メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
これはゲームではない。
ならば俺の目的はなんだ?
生き残ることだ。
必要なら倒す。
必要なら狩る。
必要なら殺す。
つまり必要ないなら逃げてもオールオッケー☆
マガツカまでは距離があるから目の前の腐敗アンドラスを倒したところで破壊できるかはわからない。だが安全に逃げるためにはコイツを倒しておかないと仲間に後ろから刺されるかもしれない。なんならバステ系のスキルを使われれば仲魔だって正気を失う可能性があるかもしれない。
仮定ばっかりだが危険を伴う作業において“かもしれない”は大事だってそれ一番言われてるから。運転中に交差点でいきなり歩行者が飛び出すかもしれない、って早めにブレーキ踏んでおくヤツね。間違っても“赤信号になるけどイケるかもしれない”とかいう話ではない。つまりマガツカ破壊なんて目論むなってことだよ! よッ!
問題はフクロウ頭を含めて腐敗アクマたちを撮影しても大丈夫なのか? という部分だが────あ、そうか。でもリュウドウ様たちがシキガミの技を広めてくれたから別にいいのか。
ペルソナ知識もあってなんかそーゆーモノと受け入れ過ぎて詳しい仕組みを聞くのを忘れていたけれど、なんかシキガミみたいな実体を持つ敵対存在がいましたって普通に報告すりゃええやん。
やはり俺の思い込みによる早合点というだけでリュウドウ様は優秀だった件。疑ってすんませんでしたッ! でも俺が苦労してる理由の何割かはテメェが原因なのぜってぇ忘れねぇからなッ! ただの無能な働き者じゃなくて、行動力とカリスマ性のある理解力の足りないだけで有能ではある働き者はどうすれば良いんだろうね? とりま生き残って機会があったらハリセンでシバいとくかな……。
よし。方針決定。
まずは目の前のアンドラス(仮)をたたっ斬る。そういうことなんでぇ、ほかの皆さんはフクロウ頭はもちろん、あの赤いドレスを纏っているまんまるオメメがキュートな物体とは視線を合わせないようにね!
はい、ウェンディゴくんは舌打ちしないでくださ〜い。お前マガツカの影響か知らんけどマハブフじゃなくてマハブフーラを予備動作無しで撃てるようになってんだろ? そんなんで全員まとめて氷漬けにされたらそのまま全滅するだろうが。
俺?
多分、大丈夫だとミノタウロスが言っている。片目だと遠近感に支障が出るから眼帯を外したけど、瞳の奥に宇宙が創造されている影響なのかメンタル系のデバフは気合と根性である程度までなら耐えられそうだ。ザコじゃなく格上に睨まれたら? そんときは1D100+100で正気度ロールさせられるんじゃない? メガテンの格差ってマジでそんぐらいの理不尽は普通にしてくるだろ。
だが少なくとも目の前の腐敗アンドラスはそうではない。油断は禁物だがスクカジャの効果が残っているうちに有効打のひとつぐらいは入れておきたいところだ。もしくは、斬撃が有効打にならないという情報でも良い。
迂闊に仲魔をマガツカに近寄らせるワケにはいかない以上、位置取りというか役割分担的にピクシーさんたちは別行動になる。まぁそれを抜きにしてもあの目玉に背中を向けるのはやっぱり怖いし、俺が一番実体化がしっかりしている腐敗アンドラスと同時にマガツカの動向を警戒するほうが勝率は高い……と、いいな!
気合いを入れてッ!!
でも念の為、お口チャックでッ!! なんか飛沫とかうっかり飲み込んだら魔神ポンポンペイン様が御降臨なさるかもしれんし。
そぉぉぉぉいッ!!!!
…………。
アレ?
普通に斬れちゃったな……。
手応えは微妙だったけどスッパリ腕を一本やれたな? いやいや、いかにも強敵ですって雰囲気で真っ赤なオーラに包まれているのにそれはない。たぶん自己再生とかそういう────ホラきたぁぁぁぁッ! オーラがウネウネと伸びて斬り落とした腕を引っ掴んでドッキングしやがったよもぉぉぉぉんッ!
無限増殖ッ!
無限再生ッ!
