TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

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第二話:TS転生ヴィランロリの買い出しと言う名のお出かけデート

やあ諸君。

おねーさんを拾ってから二週間ほど。

驚くほど速く時間が過ぎた。

いやね、食事面もどうにかしちゃったら、本当にお外出なくなっちゃったよね。

完璧な引き籠リストになっちゃったよ。

おかげで対戦ゲーのランクが上がる上がる。

一週間くらいで「こりゃマズい」と思ってアジトを増築したよね。

主に骨粗鬆症対策と運動不足対策で専用のトレーニングルームを増設したよ。

おねーさんが喜んで使っているので、数日費やした甲斐があったよ。

()()()()()()()のって重労働なんだぜ……。

重量可変バーベルとか、音速まで対応してるランニングマシーンとか、そんなものは空間を描き出すより簡単だったさ。

おねーさんも最近は慣れて来たのか、遠慮なく要望を出すようになってきた。

 

「しかしエソラ、私の我儘に随分と応えてくれているが、疲れてはいないか?」

 

遠慮なく我儘を言っていた自覚はあるようで何より。

別にボクにペンだこができるだけでそこまで疲れてるわけじゃないし。

描くのは趣味だし。

別にいいんだけどね。

 

「別に疲れてはいないよ。ただまあ、外出なさ過ぎてヤバいなあ、って気がして来てる」

「それは……そうだな」

 

お外出なさ過ぎて良くない。

あとおねーさん、着やせするタイプだったのか思ったより立派なものをお持ちだった。

ボクのまだ残ってる男子高校生な部分が反応して辛いから気分転換したい。

ちなみに今おねーさんは、ぶかぶかダサTにパンツルックというラフな格好だ。

ヒーローしてた時からは想像もつかないね。

 

「と言うわけで出かけよう、おねーさん」

「分かった。着替えてくる」

「そうだね、そんなラフな格好、アジトの中以外でしないでよね」

 

と言うわけで外出です。

なお、おねーさんの所持しているカード類や身分証明証は足が付くので全面的に使用禁止だぜ!

さて、ボクも着替えるか。

あと安全のためにアレとアレとアレも持って行こう。

おねーさんがいると言っても、助けてくれるとは限らないからね……。

万が一のためだから。

 

と言うわけで着替えヨシ、荷物ヨシ、現金入れた財布ヨシ!!

 

「待たせたな」

 

おねーさんも着替えが終わったようでなによ、り……。

 

「どうした?」

「誰だお前!!」

「《ブレイディア》だが?」

「理解したうえで脳が理解を拒んでるんだよ!!何をどうしたらそんな()()()()()()()()()!!ええい、そこに座れ!!小学生にオシャレの作法負けてるとか悔しくないのかお前!!」

「キャラ違わないか?」

「おねーさんのせいだよ!!」

 

とんでもない不細工がいた!!

元が良いのに全て台無しだ!!

化粧はメチャクチャ、髪は上手く結い上げられてない、服のセンスも絶妙にダサい。

ある意味天才だよお前!!

そこに座れ、問答無用!!

ここ二週間でいやという程痛感したけど、センスも生活スキルもほぼ壊滅的だなあ、キミは!!

何?今まで家事は全自動の機械に頼っていた?

戦いしかしてこなかったから簡単な料理しか出来ない?

これから叩き込んでやろうじゃないの。

ヒーロー休んでもサボれると思うなよ。

 

「金銭感覚も狂ってそうだから叩き直してあげる。今日は買い出しね、異論は認めない」

「ウッ……しかし」

「事情は知らないけどさ、戻らないなら戻りたくない理由があるんでしょ。これからどうするにしろ、おねーさんは覚えておくべきだよ」

「……そう、だな。すまない」

 

深入りはしない。

そうは言ったけど、おせっかいくらいは焼かせてもらう。

まさか平和の象徴とまで言われるこのヒーローが、ここまで生活スキル皆無とは思わなかった。

ボクは基本的に無責任な人間だけれど、無責任だからこそ思うところもある。

 

「謝る事でも無いけどね。おねーさんがこれまでどれだけ邁進してきたかは資料を見れば欠片程度には分かる。でもね、おねーさん。おねーさんが生活スキルを切り捨ててまで守らなきゃいけないモノは、この世界に一体いくつあるんだい?よーくよーく考えてごらん?きっと本当に守らなきゃいけないモノは、案外多くないんだよ」

「ッ!!」

 

ま、ボクは無責任なヴィランだからね。

言うだけ言って投げっぱなしジャーマンだ。

ガハハ!!

