消えゆく蛍光灯 戦後を照らし、震災で生まれた残光「次はLEDで」
戦後の復興期から現代まで照らし続けた「蛍光灯」の歴史に幕が下りようとしている。
蛍光灯製造で国内大手の照明メーカー「ホタルクス」の滋賀工場。直管形の生産ラインにはガラス管がずらりと並ぶ。
内側に蛍光体が塗られ、両端に電極を熱で加工し金属の部品がつけられると、家庭やオフィスでよく見る蛍光灯の姿になる。ガラス管内には水銀蒸気などが封入され、電子が衝突すると紫外線が発生し、それを蛍光体が受けて光っている。
しかし、世界的に水銀汚染への懸念が高まる中、2013年に熊本市・水俣市で開かれた外交会議で、「水銀に関する水俣条約」が採択され、その後発効。国内では27年末までに水銀を含む一般蛍光灯の製造・輸出入が禁止される。
ホタルクスでは、前身を含めて1952年から量産を開始。
95年の阪神大震災では、暗い室内での転倒やガラスの破片を踏むけがが多発したことなどから、消灯後も残光を放つ「ホタルック蛍光灯」を開発。累計1億本以上が出荷されるヒット商品になった。
近年は省電力で長寿命な発光ダイオード(LED)が普及し、ホタルックの残光機能は、生産者が込めた思いとともに同社のLED製品に受け継がれている。
約40年にわたり蛍光灯に携わってきた、執行役員工場長の山下教司さん(58)は「蛍光灯は太陽光に近い光を再現でき、簡単に取り換えられ、生活の一部となった。70年以上つないだ歴史が終わるのは寂しいが、これからはLEDで世の中を明るく照らしていきたい」と話した。
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