幼馴染への束縛が強め(になる)ヘルタと幼馴染


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作:ヘルタファンクラブ永遠の最後尾
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第二話


「……それで、これからどうするつもり?」

「言っただろ?旅に出るって──」

「手段の話をしているの。どうやって、どこに旅をするの?」

 

卒業式の日、家に帰った俺を待っていたのは扉の前で仁王立ちするヘルタだった。

 

「……えっと、移動手段は宇宙船だな。バイトの給料を貯金して買った宇宙船で、まずは仙舟羅浮を目指すことにするよ。ちょうど近々この辺りを通るらしいんでな」

「へぇ、そう。思ったよりしっかり予定立ててたのね。なら、私が口出ししてあげる必要もないわね」

「おう!いつまでも頼ってちゃいられないからな」

 

少しでも彼女が安心してくれるようにとそう言うと、彼女は眉を顰めた。

そして、ぺらりと一枚の紙をこちらに差し出した。

紙の表面には短い数字の羅列が書き込まれている。

 

「これ、私の電話番号だから。二日に一回は電話しなさい」

「……え?なんで?」

「──み、未来の助手候補に何かあったら大変でしょ!とりあえずそれだけ覚えといて、私はもう帰るから!」

「おい、せっかく来たんだからお茶でも──」

「いらないから!」

 

彼女は何やら怒った様子で背を向けて帰っていった、と思いきやこちらを振り向いて

 

「何か困ったことがあったら、すぐに連絡しなさい!」

 

そう念を押して去っていった。

その日の昼、俺は故郷に別れを告げて長い旅の最初の目的地である仙舟『羅浮』へと向かった。

 

──────────

 

かなりの長い時間飛行を続けた俺の前に現れたのは超巨大なスペースコロニー。

一目でわかる威容を持つこの巨大な宇宙船こそが仙舟『羅浮』だ。

出入り口となる玉界門を抜けて、『羅浮』に降り立ってしばらく歩いていると

 

「ねぇ!そこの人〜」

 

一人の少女がこちらへ走ってくるのが見えた。

彼女は明らかにこちらへ手を振っている。

俺の元に走ってきた少女は

 

「あなた、よそから来た人だよね!?私がさっきから、あなたに仙舟を案内してたことにしてくれない?」

「は、え?」

「ちょっとそこの人、そいつを私に引き渡してくれる?」

「えっと……?」

 

走ってきた少女のさらに後ろから、桃色髪の少女が現れる。

 

「ぐ、偶然ですね太卜様!私は今ここで、彼に仙舟を案内していたんです!」

「太卜司にそんな仕事はないはずだけど?言い訳するくらいなら仕事をしなさい、青雀」

「人に親切にするのって大事だし、何より彼に頼まれたんです!」

 

青雀と呼ばれた少女は後ろ手でつんつんと俺を突き、俺が味方してくれるのを待つかのようにキラキラとした目でこちらを見ている。

 

「あ、あぁ、そうなんだよ。色々わからなくて困っちゃったもんでさ、アンタにも仕事があったんだな、邪魔して悪かった」

「…………そ、ならしっかり案内して、終わったら仕事をしなさい」

 

ピンク髪の少女はそう言って去っていった。

 

「ありがとう見知らぬ人!あなたは私の恩人だよ〜!でも、今はちょっとごめん! 帝垣美玉牌が私を待ってるから!」

 

青雀と呼ばれた少女はそう言って去って行った。

すると、それから五秒もしないうちにピンク髪の少女が戻ってきた。

 

「……青雀はどっちに行ったかしら?」

「……えっと?」

「青雀があなたのそばを離れて言い訳できなくなるのを待ってたのよ。彼女はどこへ行ったの?」

 

簡単に彼女を売っていいものか数秒悩んだ。

しかし、俺は巻き込まれた側だ、しかも何のリターンも貰っていない。

『人の口に戸は立てられぬ』と言う諺もある。

何より目の前の少女の圧がすごい。

俺は素直に彼女が走って行った方を指差した。

 

数分後には仕事へ連れ去られるであろう彼女の幸福を祈りながら、俺はその場を後にした。

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