メガテニストはディストピアでもヘコたれない。 作:はめるん用
とにかく走り、とにかく叫ぶ。
コロニーの住人が変化したであろうゾンビもどきは犬型クリーチャーよりもさらに移動能力に乏しいので囲まれる心配は少ないが、ほかのブタウロスどもまで吐き出しているので単純に数の暴力がエグい。
ちなみに逃げ遅れていたD民のなかには案の定魔法の力に目覚めてそうなヤツがいるようだ。相変わらず俺にはMAGの反応というものがよくわからないが、ピクシー的には該当者の生命力は目立つので探る必要すらないのだとか。
幸運だったのは、壁の上にいた軍人たちが迫り来る恐怖に負けてオークもどきに銃を撃ってくれたことだろう。
アイツらの意識は逃げる俺たちのほうに集中していたし、息を潜めてジッとしていればやり過ごすこともできたかもしれないのに。
なまじ、まともな武器を持っているせいで逆に我慢できなかったのかな? なんかそんな話を聞いたことがある。武器があると逃げるよりつい応戦してしまうとかなんとか。
ま、理由や事情なんてどうでもいい。大事なのは帝国軍人の皆さんが俺たちを逃がすため、オークもどきと勇敢に戦ってくれているという事実だ。
おかげさまで心にいくらかの余裕が生まれる。そうなると周囲を見渡すぐらいのこともできるようになる。
そして遠くを見れば離れた場所にあるほかの基地でも土煙やら火の手やらがチラチラ見えていることにも気付けるっていうふざけんなマジかよオイ別の基地からの増援とか普通に期待してたんだぞこっちは。
(ニンゲンッ! なんかMAGのカタマリ吐き出そうとしてるッ!!)
よっしゃ、俺の鮮やかなローリングを見ろッ! 回避よーしッ! それで、いったいなにが……あ。扉がグジュグジュに腐蝕してドロドロになってらぁ。これ直撃したら絶対に助からないヤツですねわかりたくなかったよ! よッ!
◇◆◇◆
「撃てッ! 撃てぇぇッ!!」
「なんでよッ!? 戦うのはDクラスの役目なんでしょ! 私たちは見てるだけでいいって説明してたじゃない!!」
「言ってる場合かよッ! 死にたくなかったら戦うしかねぇんだ──ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!? うでがぁ、おれのうでがぁぁぁぁッ!?」
やっぱりダメみたいですね。軍隊が活躍できるのは人間が相手のときぐらいなんだって、ハッキリわかんだね。
軍人の皆さんが命という名の盾になってくれてるおかげで息を整える余裕ができたのはありがたい。どれだけ身体能力が強化されても疲れるものは疲れるからな。
銃声と悲鳴で基地の中は酷いことになってる。いまさらグロ物件で胃の中身がひっくり返るようなことにはならないが、別に長く留まりたいとも思ってないので早々に逃げ出したいのだが……反対側の扉も閉じられてんだよなぁ。
お? とかなんとか言ってたら開いたわ。あーあ、逃げ出そうとする軍人たちの醜い争いが起きてらぁ。まともな指揮官がいないのか、それとも指揮官クラスの人間でさえも戦闘が発生する可能性をまったく考えていなかったのか。
味方であるはずのトラックに磨り潰されている連中に同情しないこともないが、他人の手助けなんてしている場合じゃないのだ。この拠点が足止めとして期待できなくなった以上、なんらかの手を打たないとD民たちが逃げ切れんぞ。
……あ。あんなところにいーもんもんじゃんじょん! ピクシー、俺が銃を撃つのに合わせてドラム缶のところにジオを頼むッ!
(オッケー!)
さぁて、上手いこと期待に応えてくれよ──しゃあッ! 化け物相手に火力が足りないときはオブジェクト破壊に限るぜッ!
とにかく派手に爆発起こして巻き込めそうなヤツは片っ端から吹き飛ばそう。使い方のわからない、投げ捨てられてる火炎放射器とかも燃料タンク撃てば役目果たしてくれるでしょ。
ヒャッハー! 汚物は消毒だ、ブタはまとめて丸焼きだ~ッ!!
よし、逃げるか。
たまたま目論み通りに事が運んでいるけれど、これは幸運が重なったから上手くいってるだけだ。俺自身の能力がオークもどきに対して全て劣っているという事実はなにひとつ変わっていない。
自惚れ、ダメゼッタイ! ここで「もしかしてこのまま戦えば勝てるんじゃね? 」とか調子にのったら100パーセント負けるので必ず逃走を選びましょう。
文字通り煙りに巻いてスタコラサッサだぜぇ~。ってなんか一匹だけ無傷で追いかけてくるヤツおりゅぅぅぅぅッ!?
