メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

7 / 129
プロローグ:7

 逆に考えるんだ。トラブルに巻き込まれちゃってもいいさ、と。

 

 どうせこの先何度も何度もうんざりするほど厄介な場面に遭遇するのはわかりきっている。何故ならこの世界がメガテン色だからだ。

 ならばここは逃げるではなく、むしろトラブルに首を突っ込んで勇気と度胸のパラメーターを伸ばすチャンスだと考えればいい。

 

 良く言うじゃない、ピンチはチャンスだって! 

 

 ンなワケねぇだろピンチはどこまでいってもピンチに決まってんじゃねぇか。それをチャンスに変えられるのはよっぽど才能に恵まれてるか積み重ねてきた努力と経験があるヤツだけだっつの。

 こちとら転生してから12年は施設で申し訳程度の教育を受けたあとそのままハンドガンとナイフを持たされて化け物退治の日々やぞ? 平和な日本でサラリーマンとして生活してたときの知識や経験なんぞクソの役にも立たねぇわ。

 

 

 ふぅ、心の中で取り乱してしまった。

 

 

 実際問題、ここで見て見ぬふりして逃げたところで得られるものはなにもない。せっかく新しい情報が手に入るチャンスに巡り会えたんだから、冗談抜きでここはなけなしの勇気を振り絞る場面だろう。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「ちょうどいい。このまま私と貴方とで睨み合いを続けても時間を無駄にするだけ。ここは第3者である彼に判断してもらうことにしよう。あぁ、提案したのは私だからな。公平を期すために貴方から状況を説明するといい」

 

「……わかりました。僕と貴女だけでは平行線のままタイムリミットになりかねませんし、その提案を受け入れましょう。──申し訳ありません、急にトラブルに巻き込んでしまって。のちほど必ずお詫びはしますので、少しだけご協力をお願いできませんか?」

 

 初対面で自己紹介よりも先に裁判官のマネを頼まれるとは思わなかったわ。敵意を向けられるよりは100倍まともな結果ではあるけれど。

 

 曰く、クリーチャーに襲われて死にかけている少年をツンツンちゃんが発見した。かなりの出血量から助かる見込みは無いと判断し、生きたまま食われたり長く苦しむのも哀れだと思いオヤスミナサイをプレゼントしたそうな。

 それを見ていた優等生くんが物資を奪うために撃ったと勘違いして声をかけた。強盗の誤解は解けたものの、もしかしたら助けることができたかもしれないじゃないかとお説教を始めたらしい。

 

 なーほーね? 実にわかりやすい対立だな。

 

 これを第3者として公平に判断してくれとか無理難題にもほどがあるだろ。救助や治療が間に合ったかもしれないし間に合わなかったかもしれない、なんて議論を決着させるとか無理ゲー過ぎると思うんですが。

 しかもふたり揃って中学生とかその辺の年齢っていう難易度の高さよ。年齢的にも環境的にも視野を広げる余裕なんて無かっただろうし、お互いに自分の信じる正論を振りかざしての殴り合いだぜ? こんなん丸く収めるとかムリだべさ。

 

 

 仕方ない。ここはそれぞれの主張が客観的にはどう評価されるのかを知ってもらい、あとは自分たちでじっくり考えてもらうよう仕向けるとしよう。

 

 

 さて、優等生くん。消え行く命を救いたいという心構えは立派だけれど、現場にいなかった人間がすでに終わったことに対して後出しで文句を言うのは無責任だと思わないか? なにせその場にいなかったんだから、いくらでも仮定を並べることができちゃうだろう? 

 

「それは……」

 

 

 そして、ツンツンちゃん。感情に流されないで冷静な判断と対処ができる人間は世の中に必要不可欠だと俺も思うけど、自分の判断に間違いはないと可能性を切り捨てるのも考えものだよ。もしもキミが助けを求める側になったとき、善意からキミの主張を無視して俺の判断で処理しても受け入れられるかい? 

 

「む……」

 

 

 別にそれぞれの考え方を曲げろとは言わないし、ムリに仲直りしろとも言わないさ。でも、自分と違う主義主張の人もいるってことぐらいは受け入れても損はないんじゃないかな。

 

「「…………」」

 

 

 

 

 よし、なんとか誤魔化せたな!

 

 誰よりもなによりも俺の発言こそが一番飛び抜けて卑怯で無責任で問題しかないワケだが、冷静さに欠いたいまのふたりであれば雰囲気で押し切ることなど容易いことよ……ッ! どうだい? 大人って汚いだろう? 

 

「……私は自分の判断が間違いだとは思わない。だが貴方の主張を否定したことについては謝罪しよう。すぐに手当てをしていれば、あるいは協力者を探そうとしていれば、貴方と合流して彼を助けることができたかもしれない」

 

「いえ、僕のほうこそ詳しい状況もわからないくせに、貴女を責めるような言い方をしてしまったことを謝らせてください。それに、ここから拠点までは距離がありますし、怪我人を運ぶ最中に化け物たちに襲われることだってあるでしょう。リスクを考えない理想論ばかりを押し付けられるなんて、誰だって嫌に決まってます」

 

 スゲェッ!? ちゃんとお互いにゴメンナサイして仲直りしてるぞッ!! 俺が中学生のときに同じことができたかって言われたら絶対ムリだぞこんなん。これ俺が介入しなくても普通に解決できてたんじゃね? 

 

 ま、なにはともあれ流血沙汰にならずに済んでよかったよかった。もうね、俺の背中は冷や汗でビッショビショなんだわ。

 なんでかって? そりゃメガテン世界で思想が対立してる場面に立ち会うとか完璧にダメなほうのフラグだからだよッ!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。