メガテニストはディストピアでもヘコたれない。   作:はめるん用

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プロローグ:2

 バキバキという破砕音、そしてニチャニチャという粘着質な音。

 

 今日もお仕事頑張るぞと気合いを入れて廃墟を進んでみたところ、お出迎えしてくれたのは剥き出しの筋肉と内臓をデタラメに繋ぎ合わせて犬のような形に仕上げたクリーチャーが先に突入したD民を美味しく食べている光景でした。

 南無三、成仏しろよ。来世ではもう少し平和な世界に、なんなら俺が生きていた日本あたりに生まれ変わることを願っているぜ。少なくともこの世界に比べれば豊かで幸せな人生になる確率が高いハズだから。

 

 バックパックは無事なのでそれだけ回収して逃げられないかな~とも思ったが、クリーチャー系わんわんたちは俺に気が付くとお食事を中断してゆっくりと近付いてくるじゃありませんか。

 う~ん、相変わらずデッサンが狂ってるなコイツら。バイオハザードのケルベロスやコルミロスに比べるとアレだな。デッドスペースのネクロモーフ感のほうが強いな。

 

 

 と、いうワケで戦闘フェイズです! 行動順はDEX順で……はなくもう好き勝手に動きます。当たり前だよなぁ? 

 

 

 大抵のゲーム、それもアクション系では犬型のモンスターは動きが素早いと相場が決まっているが、このネクロモーフもどきは色々とアンバランスなパーツなせいか普通に鈍い。

 なので落ち着いて対処すれば数が多くてもなんとかなるのだ。というかなんとかならなきゃ俺なんか初日でくたばってるからね。前世は交通事故が弱点の普通のサラリーマン、生まれ変わった肉体は12歳の少年だったからね。

 

 クリーチャーは全部で3匹。ハンドガンは銃声で敵の増援を呼んでしまう可能性が高いのでナイフを構え、冷静かつ慎重に──逃げるんだよぉぉぉぉッ!! 

 

 勇敢に立ち向かうなんてのはアホのすることだ。だってケガしたら死んじゃうんだもの。頭や心臓のような急所じゃなくても、腕を咬まれたときに太い血管が傷付いたら大出血からの多臓器不全で死ぬから普通に。

 準備期間のある転生は百歩譲ってまだいいとして、異世界転移したラノベの主人公たち気軽に戦いすぎでしょ常識で考えて。仮にチート能力があろうがゲームデータ引き継ぎしてようが人間なんて死ぬときゃ死ぬんだからさ。

 

 

 と、いうワケで適当に高いところへ避難する俺。まともな犬型であればピョンととびのってくる高さだが、コイツら全員パーツが歪んでいるから簡単に安全を確保できるのだ。

 あとは登ろうとしてくるところを頭にナイフ一撃で余裕ですよ。袖を咬まれて引っ張られないように気を付ける必要があるので、できれば鉄パイプとか角材とか長柄の武器を使いたいところさんなんだが……お、こんなところに都合良く瓦礫があるじゃーん! 

 

 

 謎の建材をクリーチャーの顔面にシュゥッ! 超・エキサイティンッ!! 

 

 

 よし、これで2匹も潰せたのはラッキーだったな。残りの1匹がよじ登ろうとしてきたので、遠慮無く前脚をナイフでぶった切る。

 バランスを崩して倒れた顔面に、今度は建材の代わりに俺の黄金の両足をプレゼントだオラァッ!! 

 

 フッ……完全勝利。我ながらなんとも泥臭い戦い方だが、勇者でもヒーローでもないんだから無意味にカッコつける必要など無い。

 所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬのだ。名前ではなく番号で管理されている俺は間違いなく弱者側なんだけどな! アッハッハ! クソがよぉ……。

 

 おっと、イカンイカン。憎しみはなんにも実らせないんだ、ここは前向きにいまを生きねば。まずはクリーチャーどもを解体して腹の中からエネルギー結晶体を取り出して回収しよう。

 あとはD民の残骸をどうするかだが……いつも通り放置でいいか。埋葬するか火葬してやりたい気持ちはあるが、ハッキリ言って自分がいつ殺されるかわからん状況でそんなことに時間を使いたくない。

 

 残ってる装備品だけはありがたく使わせてもらうけど。倫理? いえ、知らない子ですね。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 堅実に卑怯な戦い方でエネルギー結晶体を回収し、ノルマを達成して余剰分が出たところで休憩タイム。たぶん今日が初めての出勤のD民がいたのだろう、景気よくハンドガン鳴らしやがってくれたおかげで獲物には困らなかったぜ、ガハハ! 果たして新人たちは何人生き残ったかな? 

 適当な建物に隠れ、ドロッとした謎の液体食料をズルズルっと飲み干したら本命の──エネルギー結晶体を取り出す。なるべく綺麗な見た目のヤツを選んでぇ~いただきますッ!! 

 

 

 うん、不味いッ! 

 

 どれもうひとつ。

 

 

 う~ん、食べるほどに身体に活力が満たされている感覚はあるんだけど味のほうは実によろしくない。スイカの皮にニンニクをトッピングしてチョコレートリキュールかけて食べたらこんな味になるかもしれん。

 だがこれはこの先生き残るために必要な儀式だ。活力が満たされる感覚の先に、力が身体に定着したと実感する瞬間がある。ゲームで言うならレベルアップみたいなものだ。

 

 今回のエネルギー結晶体モグモグでまたひとつ人間から離れた気がする。よし、ちょっくらその辺のコンクリートっぽい壁でもギュッと掴んで……おぉ、握り潰せるじゃないか。うむ、順調に化け物の仲間入りしてるな。

 よしよし、不安はあるがなにもしないまま死を待つよりはマシなハズだ。まだ時間に余裕はあるし、このままもう少し稼いでから戻るとしよう。

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