総額2000億円超を集めた「みんなで大家さん」問題 メガバンクや行政が“ポンジスキーム”を疑っても事業許可取り消しに至らなかった理由
メガバンクからも追及
そんな素朴な疑問は、不特法に基づいて事業を許可した東京都や大阪府をはじめ、みずほフィナンシャルグループ(FG)などの金融機関も抱いてきたという。実際、シリーズ成田の配当が始まった1年後の2022年には、早くもみずほFGが調査に乗り出している。共生バンクグループ関係者が打ち明ける。 「みずほには共生バンクグループに関する口座がありました。金融機関として取引先の資金がどう使われているか、その調査が必要だったのでしょう。万が一、銀行口座が犯罪に利用されていたら口座を凍結するなり、解約しなければなりません。 それで、いっこうに進まない成田PJ開発の状況を問題にした。シリーズ成田のファンドは当時10号を超え、投資家たちに対する配当の原資となるキャッシュフローがどこから出ているのか、その質問が共生バンクグループに対してありました」 みずほ側は、何度も成田PJの収支計画などの報告を求めた。ところが、年が明けた2023年に入っても、共生バンクはまともに回答できなかった。 一方、東京都や大阪府も同じく、そんな共生バンクの事業を放っておけない。かといって、現実問題としてはいったん下ろした事業許可の取り消しは難しい。大阪府の担当者も苦しい立場にあったようだ。 「行政は手続き上、先方が提出する事業報告書を見て、それを確認するだけです。たとえば純資産が資本金の9割を割ってはいけない純資産要件があり、そこをクリアしているかどうか。1億円の資本金で先行投資などによる赤字が続いて純資産が9000万円を割ってしまうと、財務状況が健全ではない会社と判断し、事業許可を取り消すことができる。 逆にいえば(インベストファンドの場合)増資して今は29億円の資本金になっていますから、26億円の純資産があればいいということになる……」(府幹部) 繰り返すまでもなく、みんなで大家さんがかき集めた資金は2000億円以上だから、純資産26億円は低いハードルになる。そこをクリアしている以上、事業許可は取り消せないというのだ。 行政側には個別商品の調査権限が与えられていないというジレンマがある。しかし肝心なのは事業実態だ。そこは行政側もさすがにひたすら指を銜えているだけではない。金融機関と同様、ヒアリングしてきたようだ。そうしてようやく共生バンク側が説明を用意した。それが、くだんの〈資産一覧〉だったのである。 * * * 関連記事《【追及スクープ】配当ストップの「みんなで大家さん」、あまりにも杜撰な行政向け内部資料の中身 上場予定と記された企業は稼働せず、売却するはずの土地は野ざらし》では、行政向けの説明資料に書かれた内容と現状の乖離や、名前の出た企業幹部による驚きの証言もレポートしている。 【プロフィール】 森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ──「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』、『菅義偉の正体』、『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』など著書多数。 ※週刊ポスト2025年9月19・26日号
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