 

「これでよし。ほら見て、きれいでしょ?」

「……ああ」

「まだ世に知られてないおねーさんの姿。しばらくはボクの独り占めだね、にしし」

「なんだ、優越感でも抱いているのか?」

「当り前じゃない。世界広しと言えども、あの《ブレイディア》を好き勝手飾り付けたのは、まだボク一人だろうからね」

 

ボクのPerfectお化粧の成果もあって、傾国の美女が出来上がってしまった。

これを世に解き放つことなんてできませんね。

世界の美女バランスが崩れてしまう。

クレオパトラや楊貴妃、モナ・リザですらこの美貌の前には霞むだろう……。

なお主観を多分に含んでいるものとする。

だっておねーさんボクのストライクゾーンど真ん中なんだもーん!!

 

「なあ、エソラ」

「なに、おねーさん」

「さっきの言葉を聞いて、少し考えたんだ」

「うん」

「私の、守らなければならなかったモノは、もう無いことに気付いてしまったよ」

「……そっか」

 

いきなり重いじゃん。

やめてよね。

無責任ヴィランに気の利いた言葉なんてあるわけないぜ。

 

「だから、今はキミを守ろう。一宿一飯の恩義、と言う奴だ。あとは授業料と言ったところか」

「ボクヴィランだけど?」

「私はもうヒーローとは呼べないさ」

「……ま、良いけどね。ほら、出かけるよ。はいこれ鞄とエコバッグ。今日はいっぱいお買い物するよー!!」

「分かった」

 

重い空気は苦手!!

出かけて気分転換だ!!

 

というわけでやってきましたトートシティ。

田舎だけど駅などの中心に行けば便利なものが揃ってる。

そんな街だ。

端的に言ってしまえば、田舎の住宅街。

ここに住んでいる人間は基本、ニュートートシティに仕事に行ってたりするので、人通りはかなり少ない。

拠点とするには悪くない街だ。

 

「それで、買い出しで何を買うんだ?」

「まあまずは市場調査からって感じだけど……主に食料だね。やっぱ食料をどうにかしちゃったのは良くなかった。出かける理由がほぼ消えるからね」

「そうだな」

「軽く地域の値段水準を確認して、それからおねーさんをメインとして買い物していくよ。損な買い物したらダメ出しするからよろしく」

「ふっ、お手柔らかに頼む」

 

経てして、こういった街の食料品などは駅から離れたところに割安なスーパーが置いてあったりするが、一旦黙っておこう。

いくつかスーパーやドラッグストアを見て回って、この街の強みを叩き込む。

 

「(比較的野菜は割高な傾向にあるな。その代わり肉や魚が豊富で鮮度も良いものが揃ってる。相応の値段はするけれど、他の地域に比べれば安い方か。調味料の類も意外と豊富だ。野菜も割高とはいえ安ければ他の地域と比較して平均的にはなるし、食事には困ることはないか。良い街じゃないか)」

「ぶつぶつ考え込んでどうした?」

「だいたいこの街の食事事情はわかったかな。というわけでおねーさん。はじめてのおつかい、やるよ!!」

「わ、わかった」

 

金銭感覚を養っていこうね。

 

「ふむ、これは……」

「それを買うならこっちの方がいいね。同じ値段でもこっちのが鮮度がいい」

「そうなのか」

「まあこれは見て覚えるしかないね。見比べてみて、こっちの方が色くすんでるでしょ?」

「確かに」

 

「牛乳が複数種類あるんだが……」

「基本的には安いのだけど、味が若干違うから複数買っていこうか。飲み比べしよう」

「違うのか?!」

「よーく味わってみるとなんか違うってなるんだよね」

 

「果物はどうだ?」

「んー、この街は果物かなり高めなんだよねえ。ぶっちゃけちゃうとかなりの贅沢品かなあ」

「贅沢……?!」

「ボクとか今までの暮らしを基準にしちゃダメだよ。かなり恵まれてるんだからね」

「わかった……」

 

なんだろう。

段々幼女を相手にしている気がしてきた。

幼女はボクだが?

しかし買い物の知識も皆無とは恐れ入った。

ヒーローになる前の経歴はよく知らないけれど、もしかして箱入りだったか?

