メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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グルーピング:1

 ごみ問題、あったじゃない? 

 

 燃えるゴミと燃えないゴミは、ちゃんと分別しないと良くないガスが出るってヤツ。意図的に黒煙を焚きたいな〜ってときにはむしろ混ざっているほうが好都合ってね。瓦礫が積まれたように重なって固まっている公園を発見できたのは幸運だった、まさか廃墟全体を燃やしたんでは違う意味でコロニーの危機になってしまう。

 効果のほどは“召喚されそうで召喚されない、ちょっとだけ召喚したマガツカの悪魔”といったところか。一応、赤い渦巻きは現れたもののタダでさえ不完全なヨモツイクサがよりボロボロの状態で召喚されただけ。召喚そのものは一瞬でも、MAGを練り上げるためには多少の時間が必要だったりするのだろうか。もしそうなら発煙筒ひとつで助かる命もあるかもしれない。くらましの玉って、そういうコト? 

 

 中途半端な召喚を試みるようなら大した相手じゃないな! なんてお気楽な考え方が臆病者の俺にできるとでも思っているのか! マガツカは人間を処理するための防衛システムである、と仮定すればその行動から想像できるロジックも変わってくる。

 もしかしたらヤツは見た目やMAGの反応から対象を認識・記憶して処理の優先順位を上げて行動パターンを変化させてくる可能性があるワケだ。俺を脅威と仮定してノーリスクだし不完全でも追撃を試しておくか、みたいな。これは別に不思議でもなんでもない、戦略シミュレーションゲームをしたことがあれば誰だって同じような判断をする場面があったはずだ。

 

 

 だがまぁ……それらはまだ俺の主観的なモノ、つまりは勝手な想像の域を出ていない。報告としてまとめる内容は誰が見ても同じ結論になるであろう客観的な事実でなければならない。分析と解析は情報屋の仕事であって、俺のほうから積極的にあーだこーだ口出しするのは褒められた行動ではないだろう。もちろん意見を求められれば喜んで協力するけどね。

 

 

 と、いうことで報告のお時間である。

 

 状況が状況だけに書類ではなく口頭で素早く。こういうときデジカメは実に便利だな。電子機器に不具合が起きたときに備えてフィルム式のカメラと両方備えておくのも大事だろうが、パパッとパソコンに繋げて簡単に中身を確認できるお手軽さは別枠だよ。

 

 

「これまた面妖な目玉だな。こういう代物は軍よりも帝都のオカルト屋のほうが詳しかろう。どう見ても普通のヨモツイクサではないと、まさに一目瞭然というものだ」

 

「生体マグネタイトの反応を感知されるものの、紅葉の巫女がシキガミを操り吸収することで無効化に成功せり……ですか。そこまで対処法を見つけて帰還してくれたのは素晴らしいですが、これはこれでマズいことになりますね」

 

「先日の異動騒ぎに紛れて十数名の巫女が海軍の所属となりましたが、それでも人数が足りません。まさか全員を個別に配属して24時間体制で任務に当たれ、などと頭の悪い命令を出すワケにはいきませんから」

 

「他の区画との情報共有の際に陸軍側に漏れても困る。シキガミ使いに栄光あれ、と意気軒昂となるのは確かだろうが」

 

「山猿どもがどう動くかはともかく、遮蔽物と距離を使えるなら隔離区域での部隊の展開もどうにかなるな。迂闊に近寄れないというのなら、技術屋どもに型落ちした巡洋艦を丸ごと一隻与えてしまえばいい。2日もすればそいつを素材にバラして喜んで愉快な玩具を仕立ててくれるだろう」

 

 

 間に合せのトラップで候補生たちを阿鼻叫喚に叩き落とした愉快な人たちに宇宙船を資材として与えちゃうの? でも以前デモニカスーツを世話してくれたときに、道具は誰が使ってもそれなりに使えるように〜って言ってたもんな。悪ノリはしても軍に所属する技術官としてのプライドが、局地的な運用しかできない一発屋みたいな兵器を許さないと信じよう。デモニカスーツにパイルバンカー波動砲みたいなトンデモ武装が追加されませんように。フリじゃねぇからな? 

 

 

「ご苦労だった特務中尉。イミナ中佐が便利使いするのも納得の働きだ。ならば少しは後ろに下げて休暇を与えてやりたいところではあるが、先日のバカ騒ぎの指揮能力を抜きにしても、小隊以下の任務遂行能力ならばキサマがこのコロニーにおける最高戦力だからな」

 

 ハッ! 万事巧く事が済んだ暁に閣下が小隊全員にハンバーグステーキライスセットなどをご馳走して下さるのであれば喜んで微力を尽くす所存でありますッ! 

