「次の配当は死守する」はあっさり裏切られ… 配当ストップ「みんなで大家さん」の経営実態を物語る内部資料を見た関係者は「まともな数字とは思えない」
事業は開店閉業状態
8月末の配当について会長の柳瀬は「債券の発行や600億円のグループ資産売却でしのぐ」と発言してきた。そこについても、出資者は懐疑的だった。 「柳瀬さんが言っていた600億円はかなりいい加減な数字です。物件は未公表ですが、不動産売却は、大阪ミナミの宗右衛門町の廃墟ビルやJR千葉駅から徒歩10分の古ぼけたテナントビル、西日暮里の地上げ物件などが考えられました。だが、いずれも売れる目途が立っておらず、まして600億円なんてとんでもありません。全部売れてもせいぜい200数十億円程度でしょう」 共生バンクグループが全国の不動産開発事業でかき集めてきた投資額は2000億円を優に超える。うちシリーズ成田の出資金が1500億円だ。年7%の配当利回りとして105億円、グループ全体2000億円の配当となると、実に140億円を毎年投資家に還元しなければならない。月平均に直せば、11億7000万円という計算になる。 だが、成田PJをはじめどこもまともな事業をしているとはいえない。むしろ土地は買ったが、事業は開店閉業状態ばかりだ。みんなで大家さんは遅かれ早かれ行き詰まることが見えていた。なぜ今まで配当できていたのか、疑問だった。
資料を見た関係者は「まともな数字とは思えない」
そんな自転車操業の共生バンクグループの経営実態を物語る内部資料が存在する。それが前号の最後に触れた「共生バンクグループ メイン保有資産一覧」だ。〈2023年3月末現在〉と注釈があるので、この時期に作成された資産評価に違いない。共生バンクにくだんの資料のことを確かめると、「当時、不動産特定共同事業の監督官庁向け説明の目的で作成され、提出された資料と思料されます」(管理本部)と回答していた。事業許可を下ろした東京都や大阪府といった自治体などに提出されたものとみられている。 しかし、この資産評価が実にデタラメなのである。資料は、〈メイン資産〉の欄に〈1 成田PJ用地〉と記され、シリーズ成田の開発用地が真っ先に出てくる。土地の保有はグループのファンド運営会社「都市綜研インベストファンド」だ。資料をよく見ると、備考欄に〈2025年12月売却等予定(予定売却等金額:2500億円)〉とある。となれば、2023年時点ですでに売却先候補が決まっていなければおかしい。が、もとよりそんなアテなどなかったのだろう。 「共生バンクグループにはこれだけの優良資産があるから安心してほしい、と行政や金融機関にアピールするためにつくった調査資料です。ただ、ほとんどまともな数字とは思えませんでした」 資料を見たという関係者はこう語った。要は大法螺を吹くための資料とでもいえばいいのか。 * * * 関連記事《【追及スクープ】配当ストップの「みんなで大家さん」、あまりにも杜撰な行政向け内部資料の中身 上場予定と記された企業は稼働せず、売却するはずの土地は野ざらし》では、この資料が作られた経緯とその全容に迫っている。 【プロフィール】 森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ──「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』、『菅義偉の正体』、『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』など著書多数。 ※週刊ポスト2025年9月19・26日号
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