メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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プロローグ:4

 今日もいつものように謎の植物に支配された廃墟に出勤し。

 

 今日もいつものように謎の生物を倒して結晶体を確保する。

 

 

 いつもと違う部分があるとすれば、取り出したエネルギー結晶体の大きさが露骨にデカイことぐらいなものだ。

 見慣れたピンポン玉サイズではなく野球のボールぐらい大きく、しかも中に人間のようなシルエットが見えるというオマケ付きである。

 

 これは……割れ、ということか?

 

 いやいやいやいやまてまてまてまて。クリーチャーの中から出てきた代物やぞ? 割った瞬間エイリアンの映画みたいに顔に飛び付いてきて卵を生み付けられる可能性だってあるんだぞ? それを取り敢えず割ってみるとかお前、ゲーム脳かよ。

 だが、しかし。これを軍に納品するのは惜しいという気持ちもある。3年間も化け物退治を続けてきて初めて起きた変化なのだ、これに期待したくなったって仕方ないじゃないか。

 

 …………。

 

 よし、割ろう。

 

 この程度でビビっているようじゃあ、この先もずっと番号で管理されて生きることになる。エネルギー結晶体を食べることで身体能力は向上したが、リスクを恐れて決断できないままでは宝の持ち腐れだ。

 どうせ1度は死んでるんだ、ここでもう一度死ぬことになったとしても悔やむようなことじゃ……悔やむようなことじゃ……悔しいに決まってんだルルォッ!! 

 

 あ~ッ!! クソッ、なんで俺はただ転生しただけなんだよッ! せめてもう少しマシな世界とかさぁ、ファンタジーとかにしてくれよホントにさぁッ! この世界に神様ってヤツはいねェのかよ~ッ!! 

 

 ふぅ、ちょっとスッキリ。

 

 さて、気を取り直して……というか覚悟を決めて、この中身入りエネルギー結晶体をカチ割ってみるとしようか。

 

 男は度胸、なんでもやってみるもんだ。結果としての良し悪しを語る前に、自分の未来に関わる決断すら出来ないようではお話にならんだろ。

 俺はただ生きたいんじゃない。幸せじゃなくてもいいから、せめて納得の出来る生き方をしたいんだ。偉そうにしてるヤツに言われるがまま流されるのは1度目の人生で充分に味わったっての。

 

 

 ……んで。どうやって割るかな、コレ。思いっきり握り締めたらイケるか? どれどれ……お……? ピキッていったな。よし、中身を潰さないように慎重に力を込めて……いい感じにパリパリと割れてきた──うぉ、まぶしッ!? 

 これは……小人? いや、どちらかといえば妖精か? なんだか朧気というかノイズが走ってるような、でもこのシルエットは見覚えがあるような気が……あぁ、そうか。アレにそっくりなんだ。

 

 

 

 

 

 

 女神転生のピクシーだな! 

 

 

 

 

 

 

「ピクシー……ピクシー……? そっか、それがアタシの名前なんだ……。アタシはピクシーっていうんだね」

 

 は? 声? 

 

 ってか、なんか輪郭がハッキリしてきて──はぃぃぃぃッ!? 

 

「んん~ッ! なんだかとっても長い間眠ってたような気もするし、初めて目が覚めたような不思議な感覚がするわ。それで? アンタがアタシを呼んだワケ?」

 

 ナンテコッタイ。女神転生シリーズはもちろんペルソナシリーズでもお馴染み、最初期の仲間にして仲魔の定番である妖精・ピクシーがググッと背伸びをして俺を見ているわよ。

 いや、呼んだっていうか……呼んだといえば呼んだのか? というか、お前は……悪魔、なのか? しかも俺が知っているピクシーそのまんまとか……えぇ? 

 

「ナニ言ってんの? アンタがアタシをピクシーって呼んだんでしょ? だからアタシは()()()()()()()()()()()()()()()()()()。悪魔かどうかって話は……うぅ~ん? なんだか知っているような気もするし、知らないような気もするわ。でも……そう呼ばれるのは、イヤじゃないかもしれない」

 

 悪魔じゃない? いや、自分が悪魔かどうかわからないのか? でも、だったらこのピクシーは何処から来たんだって話になるよな。

 

 なぁピクシー。お前さん、魔界って呼ばれてる世界は知ってるか? 

 

「マカイ? まかい、魔界……。ゴメン、ちょっとわかんないかも。ただ、なんだかとっても懐かしいような気がする。すごく、大切なことを忘れているみたいな感じ……」

 

 俺が人間だから遊ばれている、って雰囲気じゃないことぐらいはわかる。本気で知らないというか、懐かしいって感想が出てくるということは覚えていないって感覚のほうが近いのだろうか? 

 試しに有名どころの悪魔の名前を、女神転生の世界で魔王と呼ばれるクラスのヤツを聞いてみるのも……いや、危ないな。ここが本当に女神転生の世界ならば名前を口にしただけで殺されるかもしれん。

 

 ルイ・サイファーこと大魔王ルシファー様ならワンチャン笑って許してくれそうな気もするけど。こう、君のような只の人間が私のことを知ってくれているとは光栄だね~みたいな? 

 そのあとにアレよ。魔王の名は軽々しく口にしないほうがいいって釘は刺されるかもしれないが、閣下なら不敬だとか言って問答無用で殺しに来ることはないハズだ。なんなら転生者である俺のこと普通に把握してそうだし。

 

 

 ……いかん、落ち着け俺。急展開に頭がついていけなくて混乱してるぞ。目の前にいるピクシーのことすら把握できてないのに大魔王のこと気にしてる場合じゃないだろ。

 

 

 え~と、まぁ、なんだ……。お互い初めましてってコトで、せっかくだし一緒にクッキーでも食べるか? 俺たち人間が食べるお菓子だから、お前さんが食べて美味しいかどうかはわからないけど。

 

「……あのねぇニンゲン? いくらアタシが弱い悪魔だからってね、さすがにクッキーぐらいは知ってるわよ。ま、いいわ。アンタがどうしてもアタシと一緒に食べたいっていうなら付き合ってあげる。どう? アタシ優しいでしょ♪」

 

 悪魔かどうかわからないし魔界のことも覚えてないのにクッキーのことは知っとるんかい。ますます謎過ぎんだろ。

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