宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月10日、「イプシロンS」ロケット第2段モータの再地上燃焼試験で発生した燃焼異常について、4回目の記者会見を開催。原因特定につながる重要な部材を回収できたことから、FTA(故障の木解析)によるシナリオをひとつに絞り込み、11月下旬にも模擬欠陥を施した小型モータを使った検証試験を始める。
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JAXA、「イプシロンS」ロケット第2段モータの再地上燃焼試験で発生した燃焼異常で4回目の記者会見開催。(左から)JAXA 宇宙輸送技術部門イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャの井元隆行氏、JAXA 理事/宇宙輸送技術部門長の岡田匡史氏
イプシロンSは、従来の強化型イプシロンの後継機としてJAXAが開発を進めている3段式の小型固体燃料ロケット。2023年7月の第2段モータ燃焼試験に続き、2024年11月の再地上燃焼試験でも爆発事故が起きており、立て続けの失敗となっている。現在は原因調査と並行して、イプシロンSの今後の開発方針の検討を深めているとのこと。
今回、燃料を充填したモータケースのノズル側にある、リング状の金属部品「ボス」を回収できたことで、回収・分析作業がほぼ終了し、第2段モータの破壊の全体像を把握。回収されたボスは強い熱影響を受けた形跡がないことから、爆発につながった燃焼ガスリークの主要因ではないと判断した。
そして燃焼ガスのリーク・破壊のきっかけについては、断熱材(インシュレーション)の焼損過大によって気密喪失が起き、その結果モータの後方ドーム(CFRP製)の破孔につながったと見ている。これまでふたつ考えられていたリーク・爆発のシナリオのうち、ボスを主要因とするケースを排除し、ひとつに絞り込んだかたちだ。
なお、燃料と断熱材の間にはスキマ(空隙)があることも従来の調査で判明していたが、算出し直した結果、その大きさは以前の発表値(約65mm)よりも小さい、約29mmであったことも合わせて報告。これは製造工程から予測される範囲内と判断している。
JAXAでは今後、第2段モータ事故の原因究明に向けて、実機の約1/5サイズという小型(サブサイズ)モータを製造。2025年11月下旬から計6回にわたり、検証のための燃焼試験を実施予定だ。この試験で要因が絞り込めない場合、原因特定の最終確認の位置づけとして、実機大サイズのモータ燃焼試験を行うことも検討する。
なお、イプシロンSの一連の事故で損傷した能代(秋田)と竹崎(鹿児島・種子島)の試験場はいずれも復旧には至っていないが、竹崎の試験場についてはメドがたち、2025年度冬期の復旧完了をめざしている。