メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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グルーピング:2

「ツカサ臨時戦闘員以下30名、6人編成5小隊はこれよりF8492特務中尉殿の指揮下に入ります。未熟者ではありますが、少しでもお役に立てるよう死に物狂いで生き残るために戦う所存であります。そして、こちらはリュウドウ様からです」

 

 

 昨日の今日で色々と言いたいことはあるが、まずは委員長っぽい三つ編みちゃんから渡された手紙の内容を確認しよう。

 

 なになに……? いくらなんでも状況がワケワカメ過ぎるので式典の準備より戦闘の準備を優先しようぜ! と提案したがやんわりと周囲から反対された。なんか胡散臭いと思って個人的に動いたら陸軍内部でも意見が真っ二つに割れて対立してた。イベント開催で盛り上がっているのは御三家に良く尽くしてくれている連中だが、さすがに止めねばと思い蒼葉家の当主代行に会いに行ったが面会を頑なに拒否られた。なんかヤバそうなので、せめて正気を保ってる生徒たちだけでもどうにかしたくてそっちに送ったからよろしく。あとラムネ水はサガミ元学校長とその部下たちからの餞別だよ……と。

 

 ……なるほど? 

 

 

 ツカサ臨時戦闘員。一応確認するがな? この状況の、このタイミングで俺の指揮下に入れば、リンドウ様を含めたそれなりの立場の連中から、あまり宜しくない感情を向けられることになるのは理解しているな? 

 

「はい、中尉殿。私たちはそれを承知の上でリュウドウ様の提案を受け入れました。ハッキリと申し上げますが、いまの私たちは教官の方々を信用していません。先の演習で、シキガミという力を与えられながら、あれだけ一方的に弄ばれたにも関わらず……なんの根拠もなく勝利を疑わない大人の言う事など信用できるはずがありません」

 

 

 人物に対する信用なんて関係なく命令を機能させるために階級があるんだけど、という説明は空気が読めていないのでここでは飲み込んでおこう。全員、ちゃんと緊張感は持っているようだし。楽しい学園生活から一転して危険な世界に叩き込まれたことぐらいは自覚しているのだろう。

 可哀想に、せっかく良い夢を見せられて今日まで楽しく生きていたのに強制的に叩き起こされちゃったねぇ? この場合、演習という形で悪い夢を叩き付けたのは俺なんだろうけど。なぁに、真・女神転生のカオスヒーローだって悪い夢だと思ったけどやっぱ良い夢だったわ言いながら最期を迎えたから大丈夫だって。

 

 あのセリフ、オープニングとの繋がりも含めて好きなんだよねぇ〜。オザワへの復讐もキッチリ果たしたことを含めても、あの世界で救われた数少ないキャラクターではなかろうか? ふむ……上から提示された秩序へ反抗して生きる道を探していると思えば、この場にいる30人もこの世界のカオスヒーローといっても過言では……さすがに過言か? 

 だいたい、こんなしょーもない連想ゲームでこやつらを自由を求めるカオスヒーロー認定しちゃったら、向こうに残った数百人の候補生たちが秩序に従うロウヒーロー扱いになっちゃうかもじゃん。国家の上層部という名の神に捧げられし魂、しかしその実態は彼らの信じるモノとは全く異なる目的のための生け贄に過ぎなかった。う〜ん、縁起チョー悪〜い。

 

 

 さ、アホみたいな妄想してないでひよっ子改めニュービーどもの世話をしてやらねば。リュウドウ様もやる気になったのは別にいいんだけど、ひとりで裏側を探り始めたり意味深な内容の手紙を託して学生ごと送り付けてきたりとメガテン関係無しにフラグ建築しまくってるからな。最悪、こいつらの命と引き換えに向こうの区画丸ごと見捨てることになるかもしれん。

 だいたいさぁ、ここまで露骨にやられたらさぁ、いくら察しの悪い一般人の俺でも考えちゃうよ。どうせリンドウ様の周囲か背後だかに本国か帝国魔導院あたりから誰かしら送り込まれてんだろ? シキガミ使いがこの世界のマガツカ討伐に有効だってんなら、なんとしてでもコロニー浄化作戦は強行したいもんな? たぶん、マガツカの先になにかあるんじゃないの? 自己評価だけは高い権力者にとっては垂涎の、そして大多数の人類にとっては嬉しくない置き土産みたいなヤツが。

 

 

 虎穴に入らずんば虎子を得ず、となるか? 

 

 それとも泰山鳴動して鼠一匹、となるか? 

