メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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コマンダー:10

 落ち着け……クールになれ特務少尉……違ったわ、俺いま中尉だったわ……そう、こうして自分の間違いを冷静に自覚して正せる研ぎ澄まされた思考の持ち主になるのだ俺よ……。

 素数……素数を数えることで……つまり素数を数えるということは数字を数えるということだから……アレだ……お風呂でちゃんと100まで数えてから上がりましょう的な……精神的安定感を取り戻すための神聖な儀式……そう……サラリーマンの名刺交換のように……。

 

 

 よし。

 

 曹長、あのデカい目玉とは絶対に視線を合わせるな。自信がなければ周囲の警戒を頼む。

 

「……は、ハッ! 了解でありますッ!」

 

 

 返事が遅れたな。珍しい。

 

 軽口を叩くだけの余裕があるなら、と思ったが。さすがにここまで異常な雰囲気にあてられたら反応も鈍るか。

 

 

 さて……なるべく目玉の部分は見ないようにするとして、アレがどういった代物なのか落ち着いて観察しなければなるまい。メタ知識からマガツカと推定したものの、見た目が似ているからといってゲームと同じような役割を持っているとは限らないのだから。

 もしかしたらアレはマガツカじゃなくて常夏仕様にイメチェンしたバックベアード様がビーチチェア代わりに崩壊したビルに絡み付いて宇宙世紀のコロニーでバカンスを楽しんでいるだけの可能性だってある。悪魔だってオシャレして休暇を楽しみたい気分のときだってあるだろ。特にロキなんかはシリーズ途中からイメチェンしたせいで誰だお前ッ!? ってぐらいスマートになってるし。

 

 

 まずは、下方向から順番に。日本を舞台にした神話や伝承モチーフの存在ならば、大抵は地脈がどうとか、龍脈がこうとか、霊脈がそうとか、善悪問わず空間に作用するような現象には必ずエネルギーの供給源が何処かにあるのがお約束。

 ならばマガツカ(仮)だって電力なりマグネタイトなりエネルギーを吸収しているはずだが……うん、簡単に見付かったわ。ヨモツイクサの肉塊で作られているであろうクソデカ触手あるやん。しかもマガツカに近寄るにつれて植物っぽく変性してるというオマケもあるぞ。良く見たらマガツカが絡まってるビルも植物のツタっぽいなにかで覆われてんな? 

 

 肉塊……植物……ヒトならざるモノと化した少年が世話をしていた花……悪魔の力を制御しきれず肉体が崩れたテロリスト……宇宙要塞を貫いたマグネタイトを生成する大樹……そして、廃墟の中で草花が生い茂るところにマガツカ……ね。

 つまりどういうことだってばよ? ぼくなんにもしらないDくらすていこくしみんだからなにもわからないや! 確かに日本神話にゃ植物に関する神様も女神様も大勢いるし、特に女神様のほうはメガテンにも何人かご出演いただいているけどさぁ。悪魔の力を利用してテラフォーミングを試みたけど誰か余計なことやらかして失敗でもしたんか? 

 

 意味深に呟いてみたところで自称凡人のラノベ主人公みたいに小気味良くネタバレ連想ゲームなんかできるかアイツら誰も彼もそういえば〜からの記憶の引き出しがエグ過ぎんだろ天才どもがよぉ……。

 

 異常発見、ということで帰って報告するか? でも威力偵察という名目で隔離区域に入り込んでいるのだから、どの程度の脅威なのか確認するのが役目でもありまして。

 周囲のヨモツイクサの様子は……ふむ、ここまで戦ったザコと比べると動きが良いかもしれん。人型のヤツなんかグループ作って巡回してんのか? 移動速度はゆっくりだけど無秩序にウロウロしている感じはしない。移動と一時停止の繰り返しに、なんとなく規則性のようなものを感じる。

 

 これで赤いオーラでも纏ってればマガツカが召喚して巡回させている、って可能性もあるが……なんにせよ、ちょっかい出すにしても数が多いし、試すにしてもほかのメンバーが復帰してからだな。

 

 

 と、いうことで曹長。

 

 上官たちのご希望通り隔離区域の観光スポットは無事発見できたことだし、抜け駆けするなと怒られる前にトンズラするとしようか。イタズラするにしてもほかの4人を仲間外れにしたのでは楽しくないだろう? 

 

「積極的賛成であります、中尉殿。徐々にではありますが、なにやら空間全体の赤みが濃くなっているような気がしますし、あまり長居しても愉快なことは起こらんでしょう。

 幸いにして機器類は危険を報せてはおりませんが、便利な道具に頼るまでもなく離脱したほうが良いことぐらいは自分でも理解できます。まずは専門家であるコノミ伍長に相談するべきかと」

 

 

 そういえばそうだった。

 

 いまのパーティーメンバーには結界とかのスペシャリストである巫女さんのコノミ伍長がいるんだから、馬鹿の一つ覚えみたいにメタ知識に拘らずとも素直に仲間の……力を……頼って…………。

 

「? 中尉殿?」

 

 

 

 

 赤、暗い。

 

 

 暗すぎる。

 

 

 空間、壁、歪み? 

 

 

 ヤバい、まさか、マガツカ。

 

 

 目玉、こっちを見て。

 

 

 

 

『ニンゲンッ! 上ッ!』

 

 

 

 

 貯水塔の上。

 

 

 ヒトのカラダ。

 

 

 トリのハネ。

 

 

 

 

 

 

 ────フクロウのアタマッ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 曹長ッ! ラクカジャッ! 歯ァ食いしばれッ!! 

 

 

「────ッ!? 了解ッ!!」

 

 

 イッポンダタラッ! 

