8日に予定されていた自民党の総裁選前倒し投票は寸前で回避された。前日の7日夕方の記者会見で、石破茂首相が辞意を表明した。総裁選前倒しに賛成する自民党国会議員や都道府県連が多く、実施は不可避とみられていた。実施を巡り、前倒しの賛成派と反対派に党が分断されるという最悪の状況は避けられた。
最後の後押しをしたのは6日夜に首相公邸を訪問し、石破首相と会談した党副総裁の菅義偉元首相と、小泉進次郎農相だった。菅氏は約30分間で退出したが、小泉氏はその後も残り、計約2時間かけて首相と協議を続けていた。
うがった見方をすれば、小泉氏は総裁選をやりたいが、前倒し投票の前に石破首相が辞任しないとまずい。というのも前倒し投票が行われることになってYESとしていれば、党分断で自己主張との矛盾になるし、NOとしても、総裁選に出馬できなくなる。
だから前倒し投票の前に辞めろと伝えに行ったのではないか。そこに菅氏が同席した。菅氏はその際、「後は小泉氏一人で説得しろ」と話してすぐ帰った、と筆者は邪推する。
きっと小泉氏は「8日の総裁選前倒し投票は党の分断を招く。回避してくれ」と説得したはずだ。
それにしても、昨年の衆院選での敗北で辞めるべきだったが、今年6月の都議選、7月の参院選で負けても辞任しないという石破氏の決断はやはり異常だ。
石破首相は「ジンチ」を超えた存在である。それだけに筆者は、人から言われると反発し、小泉氏の辞任説得が逆効果になって「破れかぶれ解散」の可能性もあると心配していた。最悪の事態はなくなり、早期の総裁選実施で落ち着いた。
総裁選の候補として高市早苗氏、小泉氏のほか、林芳正官房長官らの名前が挙がる。抜けているのは、高市氏と小泉氏だ。両者は前回総裁選の一度目の投票で石破氏とともに上位に付けていた。
総裁選の時期、方法はまだ発表されていないが、党員を含めたフルスペックとなれば党員に人気のある高市氏のほうが有利だろう。もし党員を除いた簡易版であれば、国会議員と地方票の投票になるので、石破氏の首をとった小泉氏のほうが有利だろう。
いずれにしても、衆参で少数与党であることは変わりない。もし高市氏の場合、後見人は麻生太郎氏になり、野党連携は国民民主党となる。
小泉氏の場合キングメーカーは菅氏で、連携の相手は日本維新の会となる。小泉氏と維新の吉村洋文代表は規制緩和などで波長が合うし、そもそも菅氏は維新とのパイプがある。小泉政権は維新と「緩やかな協調」をとる可能性が大きい。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)