 

 

 どちらに転んでも迷惑野郎どもの後始末だったり尻拭いを押し付けられることになるんだろうなぁ〜。もしも敵対する機会があれば奥歯も全部折れるまでブン殴ってやろう。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 こうも気軽に人員の異動があっては紅茶好きの魔術師提督閣下から軍の規律や規則をなんだと思っているんだとお叱りが飛んできそうだが、それは俺のような現場の人間が考えることではなくイミナ中佐のように上に立つ人間が考えること。報告ついでにリュウドウ様からの秘密の手紙も一緒に提出した時点で俺は俺の責任を果たしたことになるから気楽なものだ。

 

 

「また人事部の人間から苦情が出るだろうな。それで、アレをどう活用するつもりかね? その顔、なにか思惑があって必要になる物資を強請りにきたのだろう? いい加減私も学習したよ」

 

 はい、中佐殿。自分は遊撃扱いで独自の判断で動いても良いということでありましたので、本隊が手前の目玉と睨み合いをしている横を通り抜けて奥地の強行偵察をしながら部下どもを臨時ではない戦闘員を名乗れるよう強制的に叩き上げるつもりであります。いまのままでは逃げることすらままならないかもしれませんので。

 

「上官の前で堂々と敵前逃亡を仄めかす部下はキミが初めてだよ特務中尉。そこは嘘でも海軍の勝利に貢献してみせます、ぐらいのこと言って私を安心させてくれても良いとは思わんかね?」

 

 はい、いいえ中佐殿。そのような大言壮語など口が裂けても申し上げるワケにはいきません。なにせ自分はCクラス帝国市民の市民権を得てから今日まで、ほぼ全ての任務において失敗と敗走ばかりを続けておりますので。中佐殿とのご縁の始まりも懲罰房送りでありますからな! じゃあなんで俺は昇進繰り返してんだよおかしいだろ。

 

 

「…………ふむ。言われてみればその通りだな。よかろう、三十余名による浸透作戦を私の名前で許可する。今回も見事に逃げ帰ってみせたまえ。だがキミなら理解しているだろうが、支援はもちろん補給なども期待できないことを忘れるな」

 

 

 そもそも補給うんぬんどころか撤退路も鉄火場になってる可能性あるけどな。だが壮行式とかいう期間限定イベントの間に部隊のレベル上げを完了しておかないと死人が出る。前回の失敗談を聞かされてもリンドウ様率いるシキガミ部隊の活躍を期待するほど楽観的にはなれない。

 だから、イミナ中佐から36人ぶんのデモニカスーツの使用許可をもらう必要があったんですね。いつもの技術屋の兄ちゃんたちに安くてもいいから気密性ぐらいは信用できるヤツをしこたま用意してくれと頼んだら、防御力はそのままにちょっとだけ運動性を改善した物を景気よくドバァ〜と放出してくれた。あぁ〜、頼りになるぜ……ッ! 

 

 最初は新しい装備に少しソワソワしていた学徒、じゃない候補生……でもねぇ、部下たちね。そう、部下たちも迂闊にヘルメットを外して呼吸器系が損傷したら大変なことになるといった説明を受けて表情が引き締まっている。これで必要とはいえ有害物質が漂っているのを承知でヘルメット外して大きな声出してた奴がお前らの部隊長だよとカミングアウトしたら熱心に安全性について説明してくれている人の立場が無いな。

 

 

「……中尉殿の頼みだから用意しますけど。まぁ、命令ですし当たり前ではありますが。ですが、本来ならばまだ訓練が必要な連中を敵地の奥に送り込むための準備なんてものは面白くないですね」

 

 

 それをD民出身の俺に言われても困るというか。こちとらハンドガンとナイフを持たされてさぁ逝ってこいからスタートしてるもので。

 この“Dクラス帝国市民は使い捨てにされるのが普通の認識”なところはしっかりディストピアしてるのに、なんでときどき管理の甘いバカが誕生してるんだろうね? 

 

 

「どうせここまで派手な騒ぎになっているなら、噂の粛清部隊なんかも出てくるかもしれませんね。……あれ、中尉殿はご存知ないんですか? 帝国守護役と言われている八葉家ですが、実は表沙汰にされていない九番目の血族がいるらしい、って話ですよ。

 なんでも、その一族ってのがあくまで“日本帝国への忠義”で動く連中の集まりってことでしてね。必要であれば八葉家の人間だって、なんなら国家運営にとって不利益となるなら帝族の血縁者だって容赦しないとか。陛下の御身内まで切るって時点で眉唾モンの話ですけど、だからこそ面白おかしく粛清部隊がいるぞと噂になったってワケですね」

 

 

 そんな、目的のためなら誰が相手でも経験値にしてやるぜって頭がニュートラル極まってるような奴がこの世界には存在するのか……怖いな〜、近寄らんとこ。

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