PROFILE この記事の登場人物

米澤 一浩 高岡市 景観みどり課
高岡市役所にて道路や土木関連の業務を担当し、2025年4月に土木維持課から景観みどり課へ異動。現在は、公園や広場の維持管理のほか、屋外広告物の申請受付や調整などの業務を担当。除雪などの現場業務の経験を生かし、街の景観と安全性の両立を目指して取り組んでいる。

西元 智子 高岡市 景観みどり課
景観みどり課には2023年度より所属し、現在は「高岡古城公園景観再生プロジェクト」や吉久地区の道路修景整備業務を担当。市民や関係者と連携しながら、持続可能な景観整備の推進に力を注ぐ。

太田 英人 高岡市 企画課
2005年に高岡市役所に入庁。現在は企画課で「ふるさと納税」や「企業版ふるさと納税」の運用を担当。また、移住・定住の促進業務にも従事。20年の行政経験を生かしながら、高岡市の地域活性化に向けた企画立案・推進を担っている。
歴史ある城跡と自然が調和する「高岡古城公園」。かつての美しい景観をもう一度市民に届けたい――そんな願いから「高岡古城公園景観再生プロジェクト」が動き出しました。都市の緑化や生物多様性のための環境づくり、森林資源の循環に注力してきた大東建託も、高岡市の活動に共感して「企業版ふるさと納税」を通じて支援しています。
今回は、同プロジェクトを担当している高岡市役所の米澤さん、西元さん、太田さんにお話を聞きながら、プロジェクトの背景や進行状況、そしてそこに込められた想いに迫ります。
大東建託は2023年度、地域への還元と、自社の事業にとっての投資機会の両方を目的に、はじめて「企業版ふるさと納税」を活用しました。この制度は、企業が国の認定を受けた自治体の地域づくりに寄付することで、法人税などの負担が最大9割まで軽くなる仕組みです(※個人のふるさと納税と違い、返礼品はありません)。
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高岡市役所の太田さん、米澤さん、西元さんプロジェクトの舞台は、高岡市民の思い出重なる「高岡古城公園」
「高岡古城公園」は、地元住民にとってどのような場所なのでしょうか。3名に公園の魅力や歴史的なあゆみについて聞きました。

