TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う 作:蓋然性生存戦略
気合でやります。
あんま長くならない予定。
さて、読者の諸君。
人生は小説よりも奇なりとはよく言うものだが、しかし果たしてボク以上に数奇な運命を辿っている者もそうはいまい。
ボク以上ともなれば、それはもうマスターだの先生だのドクターの類だろう。
して、開幕からなぜボクがこんな語りをしているかというと、まずボクが転生者だというところから始まる。
2025年くらいに、まあとりあえず地球は滅んだ(デデン。
理由はよく分からない。
とにかく地球は滅んだということしか理解できてない。
そもそもボク、引き籠りだったしね。
もし地球が滅ぶのが分かっていても『FPSやめられないんだけどwww』と闇のゲームとして名高いオ〇バーウォ〇チ2でランクを回してただろう。
どうせ死ぬのは変わらねーんだ、ガハハ。
まあともかく、地球は滅んでボクは転生した。
それだけならば、まあまだよかったのだが。
問題がいくつかある。
まず、TS。
男→女のTSを経験してしまった。
まあこっちは時間が解決したので良いとしよう。
この身体とも八年の付き合いだ、もう慣れた。
次に、生まれ変わった先の世界は異能が比較的当然にある世界で、アベンジ〇ーズみたいなのがいたし、既に何か起きた後っぽかった。
マジかよ、リアタイしたかった。
更に言えば、ボクはヴィランである。
仕方のない事情があったとはいえ、今はこの生活を楽しんでいる。
マジかよ、アベンジャ◯ズと敵としてご対面?!
却下、御免被るね。
そして最後の問題だが……。
「……」
ボクの家の前に、そのア〇ンジャーズのヒーローがいた。
何故かボロボロな姿で。
しかもお前、リーダー格のダウナー系長身スレンダー黒髪ポニテお姉さんじゃないか!!
なにやってんだお前ェ!!
何かあった後の世界線じゃないんか!?
今既に何か起きてますけど!?
巻き込まないでくれますぅ!?
とまあ、そういうことなのだ。
(中身)ボーイ・ミーツ・ガールを果たしてしまい、明らかにこれから巻き込まれて行きそうな予感がする、というのが、今のところ抱えている最大の問題なのだ。
しかもボクヴィランだぞ。
ふざけやがって。
でも見て見ぬふりをするのは簡単だ、どっかにポイしてくればいい。
だがしかし、しかしだ諸君。
立ち去ったあと訃報でも流れて見ろ、明日食う飯が美味いかよ。
絶対メシマズになる自信がある。
たとえ一方的に知っているだけの他人だとしてもだ。
ボクがヴィランだとしてもだ。
結局のところ、ボクは彼女を見捨てられなかった。
見捨てられるほど図太くなかったし、見捨てて平気な顔できるほど強くもなかった。
仕方ないね。
弱さゆえにボクは巻き込まれるのだ……。
幸いにして、ここは目立つ場所じゃない。
そもそも郊外にボクの家はあるので、人目などないに等しい。
小さな体に重労働を強いて、家の中に入れていく。
全く、ボクの家……というかアジトがちょっと特殊じゃなかったら大変だったぞ。
感謝してよね。
さて、えーっと、救急キットどこだっけな。
この前
「うっ……ここは……」
「お、目が覚めた?ここはボクのアジト。ボロボロなところを拾わせてもらったよ、おねーさん」
救急キットを探していたら、お姉さんの目が覚めた。
生きてて良かった。
まあ生きてるのはわかってたんだけど。
「キミは……」
「ボクは
「要するに、ヴィランか……こんな幼い子もヴィランになるとは、世も末か」
「ま、そゆこと。あとボクは色々と特殊事例だから気にしないでね」
とりあえず目が覚めて自分で動けそうなので、見つけた救急キットをポイポイ渡しておく。
自分でやる方が安心だろうしね。
「なぜ助けた?」
「明日食う飯が不味くなるから」
「……それで助けるのはヒーロー側だろう。なんでヴィランなんかやっているんだ」
「事情があるの。あんま深入りしないでよねー」
本当に、色々事情があるのだ。
名乗った名前は実は偽名だったり、元の家はやんごとなき家系だったり、色々あって家出してヴィラン生活してたりするのには色々事情があるのだ。
「ヴィランである以上は見逃せないんだが?」
「逆に聞くけど、おねーさん。《ガーディアンズ》だったかの専用医療施設使えるんじゃないの?なんでこんなところにいるのさ。なんか事情があるんでしょ、そっちも」
「……キミ、歳の割に賢いな?」
「事情があるの。まあその何、匿ってあげるからボクのことも秘密にしておいてよね。深入りはしないしさ」
「……助かる」
こうして、ボクとおねーさんの、共同生活が始まった。
翌日。
『先日、《ガーディアンズ》のリーダー《ブレイディア》が所属不明の敵性勢力と交戦ののち、行方が分からなくなっている件について……』
すっごい、もうニュースになってる。
流石に有名人だね。
あ、そうだ。
聞いておかないといけないことあったわ。
「そういえばおねーさん、戻らないの?