ほな、娘さんの初めては全部ボクがもらうね……なんつって。

 

「だいたい世の中の社会人は月60万シジルで暮らしてるんだよね。それを基準にすると、家賃光熱費諸々で30万くらい、食費で10万くらい、残りを余暇や貯金に当ててるわけで」

「少なくないか?!」

「基準としては平均だよ。おねーさん結構稼いでたこと自覚してね」

 

ヒーロー辞めてやっていけるか不安になってくるぜ。

ま、ボクの片棒担いでくれてもいいんですよ。

小悪党生活も楽しいよ?

便利アイテムありきだけど。

 

「動くなァ!金を出せェ!」

 

こんなヴィランにはなりたくないしね……。

って、えぇ?!

なんか強盗始まったけど?!

 

「どうするエソラ」

「殴って全速で離脱。会計もついでにぶっちぎっちゃおう」

「悪事を成敗するついでに悪事とは……」

 

まあでもこっちにはおねーさんがいるので……。

 

「ぐぇ?!」

「ぎゃ?!」

「ごふ?!」

 

瞬く間に制圧されてぐるぐる巻にまでなった。

ふっ、雑魚が。

運がなかったね。

さぁ退散退散!

おねーさん抱っこしてーーーーー!!

掴まった?掴まったね?

よし!あ、ポチッとな!!

 

「ふう。まさか強盗が出るとは。治安はいいはずだったのでは」

「そのはずだが……」

「何か情勢が変わったのかもね」

「それよりも今の瞬間移動は何だ?」

「緊急避難用アジト直通テレポートスイッチ。次使うまでに三日のチャージが必要だけど」

「本当にキミはなんでもありだな」

「これ作るのも大変だったんだから。ともかく、次出掛けるなら、三日後以降だね」

 

まったく。

この分だとお出かけもやり直さないとね。

五日後くらいにまた出かけよう。

 

「おねーさん冷蔵庫入れるの手伝って」

「わかった。高いところをやればいいか?」

「おねがーい」

 

二週間も経てば、共同生活にも慣れたものだ。

自ずと分担が成立する。

 

「しかし、トートにも強盗が出るとはな。情勢はどれほど変化したのか……」

 

分担作業中、おねーさんが深刻そうな顔でつぶやいた。

なんとなくテレビはゲームを使う時くらいにしかつけないようにしている。

だから今の情勢を、ボクたちはあまりよく知らない。

SNS?ボクは使ってないし、おねーさんも自分の端末捨ててきちゃったから……。

まあ、直近で確実に変わったことといえば。

 

「おねーさんが失踪したくらいだしねぇ?」

「もしかしてそれか?」

「あっはっは、おねーさんがいなくなったくらいでどうにかなっちゃうなら、そんな社会は崩れた方が健全さ!!」

 

ま、あくまで自論だけど。

誰か一人の献身で成り立つ社会なんて、土台ががたがたなのさ。

 

「そうだろうか……」

「よくよく考えてみなよ。替えの利かない人材なんて、社会を回すのに実に不都合な存在じゃないか。社会とは常に替えの利くもので形成されなければならない。特別な何かが常にあるとは限らない、それを頼りに生きてはいけない。ボクはそう考えるけどね」

「……キミのもそうではないのか?」

「ボクは徹頭徹尾自分のためだけに使ってる。社会を回してるわけじゃない。だから良いのさ。それに、社会の歯車になんてなりたくないしね」

 

 

ボクがそういうと、おねーさんは黙り込んでしまった。

手は動いているあたり、考えながら動いてる感じだろうか。

 

「まあ、あくまでボク個人の考えだから、真に受けない方がいいかもね」

「いや、参考になる」

 

ふむ。

難しいお年頃かな?

まあいろいろ考えるといいさ……ボクはその段階をすでに超えたからね……!

 

そんなこんなで五日後。

以前と同じように買い物に出かけたんですが。

 

「エソラ」

「どした?」

「気付いているか?尾行されているぞ」

「あ、やっぱり?」

 

なーんか途中から尾行されてるんだよねえ!!