 

『タァァルカジャァァァァッ!』

 

 

 足りない。

 

 もっと。

 

 MAGコートから青い光が溢れるまで、マグネタイトを循環させて脚に力を込めろ俺ッ!! 

 

 

 翔べオラァッ!!!! 

 

 

「ぐぉぉぉぉッ!?!?」

『にゃぁぁぁッ!?!?』

 

 

 道路を挟んで向かい側の建物までカゲツ曹長を緊急避難ッ! ちゃんと強力な祝福は施されていないけど上質なMAGコートも着込んでるし大丈夫だろ。ケット・シー? ネコだからヘーキヘーキ。

 なぁに、取り敢えず障壁の外側まで逃がすことができたんだから上出来上出来。あとは自力で判断して動いてくれるさ。ここで熱血系の属性持ちだと仲間を見捨てるなんてッ! とか言い出してイロイロ台無しにするんだろうなぁ。

 

 

 

 

 ────ピクシーさんッ! 

 

『スクカジャ、スクカジャ、もいっちょスクカジャッ!』

 

 

 ベルトから、閃光衝撃グレネード。

 

 俺程度の判断力なら殺傷能力より足止め優先、この考えは間違いじゃなかった。こうして雑に使える。

 

 

 光、音、振動。

 

 眼帯を外す。

 

 

 スクカジャの効果は命中と回避の強化。

 

 しかしパラメータをプログラムで管理するゲームとは違うのだから、それを人体の機能に当てはめるのであれば反応速度と動体視力も強化されるはず。

 

 

 見える。

 

 怯んだな? 

 

 

 形がしっかりしているぶん、視力もあるのか。 

 

 

 まぁいい。

 

 

 お前、一応堕天使って扱いだったよな? 

 

 ならよぉ……ビルから落下するぐらいどうってことないよな? 一緒に紐無しバンジージャンプでも楽しもうぜ?

 

 なぁ、遠慮すんなよッ!! 

 

 

 抜刀? 

 

 んなヒマあるか。

 

 

 全身を循環するマグネタイトの勢い任せにタックル。

 

 とにかくコイツの存在をカゲツ曹長が認識する前に分断しないとマズい。

 

 

 あと、このままバカ正直に落下するのもマズい。

 

 

 イッポンダタラッ!! 

 

『ヒィィトォッ!! ウェイィィブルァァァァッ!!』

 

 

 小学生のころ、エレベーターが落下しても地面に激突する直前でジャンプすれば余裕じゃね? な〜んてアホなこと考えたりしたけど……まさか異世界転生した先でそれを実践することになるとは。

 スーパーヒーロー着地は腰を痛めるらしいので、どうせ誰もギャラリーはいないんだし地面を転がってもええやろ。格好悪くたっていい、生き残って立ち上がったヤツが一番偉い。危険への対処はローリングしか勝たん。

 

 

 さて、改めて敵さんの姿を確認しておこう。

 

 概ね堕天使アンドラス……のような、ナニか。腐ってる? いや、いろんなヨモツイクサの肉片を無理やり融合させた出来損ないの合成生物って感じだな。視力は生きているのか“視られている”という視線は感じるものの、そこには理性も知性も無さそうだ。

 赤黒い禍々しいオーラを纏っているのは強化されているからか、それともあのマガツカが産み出して操っているからなのか。どちらにせよプランD、いわゆるピンチです。腐敗アンドラスが両手と翼を広げたと思ったら、周囲のヨモツイクサたちもゲームで見覚えのある悪魔たちの姿に変化したし。案の定、目の前のアンドラスみたいに不完全でグチャっとしているけれど。

 

 

『んげぇ、キモチワルイ連中ね! でもここならアタシたちも普段より思いっきりスキルを使えそうだし、こんなヤツらまとめてサツリクしてやるんだからッ!』

 

『ケッ! あのトリアタマ野郎、気に入らねェなぁ……ッ! 自我もねぇ腐れかけの分際で、しっかりコッチを見下してやがる。だったらよぉ、ンな身の程知らずはオレ様がアタマごとキンキンに冷やして砕いてやるぜェッ!!』

 

『ウォォォォッ! 滾るゥゥゥゥッ! 滾るぞォォォォッ!!』

 

『たべほうだい? おなかいっぱい、うれしい……ッ!』

 

 

 あらヤダ、こっちのお仲魔さんたちもハッスルしてる? 4体同時に実体化してるのに負担はなんにも感じない。これもマガツカの影響なんだろうか? みんなが急に悪魔召喚に成功したことにも関係してる気がする。

 いっつも不利な状況で格上の相手を押し付けられるクソゲーばっかりやらされてたけどついに難易度調整のアプデ入ったのかな? オイオイ、数の暴力に対してこっちも仲魔を同時に召喚しても許されるとかイージーモードかよ勝ったなガハハッ! 

 

 

 よ〜し、そうとわかれば話は早い。マガツカの影響で普段の不定形よりもちゃんとした姿で固定されて赤いオーラに覆われた無限にポンポン産み出されるザコという名目の強化個体の群れが四方八方建物の上から物影から襲い掛かってくるのをどうにかしながら推定アンドラスらしき腐敗した悪魔が仲間殺しの不和の種をばら撒く能力を持っていることを警戒して俺を助けるために大急ぎでほかのメンバーを呼びに行ったであろうカゲツ曹長たちが戻ってくるまでにバステ付着だったりムド系統の即死だったりザン系統の範囲攻撃魔法スキルなんかを使ってくる前提でそれらを掻い潜り始末するだけの簡単なお仕事だッ!

 

 ところでマガツヒスキルを使うコマンドがどこにも表示されないんだけどこれもアプデの影響? 困るよ〜ユーザーインターフェースのバグはちゃんと修正してくれないと〜。

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