「深入りはしないはずじゃなかったのか」
「極力しないけど、場合によってはボクにも関わってくるしさ。これは関わってくる方ね。戻らないならまだマシ。
「……すまない。戻らない」
「オッケーオッケー、ボクもそれなりの対応をしようじゃない」
「どう言う意味だ?」
「念の為の安全対策ってヤツかな」
最悪のケースではないってとこかな。
良かった良かった。
まあでも一応やっておかないとね。
となれば、お出かけの時間だ。
おっとその前に。
冷蔵庫チェック、電力設備チェック、電波状況チェック、水回りチェック。
オールグリーン、全てヨシ!
「じゃ、ボクは出かけて来るよ。お腹減ったら冷蔵庫のもの食べてくれていいし、シャワーとかも浴びたかったら浴びて良いよ。そのケガじゃ沁みるだろうけど。でも外には出ないでね。ボク無しじゃこのアジトは入ってこれないから」
「……ここも異能の力で生み出されたものか」
「そゆこと」
便利なんだよねー、ボクの異能は。
便利さでいえば最強無敵強靭の3セットだ。
弱点もあるにはあるけど。
「拠点を作れる異能か……本当になぜヴィランをやっているんだキミは」
「仕方ないじゃん!事情があるの!!」
と言うわけで出かけまして。
といっても、実は出た場所はアジトに入った場所ではない。
アジトに最後に入った入口は、既に廃棄した。
危ないからね。
ここはどこかの田舎の山奥の洞窟。
ボクが出てきた場所には、扉の絵が描かれている、一枚の掛け軸がある。
そうだよ、壁紙ハウスならぬ掛け軸ハウスだよ。
これなら壁が平らじゃなくても問題がないからね。
原作と違って揺れても中は揺れないし。
ボクの異能で生み出した、便利道具の一つだ。
生み出したと言うよりは、描き出したんだけど。
「全く、便利すぎるのも考えものだね」
まあ便利だけど弱点も多い。
この能力以外は至って普通の女子小学生でしかない。
一応ぱっと見バレない程度にパワードスーツを着込んではいるけれど、本物のヒーローやヴィラン相手では逃走の一助になればいい方だろう。
そもそも逃げるための手段は別で用意してあるし。
それはともかく。
ボクがアジトを出て何をするか。
ズバリ、次の拠点地域候補探しである。
とりあえずさも当然のように所持している四次元ポケットから『街は近いけど人目のない場所につながるドア』を取り出しまして。
良い感じに田舎で良い感じに設備整ってて人目のない場所お願いしまーす。
あの幼いヴィランは、やることがあると言って出て行った。
追いかけようかとも思ったが、しかし傷は深い。
応急処置はできたが、一日で治るほど私の身体は頑丈ではないし、異常な回復力を誇っているわけでもない。
貸し出された布団の上で、大人しく寝転がるのが関の山だった。
「……ゆっくり治そう。恐らく、このアジトはかなり安全性が高いし」
まあ、焦る理由もなかったのだが。
そもそもの話、私は《ガーディアンズ》に
理由はそう難しいことでもない。
疲れたのだ。
世界を救っても、犯罪がなくなるわけじゃない。
十五の頃から戦って戦って戦い続けて、十年戦い抜いて、今がある。
その十年は、私を疲弊させるには十分に過ぎた。
引退したい旨を伝えた手紙は一向に受理されないし。
上は無茶な任務を要求するし。
その上、先日の大規模な襲撃だ。
一人でやるしか無くて、ボロボロになって、なんかもうどうでもよくなった。
いっそのことあの子の片棒を担ぐのもいいかもしれない。
それはそれで、悪くは無いのかも。
「はは、何を考えているんだか……」
追い詰められている自覚はある。
正義感に燃えていたあの頃の活力は、もう無い。
「……寝よ。惰眠を貪るのも、思えば久しぶりだな……」
だからだろうか。
私は、無性に怠けたかった。
身体が疲れ切っているのもあってか、私はすぐに眠りへ落ちた。
それからどれくらいたったのか。
お腹がすいて、目が覚めた。
時計を信じるのならば、既に夕方五時。
あの子、エソラが出かけたのは朝八時くらいの事だったから、少し心配になってくる時間だ。
布団からのっそりと出ながら、言葉に甘えて冷蔵庫を見る。
冷凍・冷蔵食品と、生鮮食品がほぼ半々で置いてあった。
残りはデザートであろう甘味。