おかしいな、認識阻害はちゃんと働いているはずなんだけど。

 

「おそらく知り合いだろう。キミのアイテムに対抗できそうな能力を持っている人物に、いくらか心当たりがある。尾行能力を鑑みるに、その中でも候補がだいぶ絞れた。おそらく《テリトリア》だ」

「公表されてる能力では気づけないはずなんだけど?」

「実際の能力はかなり別物だからな。公表されているのは表層的な能力でしかない」

「うーわ、大人って怖い」

 

知られてもいい情報を餌に釣りをしましょうってか。

ま、ヒーローの手札が割れていることの方が怖いか。

 

「逃げ切れるかな?」

「無理だろうな。すでにマーキングが施されていてもおかしくない。彼女の間合いから離れても、位置を掴まれるだろう」

「なにそれずっる」

「キミが言えた義理か?ともかく、どこかで対処する必要がある」

「話し合いで何とかならない?」

「彼女のことだ、どうせ戻って来いとしか言わないさ」

「悲しいね。じゃ、路地裏入ろうか……」

「そうだな」

 

というわけで路地裏にIN。

あ、そうだ、あれやろう。

一度はやってみたかったんだよね。

 

「出てきなよ。まさか、尾行に気付かれてないなんて、この期に及んで思ってないよね?」

 

『出てきなよ』をできるとは思わなかったよ!!

くぅ、感慨深い!

ともかく、少しして、尾行者が出てきた。

うん、《テリトリア》だね。

wikiで見た写真そのまんまだ。

 

「用件を聞いてもいいかなあ。ボクたち、おとなしく買い物してただけなんだけどなぁー?」

「なに、ちょっと不思議なことが起きている。君たちに起因するものなんだ。質問をしてもいいかな?」

「内容にもよるけどねぇ?」

「簡単なことだ。君ではないそちらの女性。私の領域感知では、どう足掻いても知り合いと全く同じパラメータを示しているのに、どうしてか私はその女性を知り合いだと思うことができない。これは何かしらの認識阻害、それもかなり強力なものを行使しているからと睨んだのだが、相違ないかな?」

 

そういう突破のされ方かぁ~~~!!

そういうこともあるかもしれないと覚悟はしてたけど、本当になるとは~~!!

 

「エソラ」

「何とかごまかせない?」

「無理だろう。いいか?」

「仕方ないね」

 

そう言って、おねーさんは認識阻害チョーカーを外した。

 

 

 


 

 

 

いずれは見つかるだろうとは思っていた。

《テリトリア》が本気になれば、私が残した足跡はすぐに嗅ぎ付ける。

先日の強盗を何とかしてしまったのが原因か。

とはいえ、あれ以外はなかったから仕方がないが。

 

「推察通り、私だ。さすがだな、キミは」

「《ブレイディア》……今までどこにいたんだ」

「この子のところで居候をしていたのさ。あの日の襲撃の傷が、思ったより深くてね」

「それなら《ガーディアンズ》に戻ってくればよかったはずだ。なぜ姿をくらました?」

「答える必要があるか?すでに自明だと思うが」

「なに……?」

「まあいい。エソラ、どうする」

 

私は《テリトリア》との会話を打ち切り、居候先の家主であるエソラに方針を聞く。

 

「えー、だってマーキングがあるんでしょ?わかったところでどうにかできるとは思えないけど、念には念を入れて対処した方がよさそうだし……」

「始末するか?」

「物騒!!おねーさんヒーローだったってホント?」

「本当らしい」

「なんてことだ、こんなに豹変するほどヒーロー家業はブラックなのか……」

「エソラ、まじめに聞いているんだが」

 

わざとらしく泣き真似をしながらお道化るエソラ。

すでにヴィランのような振る舞いだが、一応私は真面目に聞いているのでトーンを一個下げて問い直す。

 

「という冗談はさておき、ボクが小悪党でいられるためには、世界はある程度平和でいてもらわなくちゃいけない。《ブレイディア》一人ならともかく、《ガーディアンズ》の中核メンバーが立て続けに二人も消えたらコトだ。《ブレイディア》、無力化は可能?」

「無論だ」

「じゃあ可能な限り無傷で確保をお願いね。その間に必要な道具は用意しておくから」

「わかった」

 

方針は生け捕り。

あくまで自分のために、彼女には生きてもらった方がいい。

そういうことらしい。

 

「その子供はヴィランか、《ブレイディア》」

「そうだな」

「何故だ《ブレイディア》!?なぜヴィランに従っている!?」

「別に。今の居候先の家主の意向だというだけの話だ」

「どうしてその程度の理由でヴィランに付き従っているかと聞いているんだ!!」

「いやなに、ふと気付かされたのさ」

 

「別に、私が守ってやる必要なんて無かったということにね」

 