まずは、このプロジェクトの舞台となる高岡古城公園についてご紹介いただけますか?
高岡古城公園の散策マップ(出典:高岡古城公園公式ウェブサイト)地元住民をはじめ、多くの人々に愛されている公園なんですね。みなさんご自身にとっても、何か記憶に残っている公園でのエピソードはありますか?
米澤さん「以前は公園のすぐ近くに市民会館があって、自分の成人式もそこで行われました。それ以外にも、子どもの頃から古城公園にはよく来ていましたね。たくさんの思い出がある場所です」
太田さん「小学生時代、公園内の動物園で開催された『写生大会』で賞をいただきました。それがすごくうれしくて、今でもよく覚えています。それから古城公園にはちょっと特別な思い入れがありますね。たぶん今でも、地元の小学生の遠足や写生大会の場として親しまれているんじゃないかと思います」
西元さん「個人的な話で恥ずかしいのですが…… 実は私、古城公園内にある射水神社で結婚式を挙げたんです。高岡で一番格式のある神社ということもあって、ここで式を挙げたいなと思いまして。それだけでも十分思い出深いのですが、その後、子どものお宮参りもさせていただいて、家族の節目をともに過ごした大切な場所になっています」
見えてきた歴史の面影。その先へ、さらに歩みを早めたい
地元の人々に大切にされてきた「高岡古城公園」。それがなぜ、景観再生をする必要に迫られているのでしょうか。
「高岡古城公園景観再生プロジェクト」立ち上げの背景を教えてください。
西元さん「一番の理由は『城跡らしさ』をもっと感じられる公園にしたいという思いからです。この公園には、かつての城の構造を物語る高い斜面(法面)などが残っていますが、木々が生い茂っていて、そうした地形が見えづらくなっています。その結果、公園を訪れても、歴史的な価値が伝わりにくくなっていました。また、木が密集していることで、桜など一部の植物に光が届かず、健全に育たない状況も見られます。そこで、木々を適切に間引くことで、公園の景観を整えると同時に植物が元気に育つ環境をつくり、訪れる人々に高岡城跡としての魅力を再認識してもらいたいと考えました」
2023年6月時点では、うっそうと生い茂った草木によって城が建っていた土台の地形が隠されている(画像提供:高岡市)
米澤さん「そうした背景をふまえて、高岡市では2023年3月に『高岡古城公園樹木管理行動計画』という長期的な整備方針をまとめました。これは、およそ30年かけて公園内の木々を少しずつ整えていく計画です。ただ、市の通常の予算だけでは進みがどうしてもゆっくりになってしまいます。そこで、少しでも早く着実にこの計画を進めるために『高岡古城公園景観再生プロジェクト』を立ち上げました。
ふるさと納税を通じて自治体に寄付できる『ガバメントクラウドファンディング(以下、GCF)』、企業が地方創生の取り組みに寄付できる『企業版ふるさと納税』などを活用して寄付を募ることで、30年かかる整備を、少しでも短いスパンで進めていけるよう取り組んでいます」
2024年10月4日〜2025年1月6日までの95日間で290人が支援に参加し、930万円以上の寄付金が寄せられた(出典:「高岡古城公園 景観再生プロジェクト2024」ガバメントクラウドファンディングページ)これまでにどのくらい寄付金が集まって、整備はどれくらい進んだのでしょうか?
米澤さん「2024年度は、高岡市のホームページにも掲載しているとおり、個人の皆様、市内外の企業・団体様から合計で約1,970万円のご寄付をいただきました。このお金は、高岡古城公園の景観再生事業に使わせていただいております」
樹木整理の進捗状況を示した図面(出典:高岡市公式ホームページ内「高岡古城公園景観再生プロジェクト」2025年5月12日時点)
西元さん「現在伐採が完了しているのは、図面でいう茶色や青で囲ってある部分(三の丸や二の丸、本丸周辺のエリア)。垣根付近や角の部分は大きく景観が変わり、以前の状態を知っている方なら『ずいぶん変わったな』と驚かれると思います。それまで見えなかった石垣が急に現れると、驚きとともに歴史を感じられるようになった、という声もありました。現在(2025年5月)は射水神社の前あたりの整理を進めているところです」
博物館側から石垣を望んだ景観のビフォーアフター。木々が整理されたことで、奥にある石垣がはっきりと見えるようになった(画像提供:高岡市)今後、公園はどんな姿になっていく予定でしょうか。このプロジェクトで大切にしているゴールについても教えていただけますか?
西元さん「博物館と動物園の間にある通路沿いのエリアの樹木整理が進めば、奥にある石垣が見通せるようになり、かなりダイナミックな景観になるはずです。本丸周辺も整理が進めば、入口から入ってきたときに、きれいに整えられた本丸の法面(のりめん)がパッと目に入ってくるようになります。これによって、『城跡である』という印象がより強まるはずです」