よく見れば炊飯器と米も置いてある。
自炊もできるのか、と感心した。
私も一応できなくはないが、できなくはない程度である。
そこはかとない敗北感を感じたのは、きっと気のせいではないだろう。
ひとまず、何かを胃に入れよう。
そう思った矢先。
「たっだいま~!」
エソラが帰って来た。
私は冷蔵庫を閉じて、小さな家主を出迎える。
「おかえり」
「うん、アジトに誰かいるって良いね。ところでお腹すいてる?ご飯手に入れて来たんだけど」
手にビニール袋を提げて、エソラはアジトに帰って来た。
今日の夕飯だろうか。
ただ、少し言い回しが気になる。
買って来たのではなく、手に入れて来た、と言う。
「ちょうどお腹がすいて目が覚めたところだけど……そのご飯、ちゃんと買って来たのか?」
「何を当然のことを。ボクはヴィランだよ?極悪犯のように堂々奪って……」
「そうか」
「こっそり拝借してきましたスミマセン」
パキリと指を鳴らすと、コソコソと盗んできたことを明かすエソラ。
まあ、お金を持っているようには思えないし、そうやって暮らしてきたのだろう。
「まあ、本当はボクの異能で何とか出来るんだけどね。食事まで何とかしちゃったら、本格的に外に出なくなりそうで。とはいえ、おねーさんがしばらく滞在するなら、作っておいた方が良いかな……」
ただ、この子なりに考えもあるようだ。
とはいえ、盗みは良くないが。
「随分と便利なんだな、キミの異能は」
「まぁね~。正直、ボクの異能を巡って戦争が起きても不思議には思わない」
きっと、彼女がヴィランに身をやつしているのも、それが理由なのだろう。
エソラは歳不相応に知能がある。
それはこの短い期間でも感じ取れた。
自分の異能を正しく理解しているからこそ、
利便性とは、時に凶悪であると理解しているから。
「そう言えば、何をしに行っていたんだ?」
「ん?入口の設置だよ。前の入り口はおねーさんが倒れてたから、そのままじゃ危ないと思って廃棄したんだ。だから新しい拠点候補に行って、入り口作ってた。いやあ、数時間作業し通しだからお腹減ったよ~~」
とはいえ、その利便性はエソラの時間を喰らうようだが。
「どこに入り口を作ったんだ?」
「確かトートシティの郊外だったかな。良い感じに便利な場所だよ」
「トートか。治安も悪くなく、かといって不便さを感じるほど田舎でもなく、しかし郊外ならば人目のつかない場所も多い。本当に良い感じだな」
「でしょ〜?あとハイコレ」
「これは……首輪?」
どことなく自慢げなエソラは、ふと思い出したように何かを差し出した。
それは輪を描いているような装身具で、有り体に言えば首輪だった。
「せめてチョーカーって言ってよね。これはあらゆる観測手段から、おねーさんをおねーさんとして認識できなくなるアイテム。監視カメラや生体認証にも対応してるよ」
「エソラ」
「ひぃ?!何?!」
「これと似たようなアイテムはあといくつある?!」
ただし、同時に渡された情報の爆弾加減たるや、私に一瞬眩暈をもたらす威力だった。
思わずがっしりとエソラの肩を掴み、問い質してしまう。
「ボクとおねーさんの分しかないけど?!こんな危ないモノ流通させるわけないじゃん!!」
「……ならいいんだ、社会が根底から崩れかねんからな……」
エソラの言葉を信じるならば、他にはないのだろう。
無ければそれでいい。
なんて、ヒーローをやめるつもりの私が何を気にしているのだか。
「分かってるって。だから一人で細々とやってたわけだし……帰る時になったら返してよね。ボクがボクのアイテムで捕まるなんてごめん被るよ」
「善処はしよう」
「大人ってずるいよね」
「今の言い回しがわかるなら、キミも十分大人だな」
「ま、返してくれなくてもいいよ。アイテムの所在はわかるし、その気になればいつでも消せるからね」
「それだけ聞けば、裏で支配するヴィランそのものだ」
「やめてよね。根っこは小市民なんだから」
この奇妙なヴィランとの会話を、多分私は、楽しんでいたのだと思う。
時間が過ぎるのは、あっという間だった。
《ガーディアンズ》本部。
《ブレイディア》失踪から約三日ほど経った頃。
「おい、アイツはまだ見つからねーのかよ!!」