私は異能を発動し、亜音速で《テリトリア》に迫る。

本来、人間には反応できない速度だが……

 

「正気に戻れ、《ブレイディア》!!」

 

彼女は対応して見せた。

《テリトリア》の異能、《テリトリー・カトラリー》は、彼女のテリトリーの範囲内をすべて知覚し、生物以外の物体を操るのが主な能力だ。

その応用として身体情報を記録したり、マーキングをつけたりと便利機能も多彩だが、それは今はどうでもいい。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ただのアスファルトならば、簡単に砕いて貫いただろう。

だが、これは《テリトリア》が操ったアスファルトだ。

砕くだけで威力を大幅に減じられ、彼女の意識を奪うには至らない。

彼女の物体を操る能力の範囲には、物体強度なども含まれる。

が、私を止めるには力不足だ。

要するに、拳を振り続ければいいんだろう。

 

「私は正気だ」

「そんなはずあるものか!」

「本当だとも。話半分ではあったが、エソラの言葉に考えさせられるものがあってな」

「ヴィランの言葉に動かされたとでも!?」

「ああ。それで私の今を、じっくりと整頓してみたんだ」

「それがどうしてこうなる!?」

「話は最後まで聞け。そしたらな、今の私には、守りたいという思いがサッパリ無かったんだ」

「……は?」

「本当に守りたいと思ったものは既になくなっていて、度重なる戦いで疲弊し続け、辞表は一向に受理される気配はなく、先の襲撃には援軍など来ず。というか無茶な指令は今までにも多く。考えれば考えるほど、今の私にヒーローとしての気概はないことに気付いた」

 

今考えても腹が立ってきたな。

本当にエソラの片棒を担ぎ始めようか。

エソラも言っていたな、私一人が消えたくらいでどうにかなる社会はない方がましだと。

だったら私がヴィランに混ざっても変わりはあるまい。

どうせヴィラン勢力にはエソラがいる。

私が消えたらどうにかなるのなら、エソラを止められるはずもない。

 

「待て、初耳の情報が多いのだが?」

「知らん。大人しくしろ」

「いったん話し合おう、話し合えるはずdガハッ……」

 

話し合うことなどない。

よく頑張っていたが、《テリトリア》の奮闘むなしく、終わりの時が来た。

もともと戦闘型ではないからな、彼女は。

むしろ拳を100以上振るうことになるとは思わなかった。

 

「なんかお話しすればわかってくれそうな気配がしたけど」

「だがキミが困るのだろう?枷をつけておかなければ」

「まあそうなんだけどね。さて、こいつを指にブスり」

 

気絶させた《テリトリア》をエソラの前に置くと、エソラは《テリトリア》の指に針を刺して血判を取り始めた。

血判を押す先は、何かしらの書類。

あれで制限をつけるというのだろうか。

 

「はい、ギアス〜。この書類がある限り、この人はボク達に関する情報をどんな形であろうとも伝えることができない。いやー、我ながらヴィランなアイテムだ」

「それ、あと何枚あるんだ?」

「ん?無いよ。作れば似たようなのはできるけど」

「……そうか」

 

相変わらず、恐ろしい能力だ。

とても自由度が高く、強力で、エソラを見る限り負荷がない。

彼女が本気になっていれば、世界などとうに滅びを迎えているだろう。

そうなっていないのは、ひとえに小悪党を名乗るエソラの良心によるものでしかない。

私が思うに、今の世界は、エソラの心一つで滅ぶところまで来ている。

 

「エソラ」

「なーにおねーさん」

「小悪党のままでいてくれよ」

「なにそれ。おかしいや」

 

私は、心の底から、そう願った。




・《テリトリア》
主な仕事は偵察や追跡のヒーロー。
戦闘能力もかなり高いが、戦闘型ではない。
《ブレイディア》が相手では分が悪すぎたが、並の相手なら完封できた。
基本的に間合の内側なら最強。
ただし、領域内の情報を全て追ってしまうため、たまにフリーズする。

・《テリトリー・カトラリー》
半径1㎞以内の情報を全て知覚し、操る能力。
やろうと思えば空気を固めたり酸素だけどっかにやったりすることもできる。
応用として、身体情報を記録したり、マーキングを付与することで範囲外に出ても知覚できるようにすることができる。
そうですね、社会の歯車組です。
え!?この日に限って脱獄が起きた!?
大変だ、早く返さないと極悪犯の追跡が!!
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