 

「その図々しさは将帥級だな。いいだろう、なんなら白パンとビーフシチューも食わせてやる。喜んで戦え。ほかに確認しておきたいことはあるか? 戦闘に関わることであれば情報の扱いも大佐相当だからな、大抵の質問には答えてやる」

 

 では閣下、単純に疑問であったのですが……海軍がコロニー浄化作戦に頑なに否定的であることに理由などはありますのでしょうか? 

 

「あぁ、それなら実に簡単な話だ。同じようにヨモツイクサの肉塊に侵蝕された『サルタ』という名のコロニーがあった。あるとき、やんごとなき御身分の御方がそれらを一掃してやらんと意気込んで失敗した。軍人も民間人も大勢の犠牲を出して逃げ出したが、何故か避難先の立花山防衛ステーションが宇宙を漂う巨大な肉塊となった。なにか不明な点はあるか?」

 

 

 うげぇ。

 

 スペースホラーのお約束みたいなドタバタした血生臭い光景が頭に浮かんでくるぞ? そんだけ盛大に失敗してんなら海軍としては陸軍の意見に反対するのも当たり前だわ。

 

 

「そう眉を顰めるな。まだ話は終わってないぞ? なんなら、今この瞬間もな。立花山防衛ステーションからは現在も救難信号が出続けている。興味があるなら船を手配してやろうか?

 老人が呟いているようにも、赤子が泣き叫んでいるようにも、男の怒号にも女の悲鳴に聞こえる混濁した音のようで、しかし確かに救助を求めるヒトの声が受信できるぞ。

 そして、その救難信号を受けてこれまたやんごとなき────面倒だな、あぁそうだ、キサマも安易に想像できるだろうが八葉家の当主候補のひとりとソレに私兵の如く媚び諂っていた軍人擬きが動いた。

 当時、ようやく巡洋艦を任されたばかりの己も巻き込まれたが……第3陣の着岸、いや接岸を見守っていたあたりか? 状況が急激に悪化したのは。それから助けてくれ、自分たちはまだ人間なんだと呼び掛けてくるヒトならざるモノになり始めた味方の船を撃てというのが艦長就任の最初の戦闘命令だった」

 

 

 あいやー。

 

 今後のために海軍からチョロっと情報を引き出しておけば、うっかり失言しても誤魔化せるかな〜と。そんな軽い気持ちで藪を突いたらヘビどころじゃないモノが出てきたあるよー。

 

 なにが困るって、その話を聞かされても「そんなことが!?」とはならずに「それぐらいのことならできそうな悪魔そこそこいるよな……」となっちゃうのが困る。悪魔そのものがいなくても、例えば同化したメシテロ肉天だったりとか、あるいはシキガミが暴走したりとか。

 

 

「さすがに懲りたのか、いまとなっては立花山防衛ステーションには誰も近付かん。しかし残念ながら失敗談を誰かに知られるのは恥ずかしかったのだろう、こうして歴史は繰り返されようとしている。

 もっとも、今回はキサマが隔離区域からしっかり情報を持ち帰ってくれたお陰でいくらかはマシな地獄になりそうで己も安心だ。ほかに聞きたいことは?」

 

 

 ほかに、かぁ。

 

 

 ……陸軍の、幼年軍学校の候補生たちはどれだけ死にましたか? 

 

「む……。ひよっ子どもが気になるか」

 

 はい、閣下。

 

 拳骨をくれてやった相手でも、それならばそれなりに情のひとつぐらいは残ります。

 あれからまだ数日でありますので、さすがに全滅するほどの被害は出ていないと思いたいところでありますが。

 

「そうか。キサマも任務との向き合い方に比べて青臭い男だな。安心しろ、少なくともこちらで掴んでいる情報では陸のひよっ子どもは全員生きている」

 

 

 おぉ……ッ! 

 

 やはり数の暴力は偉大……ッ! 原始人だってマンモスを囲んで棒で叩いて狩猟したんだ、宇宙世紀でオカルトパワーまで使えるのであれば簡単には死にはしないか。あの演習が少しでも役に立ってくれているのなら、俺もリンドウ様にボコられた甲斐があるってモンで────。

 

 

「まぁ、当然だな。戦闘どころか出立すらしていないのだから死人など出るはずがない。いまは教官たちの熱心な指導のもと、壮行式に向けて行進の練習などに励んでいる。区画内の民間人も自由に観覧できるよう計画しているそうだから、さぞかし賑やかな催しになるだろう」

 

 

 …………。

 

 …………。

 

 …………。

 

 

 …………時間は、稼げているなッ! ヨシッ!




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