「怒鳴るな《ボルテクス》。諜報部が全力をかけて捜索中だ」
《ボルテクス》が机を叩きながら、《テリトリア》へと詰め寄る。
両者共に張り詰めた空気が漂っており……否。
周囲にいるヒーローたちにも、固い空気が漂っている。
「ただの諜報が全力になったところで見つかるわけねぇだろ!!アイツは武闘派の
《ガーディアンズ》がリーダー《ブレイディア》の失踪は、大きな波紋を呼んでいた。
常に気怠げながら、瞳の中に熱い炎を宿している彼女は、常に最前線で戦い続けた武闘派であった。
十五という若き時分から、十年もの間戦い続けている英雄である。
八年前に世界を救い、それから大規模な犯罪グループを次々と撃滅していった姿は、まさに平和の象徴。
彼女が健在であるという事実が、犯罪抑止力になっているというデータもある。
故にこそ、今回の失踪は致命的だった。
水面下で燻っているかもしれない勢力が動き出すかもしれない。
否、もう既に動き出していると見ていいだろう。
「諜報の中には私も含まれている。その意味が分からない貴様ではあるまい」
「はぁ?!テメエが本腰入れて見つからねえだと?!それこそ異常事態だろうが!!軍もヤワじゃねえ、一度総出で探すべきだ!!」
「最終目撃地点はニューセート郊外。そこを起点として周囲の空き家廃墟下水道その他全ての潜伏可能な箇所を探したが、痕跡すら見つからなかった。恥を忍んで民間人の家の中までも探知した結果だ……」
「テメっ……そこまでしてたのかよ」
「……そこまでして成果なしだ。私はクビを切られるだろうな」
だからこそ、《テリトリア》はなりふり構わず捜索を強行した。
結果はほぼ空振りであったため、《テリトリア》は近いうちに責任を取らされて退陣するだろうが、そうまでしてでも、《ブレイディア》を見つけ出す必要があった。
《ブレイディア》という名が持つ力は、誰よりも《テリトリア》が理解していたから。
対して《ボルテクス》は、《テリトリア》がそこまで手を尽くしていたことに驚いた。
彼の知る《テリトリア》は、そこまでするような人間ではなかったからだ。
まあ、その後の言葉を聞いて納得の色を見せることになるが。
「尤も、組織に縛られない立場の方が探しやすいという思惑もある。こうでもしないともはや自由にはなれん。私の後任は《フィクシオン》に頼んである。これからも連携は取れるだろう」
「そういうことかよ……《フィクシオン》が後任なら文句はねェが……この要望は通るのかよ」
「何が何でも通すとも。と言うよりも
「……テメエがそこまで言うならやってやらァ」
「ありがとう。後は頼んだ」
「おう」
《テリトリア》の自由をある程度確保し、探索の自由度を更に上げる。
最初から最後まで、彼女の計画通り。
故に。
彼女は呪いをかけられるのだ。
決して、何事も伝えられない自分と言う、拷問に等しい呪いを。
「何故だ《ブレイディア》!?なぜヴィランに従っている!?」
「別に。今の居候先の家主の意向だというだけの話だ」
「どうしてその程度の理由でヴィランに付き従っているかと聞いているんだ!!」
「いやなに、ふと気付かされたのさ」
「別に、私が守ってやる必要なんて無かったということにね」
・TS転生ヴィランロリ:現 エソラ
君は完璧で究極の偽名を使うヴィラン。
やんごとなき家の血筋だったり、戦争の火種だったりする能力者。
本人は小市民気質。
ある意味最強の能力を持っているが、最強過ぎて自粛している。
「やめて!私のために争わないで!」が冗談なしに出来る幼女。
無限に引き籠れたり完全犯罪が成立しちゃうかもしれない便利グッズを多数所持している。
まだ指名手配されてないのはエソラ自身が自粛しているため。
最強の能力だが、一応制限はある。
それでもこの無法っぷりなので手に負えない。
・疲れ切ったヒーロー:《ブレイディア》
ヒーローとしての活動に疲れてしまい、正義感に燃えていたころの自分を失ったヒーロー。
自他ともに認める最強のヒーロー。
どこぞの平和の象徴のような存在、だった。
彼にはできたが、彼女にはできなかった。
ただそれだけの話。
ところでそんな彼女がボロボロになった相手とは……?