考えるまでもなく人間だけが一方的に不利な持久戦。もしもコレと同じようなマガツカが陸軍管理側の区域にも存在するというのなら、学生さんとはいえ数百人のシキガミ使いによる偵察(突撃)は冗談抜きで有効打になる可能性が? リンドウ様なら普通にマガツカを叩き割りそうだし。
だがよそはよそ、ウチはウチ。他人の心配より自分の命を心配するのがディストピアの正しい歩き方ってモンよ。いや、それはどっちかっていうとポストアポカリプスの世界か。いま俺が置かれている状況的にはどっちも大して変わんねぇけど。建物の崩壊っぷりが1度ここで文明滅びました感出てるもんな。
ま、いいや。
とりま逃げんべ。
再生する相手に無策で殴り掛かってもムダに体力を消耗するだけだし、ここは逃げながら色々と試してみることにしよう。少なくともフラッシュバンが通用するのは確認済みなんだし、最悪そのへんの砂を掴んで顔面に叩き付けてやれば1秒ぐらい時間を稼げるんじゃね〜の?
さっそく適当な建物に飛び込んで、まずはマガツカの視線を切るところから始めてみよう。1匹目が腕を再生している間に、赤い風みたいなのが巻き起こって2匹目の腐敗アンドラスも出てきたし。攻撃を加えたことがトリガーだと無理ゲーになるので、ヤツに視認されていることがトリガーであることを祈るしかない。
しかしビルの中もそれはそれで危険が危ない。初見の建築物の構造なんて把握しているはずもなく、下手に動き回ると自分の位置を相手に教えるだけになり余計に追い込まれて不利になることもあり得るのが────あん? なんか自然と……なんとなく、建物全体の様子が把握できるぞ? なんなら俺を追ってきた2匹のアクマの位置もわかる気がする。
なんだコレ? 俺、知らない間にマッパーとか覚えたん? 地形の把握は重要だし、これはこれで便利だけどさぁ。どうせ魔法を使えるようになるならエンカウント抑制のエストマとか、今回みたいな逃げても良い場面で使えそうなトラフーリとかでも全然……。
あ、違った。
一瞬だけど、4本の腕で器用に腕組してドヤ顔してるミノタウロスの姿が見えたわ。
そんな……えぇ……? そーゆー権能が……そんな、迷宮の支配者としての特権みたいなことあるぅ? 限定された空間、あるいは人工物は己が入った瞬間から己の迷宮になります残念でした〜ww みたいな、神話に因んだルールの上書きみたいなことできんの? オマエの迷宮はオレのモノ、オレの迷宮はオレのモノッ! ってコト。
なんて頼りになるジャイアニズム、でも魔王ならそれぐらい傲慢でも許されるか。つまりコレで無様に敗走したらお仕置きだべ〜されるってことですね! おかしいな、ゲームを有利にするためのカードを1枚プレゼントしてもらえたと思ったらご一緒にゲームオーバーの条件が追加されちゃったゾイ☆ 対価? を支払えば力を貸してくれるだけ全然優しいから別にいいか。
そんで、腐敗アンドラスたちの動きは……うん、俺を見失っているっぽいな。身体の何割かがドロドロのスライムみたいになっているけど、それでも五感を頼りに周囲を把握している可能性が高い……と。ピクシーさんみたいに生体マグネタイトの反応を探ることができない? それとも、マガツカの視線を遮った効果で弱体化してるとか?
う〜ん、敵も味方もよーワカラン特殊ルールの押し付け合いが始まってしまったな。今日はそういう日か? 大体いつもギリギリの状況で一か八かの突撃だけで生き残ってきただけのモブキャラにそんな複雑な戦闘できるワケねーだろそーゆーのは荒木先生の作品でやっとけよぉ……。
仕方ねぇ。始まったからにはルールに従う以外の選択なんて俺にはない。ギリギリまでミニマム脳ミソを絞りに絞って知恵を出してみよう。まずは初手の動きからだな。
どうしてマガツカは“巡回しているヨモツイクサを作り変える”のでもなく“新たに赤い渦巻きから召喚する”のでもなく、俺と視線が交差した瞬間に────ピクシーさんとケット・シーの警戒を2枚ブチ抜いて