頭の頭痛が痛くてたまらんけど……背に腹はかえられぬ、死ななきゃ安いってのは金言だな。
(ギリギリまでMAGを搾り取るからね。歯ァ食いしばってガマンしてよね男の子ッ! ──ジオンガッ!!)
すげぇ、視界の歪み方ハンパねぇ。だが意識を失う一歩手前で許されたらしい。おかげでオークの上半身が爆竹みたいにバチバチ弾けたところはバッチリ確認できた。
やはりMAG結晶体はクリーチャーにとって重要な、ファンタジー作品とかでも定番の『核』という認識であっているのだろう。その中からピクシーが出てきた理由はさっぱりワケわかめだが。
「おい!? しっかりしろッ!!」
悪い、歩くのだるい。肩かして。
「それぐらいお安いご用ですよ。さぁ、今度こそ逃げるとしましょう。さすがに明日は貢献活動なんてしている場合じゃないでしょうし、ゆっくり休めるハズです」
「フフッ、だといいがな……。軍の連中、基地が破壊されたのは私たちのせいだと言って瓦礫の撤去を命じるんじゃないか? ヤツらはそれぐらいのことはするだろう」
あり得るから困るな~それ。どうしようかな、仮病を使うまでもなくガチで動けないから大丈夫だとは思うけど、もし命令されたら……ん?
「ァ……ィ……」
いま、なにか聞こえた?
「いえ……僕はとくには」
「私もだ。疲労で幻聴でも聞こえたんじゃないか?」
そうかな……そうかも……。
「ア゛……ギィ……」
うん、聞こえてるわ。
そしてこのタイミングで誰にも心当たりの無い声が聞こえるということは、だ。ものすご~く嫌だし気付かなかったことにしたいけど諦めて後ろを振り向けば──やっぱり生きてたかあの野郎ッ!
「冗談でしょう!? どれだけしぶといんですか、あのクリーチャーはッ!」
「だが瀕死であることに変わりはない! とにかく逃げるぞ! 私たちもハンドガンを撃つことすら厳しいほど消耗してるんだ、どうにもできないッ!」
その意見には俺も大賛成なんだけどなぁ。
「マ゛……ハァ……ラ、ギィ……ヴォオンッ!!」
避ける? ムリ。だっていま確実にマハラギオンって唱えやがったし。全体火炎魔法をこのボロボロの状態でやり過ごすとかムリムリ。
ならどうするか。答えは簡単、避けなければいい。俺の消耗はほとんどがMAGの消失なので肉体的にはまだ余裕がある。ゲーム的ステータスで表すならMPは切れてるけどHPはそれほど減っていないワケだ。
だったらよぉ、やるしかねぇよな?
──唸れッ! 筋肉ハイブースターッ!! 物理的マカラカーンを食らいやがれッ!! まぁ魔法反射なんてできるワケないし実際に攻撃を食らう側なのは俺のほうなんですけどギャッパァァァァッ!?
(あーもうッ! ディアッ! ……いまので正真正銘MAGは売り切れよ。次にアタシと会えるのは、アンタがちゃんと休んで体力が回復してからね)
◇◆◇◆
全身が痛過ぎてマジぴえん。だが痛みを感じるということはちゃんと生きているという証拠である。マハラギオンを受け止めたあとにピクシーが咄嗟にディアで回復してくれたおかげだな。
ただ、さすがに余波はどうしようもなかったらしくLくんもCちゃんもちょいと離れたところに倒れている。でもすぐに起き上がったということはダメージ的には無事ということなのでヨシッ!
ほぼ間違いなく小言を言われるだろうが、まぁそれも生き延びたからこその──おや? 見慣れないトラックが何台もこっちに来るぞ?
日本帝国軍の所属を示す六弁桜があるから軍人さんたちのトラックなのだろうが、いつも俺たちが輸送される物より頑丈そうな見た目をしている。降りてきた軍人たちの服装も雰囲気が違うし。
助かった、と思いたいところだがぶっちゃけ怪しいという気持ちのほうが大きい。何故そう思うかって? そりゃここがメガテン世界だからです。誰かを疑うのに理由がいるかい?
「帝国軍? いまさら……いえ、助かったことには変わりませんね。あの! すみません! 怪我で動けない人がいるんです! 早く手当てを──うわッ!?」
「Lッ!? おい貴様らッ!! いったいなにをする──きゃッ!?」
ほらぁッ! なんかスプレーを顔にプシューってされとるがな! あっという間にパタリと倒れちゃったよ! 一応軍人たちが丁寧に受け止めてるから助かる見込みはゼロじゃないけどさぁ。
「この少年もそうかね?」
「はい、中佐殿。今回、これまで回収したDクラスの中でも特に純度の高い
俺の目の前まで歩いて近寄ってきた偉そうな軍人と、なにやら機械をポチポチ操作している軍人。いま生体マグネタイトってはっきり言ったよね? さすがに聞き逃さないよ?
「ん? なんだ、意識があるのか。生きることに意地汚いのは良いことだ、潔さを美徳とするのは実戦を知らん無能どもだけで充分だからな。命があることに感謝し、そして喜びたまえ。
ついでに頑張って化け物を退治したご褒美も与えてやろう。次に目が覚めたときにはキミも、キミの友人たちもCクラス帝国市民だ。番号ではない名前を名乗ることも許されるぞ、おめでとう」
「中佐殿、薬剤処理をしますので離れてください。……少し冷たいけど我慢してね。痛み止めと、気分を落ち着ける効果があるからゆっくり眠れるわ」
どうやら助けてくれるようだが、こうして薬で眠らされるあたりどこまで信用していい……の、やら……ぐぅ。
ゲームならここでようやくタイトルですかね。