米澤さん「高岡古城公園は季節ごとに景観が異なるので、春夏秋冬を通じて訪れてもらい、写真を撮ったり、散策を楽しんだりしてもらえたらうれしいです。そんなふうに、日常のなかで自然に公園の良さを感じていただけるような場所にしていけたらと。個人的には、まずは地元の方々に『すごく変わったね』と言ってもらえることが一番大切かなと思っています」
プロジェクトが進んでいくなかで感じていらっしゃる課題があれば教えてください。
西元さん「樹木整理がひと通り終わっても、その後また木が成長して景観が隠れてしまうことが想定されます。だからこそ、計画が終わった後もどう継続的に維持管理していくかを、これからしっかり考えていく必要があると思っています」
米澤さん「また、木を整理したことで新たな安全対策が必要になるかもしれません。そうした場合の対応や、必要な費用についても今後の検討課題です。そういったことを一つひとつ検討しながら、少しでも早く整備のペースを上げていきたいですね。樹木整理状況は現時点でまだ全体の10%にも満たない段階で、手が入れられていないエリアがたくさん残っています。長年この公園を愛してくださっている市民のみなさんに、早く整った公園の姿を届けたいです」
「企業版ふるさと納税」は、想いを共にできる力強い仕組み
画像:(C)高岡観光ナビ2016年からスタートした「企業版ふるさと納税」。寄付を受ける立場から、この制度をどのように捉えているのかを聞きました。
企業版ふるさと納税の仕組み「企業版ふるさと納税」について、どのような印象をお持ちですか?
太田さん「現在、高岡市では『高岡古城公園景観再生プロジェクト』のほかにも、4つのプロジェクトでこの制度を活用しています。こうした取り組みを通じて、プロジェクト自体が高岡市を知ってもらうきっかけにもなっていますし、寄付していただくことで地域との新しい関わりが生まれ、関係人口が広がっている実感もあります。まちづくりを進めていくうえで、本当に大きな力になっていると感じています」
米澤さん「やはり、まちの取り組みに共感してご寄付をいただけることは、とてもありがたいことです。支援してくださる企業と想いを共有しながら進めていけるのも、『企業版ふるさと納税』ならではの魅力だと思います」
効果を実感されたことがあれば教えてください。
米澤さん「プロジェクトの立ち上げと『企業版ふるさと納税』の導入は、ほぼ同じタイミングでしたが、やはり導入したことで進み方が大きく変わったと感じています。予定よりも早く整備を進められている部分もあり、導入して本当によかったと実感しています」
西元さん「もし導入していなかったとしたら、今は見えるようになっている石垣も、まだ木々に隠れたままだったかもしれません。それくらい、整備のスピードには違いが出ていると思います」
米澤さん「寄付してくださった多くの企業にも『応援して良かった』と感じていただけるよう、私たちも成果をしっかりかたちにしていく必要があります。そういった責任感が、事業を確実に進めていこうという意識につながっている。そういう意味でも、『企業版ふるさと納税』は非常に大きな効果をもたらしている制度だと感じています」
全国からさまざまな企業が支援しているかと思いますが、制度を通じて企業との関係性に変化はありましたか?
太田さん「はい、少しずつですが、企業との関わり方にも変化が出てきています。例えば、高岡市が持つ地域資源を企業のみなさんと一緒に活用しながら、共同で取り組みを進めていくために、協定を結ぶに至った例もあります。『高岡古城公園』は市を代表する大切な場所ですし、今回の景観再生のようなまちづくりのプロジェクトに、大東建託さんのような街や暮らしと密接な企業が関わってくださることは、私たちにとって本当に心強く、大きな力になっています」
「企業版ふるさと納税」がひらく、地域の未来
個人だけでなく、企業にも浸透し始めている「ふるさと納税」。地域の未来に寄り添いながら、新たな価値を共に築く手段として、その可能性はますます広がっているようです。



























「高岡古城公園は、高岡市の中心部にある、約21万平方メートル(東京ドーム約4.5個分)の広さを誇る公園です。加賀藩の前田利長公が築いた高岡城の跡地を生かしてつくられました。三方をお堀に囲まれた高岡城は、非常に攻めにくく守りやすい構造を持つ、日本を代表する防御型の名城で、全国的にも珍しい設計とされています。その築城当時の石垣や土塁(どるい:土を盛ってつくった防御のための土手)も今に残されており、高度な防御技術を感じられる歴史的に貴重な場所でもあります。
とはいえ、堅苦しい場所ではなく、園内には無料の動物園や体育館、博物館、レストランもあり、平日は学生さんをはじめ散歩やジョギングを楽しむ方、休日は家族連れやレジャーを楽しむ方々でにぎわっています。春は桜、秋は紅葉の名所としても知られていて、県外からの観光客はもちろん、最近では海外からの旅行客も増えています」