(アイツ、もしかしたらブタ連中のボスかも! ほかのとくらべて体の中に蓄えてるMAGの量がスゴく多い!)
ボスキャラ集団のボスキャラ、ってコトォ!?
あ、やべぇww普通に追い付かれたww
強化個体であるブタの親玉、略してブタ玉野郎は素早さだけじゃなく耐久力も高そうだ。ほかの養殖たちは爆発と延焼で部位破壊が起きて悶えているのに、ブタ玉は傷ひとつ付いて……よく見たらお尻の辺りに鉄板みたいなの刺さってんな。
強そうに見えるボスだって、ダメージが通るときは通るもんなんだなぁ。再生する様子もなく体液っぽいものが流れ出てるし、無敵ってワケではなさそうだな。これで物理反射とか持ってたらガチ泣きしてたぞ。
さて、ピクシーさんや。
ジオンガとか、どう?
(ディアの治療やスクカジャの補助がなくてもいいなら2回、使ったあとにアンタが気絶しちゃってもいいなら3回はイケるわよ)
この状況で気絶付与とかそれもう即死判定が直撃するのと変わらねーだろ。ゲーム的な解釈をするならMPが枯渇すると行動不能になるってことか?
ここは少しでも前向きに考えてみるとしよう。とりあえず2回は使えるのだ。一方的にブチ殺されるかもしれない相手に、2回も感電させて逃げを狙うチャンスがあると思えば絶望するほどのことじゃない。
ケチってジオを使う手もあるっちゃあるがなぁ……ゲームならシステムって保証があるからいいけど、この図体の相手に効くかな?
戦闘能力というか、魔力に大きく差があれば有効かもしれんけど。いまのはジオダインではない、ジオだ……みたいに。
とにかく焦らず落ち着いて、敵の攻撃を丁寧に回避してから反撃を狙うことにしよう。げっぷ玉みたいなヤツにさえ気を付ければ必ず勝機はあると思い込もう!
さぁこいブタ玉野郎ッ! ソースたっぷりマヨネーズもマシマシに仕上げて美味しく料理してやるぜッ! でもやっぱり怖いモンは怖いぜぇッ!!
「衝撃よ、彼を護れッ!」
「火炎よ、ヤツを焼き殺せッ!」
ファッ!?
魔法攻撃……だと……? まさか!?
「その反応。私たちのこの力に驚いた、というワケではなさそうだな。それにL、彼だけではなく貴方にも聞きたいことができてしまったよ」
「それはお互い様でしょう? しかしまずは生き延びることが先決です。僕たちに逃げろと言いながら危険を引き受けた誰かさんへのお説教も必要ですからね!」
出会って間もない他人を助けるためにわざわざ地獄に飛び込んでくる。これはふたりとも『善』ですね間違いない。
しかも秘密にしておきたかったであろう魔法まで使ってくれちゃって。泣くぞ? 肉体は若くても中身はオッサンなんだ、こういうことされると簡単に泣いちゃうぞ?
よし、このふたりが協力してくれるなら逃げるための時間を稼ぐのも難しくは──。
「さて……炎を生み出す力を得たのはいいが、ザコばかりを相手にしていたから丁度物足りなく思っていてな。これほどの大物であれば本気を試すだけの価値があるというものだ」
え、ちょっと。
「仲間たちの体力も限界ですからね。軍人たちが逃げてしまった以上、ここでこのクリーチャーを倒さなければ僕たちも仲間たちも全員殺されてしまうでしょう。いわゆる正念場、というものですね」
その理屈は正しいけどたまには間違えても許されると思うよ?
(気持ちはわかるけど諦めなさいよ。アタシもできるだけガンバッてサポートするから、アンタも一生懸命戦うの! ホラッ、こういうときにカッコいいところ見せてくれるのがニンゲンの男の子なんでしょッ!)
カッコ悪くてもいいから風になっていますぐ逃げたい……ッ!!
いただいた感想はありがたく読ませてもらっています。
励みになるのはもちろんですが、メガテンやペルソナを知っている人たちに楽しんでもらえるのはやはり嬉しいですね!
一応、原作に女神転生を選んでいますが、タグにクロスオーバーがあるように結構好き勝手に書いてます。なので読者の皆さまも自由な視点・自由な解釈で(運営さんに怒られない範囲で)好き勝手に感想を書いてもらって大丈夫です。
面白そうな発想やネタがあれば作品に組み込めますし。
(カス作者)